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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに

文化庁の「新進芸術家海外研修制度」で海外に赴いた現役アーティストの作品により1998年から毎年開催されてきた「DOMANI・明日展」。今年度は「日本博2020」の一環として、物故作家も含めた異例の展覧会となった。「傷ついた風景」とは広島・長崎の記憶を経て東日本大震災まで、つまり日本の「近代」を映し出す風景のこと。女性の身体に刻まれた傷痕を撮る石内都の「Scars」シリーズに始まり、被災後の陸前高田を追い続けてきた畠山直哉の「untitled (tsunami trees)」シリーズまで、米田知子、藤岡亜弥、森淳一、若林奮、栗林慧・栗林隆、佐藤雅晴、日高理恵子、宮永愛子の作品によって構成されている。 身体の痛み、そして風景に刻印された戦争の記憶と自然開発による理不尽な傷痕、人間の目線からはすり抜けてる昆虫の眼差し、そして祈りのごとき人の営みとゆっくりと再生する自然のたたずまい。写真、絵画、インスタレーションとさまざまなメディアで組み立てられた会場を巡るうちに、胸が鎮まりかえっていく。この生を受けた「この場所」の記憶を、少なくとも心に留め続けなければならないという思いに駆られる。人の無為と自然の活力の相克。11作家の作品をカップリングした5種類のカタログの帯。選べる楽しさもまた良きかな。

20/1/31(金)

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