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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

世界の涯ての鼓動

MI6、英国秘密情報部と言えば、007ことジェームズ・ボンドの所属する機関だが、この映画の男性主人公もそのメンバー。コードネームは分からないが、名前は「ジェームズ」。 というわけで、「あのヴィム・ヴェンダースがスパイ・アクション映画を撮った」というのは半分正しいが、半分は違う。007なのは人物設定だけで、スパイアクションのシーンもあるが、濃厚な恋愛映画である。 MI6のジェームズの恋の相手となる女性は生物数学者で深海の生物を研究している。偶然に出会い、恋に落ちた2人だが、それぞれの任務のために別れる。この恋に落ちてから別れるまでの恋愛劇と、それぞれの過酷な任務とがカットバックされていくのだが、ちょっと意外な結末で、ハリウッド映画とは違うな、と思わせる。 ヴェンダース映画には珍しく、分かりやすい。だから、物足りないとの批判もあるようだが、娯楽恋愛映画として見れば、充分に楽しめる。海岸、海辺のホテルに始まり、砂漠、深海という「世界の涯て」それぞれが美しい。 ヴェンダース映画は思わせぶりで高尚でよく分からない、と苦手に思っていた人こそ、楽しめるはず。

19/7/29(月)

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