世田谷パブリックシアターに登場した前川知大さんの作品というと、怪談、能や狂言、説話といった日本独自の“物語”を扱った『奇ッ怪』シリーズが思い出されますが、今回のベースとなるのは古代ギリシャの物語。トロイア戦争の英雄オデュッセウスについて書かれた詩人ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』を下敷きに、前川さんによる新たな超常の世界が広がります。オデュッセイアの英語読みはオデッセイ、その意味するところは“はてしなく長い旅”だそうで、我々の周りにある世界も、命も、つねに限りなく繰り返されて旅の途中……、そんなコンセプトから前川さんが生み出そうとしているのは、未来の宇宙の物語だとか。古代神話からSFへとつながる視点も、やっぱり時間、空間を超えた“終わりのない”旅なんですね。キャストは、前川作品のファンを自称する山田裕貴さんが、晴れてその劇空間に初参加。ドラマ『あなたの番です』での怪演が話題を呼んだ、奈緒さんの初舞台にも注目です。安井順平さんを始めとする劇団イキウメの精鋭陣や、イキウメの常連!?として前川さんの信頼を得る村岡希美さんと清水葉月さん、そして強力な前川作品の体現者、仲村トオルさんも集結。あり得ない、でも懐かしい、そんな快い錯綜に引き込まれそうな予感がします。

19/10/11(金)