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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~

「パントマイムの神様」と称されたマルセル・マルソーの若き日、「神様」になる前の物語。パントマイムだから声は出さない。だから「沈黙の」という邦題なのだろう。 マルソーの無名時代の話だが、芸の修業ではなく、フランスでの対ナチスレジスタンス運動の話だ。 まずドイツでのユダヤ人虐殺が描かれ、両親が目の前で殺されながらも生き残った女の子が紹介される。続いて一転して戦争末期となり、パットン将軍の演説が始まり、そこからマルソーの物語が回想され、最後にまたパットンの演説に戻るという構成がうまい。 ナチスの残虐非道な蛮行が描かれ、胸が痛む。俳優たちは抑制された演技をしているが、ある瞬間には爆発する。 ナチスの大義のために平然とユダヤ人や障がいのある人を殺すドイツ人が、家庭では生まれたばかりの娘を溺愛し、その将来を心配するという二面性も描かれる。 子どもたちと国境を超えるシーンは、サスペンス感にあふれている。 映画のなかのマルソーは随所でパントマイムを見せ、それが救出活動、脱出作戦でも役に立っているのが興味深い。 パントマイムの真髄を感じることができる、芸術映画でもある。

21/7/31(土)

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