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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

ジャズ・ロフト

ジョニー・デップ主演の『MINAMATA-ミナマタ-』でふたたび脚光を浴びている写真家ユージン・スミスは、1950年代の半ば、ニューヨークのマンハッタンにあるロフトに移り住んだ。この映画は、彼のロフトにやってきたジャズ・ミュージシャンたちが夜な夜な繰り広げたジャム・セッションの模様を、ユージンが採りだめた4000時間に及ぶオーディオテープ、その演奏風景を撮った膨大な写真をもとに構成したドキュメンタリーである。ズート・シムズ、無名時代のカーラ・ブレイといったミュージシャンたちの貴重な証言も興味深いが、名盤『セロニアス・モンク・オーケストラ・アット・タウンホール』に結実することになるセロニアス・モンクとホール・オーヴァトンとの綿密な打ち合わせ、リハーサル風景を描いたくだりはジャズファンには必見である。 ユージン・スミスのきわめて矛盾に満ちた自己破壊的なキャラクターにも深く切り込んでいるのは出色の面白さだ。写真集『MINAMATA』で世界的に評価された「入浴する智子と母」の原型ともいうべき、フォト・エッセイ『スペインの村』の「通夜」という作品に垣間見られる〝宗教画〟のような荘重さ、陰影を強調したライティングに、ユージン・スミスの<聖なるもの><超越的なもの>への過度の志向性を危惧する指摘には唸った。

21/10/10(日)

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