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木谷 節子
アートライター
三菱創業150周年記念 三菱の至宝展
21/6/30(水)~21/9/12(日)
三菱一号館美術館
明治時代、岩崎彌太郎が始めた海運業を機に事業を拡大していった三菱の、創業家4代が集めた膨大なコレクションから、国宝12点を含めた選りすぐりの至宝を紹介。 みんな大好き《曜変天目》や、琳派の名品《源氏物語関屋澪標図屛風》、とにかく貴重そうな写本類など、多様な作品が展示されている。が、これらはただ、金持ちの道楽で集められたものにあらず。明治期、西欧文化偏重を憂えた2代目岩崎彌之助の「日本東洋の文化財を保護しなければ」という強い使命感と、そのスピリットを引き継いだ3、4代目の、ノブレスオブリージュ発動の結果であることはぜひ確認しておきたい。 今回興味深く拝見したのは、3代目久彌が設立した、アジア最大の東洋学センター「東洋文庫」所蔵の地図や色鮮やかな博物図鑑、経典の数々。それから明治時代の、エロか芸術かという「裸体画論争」から、下半身を黒い布で覆って展覧会に出品された「腰巻き事件」の犠牲者《裸体婦人像》(黒田清輝作)に思いがけなく出くわしたのは、私的な収穫でした。
21/7/10(土)