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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

LORO 欲望のイタリア

収賄、淫行スキャンダルで悪名高いイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニをモデルにしたドラマだが、パオロ・ソレンティーノが描くのはこの稀代の権力者のカリスマ性ではなく、途方もなく空虚な彼の内面世界だ。冒頭から40分はまったく主人公は登場せず、狂言回しとして美女を斡旋して権力者に取り入ろうとする野心家の青年セルジョの浮薄なバカ騒ぎが、ソレンティーノお得意の万華鏡のような華麗な映像テクニックを駆使して描かれる。ベルルスコーニが美女軍団をはべらせた自邸のパーティで、若い娘をベッドに誘うも「祖父と同じ口臭がする」とすげなく拒否されるシーンや、荒淫の果てに妻から離婚を切り出され、無残に罵倒し合う光景がひときわ印象に残る。大地震が起きて、教会からイエスの像が引き上げられるラストには、フェリーニの『甘い生活』の冒頭、キリスト像を吊り下げたヘリコプターがローマ市街を周回する有名なシーンが想起される。しかし、フェリーニが高度成長期のイタリアに仮託して描いた爛熟したデカダンスは、もうここにはない。このグロテスクな権力者に象徴される現代イタリアが抱える大いなる虚無だけが垣間見えるのだ。

19/11/14(木)

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