映画は社会に問いを投げかけることが出来る。夢を見させることはいくらでも出来るけれど、映画は社会を少しずつ変える力があると私は信じている。だから辛い状況だろうとも向き合い、痛みを感じ、それをどうやって乗り越えるかを描くことで観た人の気持ちも変わると私は信じている。『少年の君』からはそんな願いが叫びとなって聞こえてくるのです。 貧困問題、いじめ、大学受験競争という社会の渦にのまれそうになりながら這い上がろうともがく少女が出会った不良少年。淡い恋愛かと思いきや目には見えない絆で結ばれていく二人を初々しく映し出しながら、二人に訪れる人生の分かれ道という選択を入試問題に引っ掛けるように描く脚本の素晴らしさたるや。 とにかく主演の二人が愛おしい。優等生のチェン役のチョウ・ドンユイは、線が細いながら瞳の奥に力を持っていて、不良少年役のイー・ヤンチェンシーはTFBOYSという国民的アイドルには一見思えないほど全身に闇を纏いながらも不思議と引き寄せられる魅力を放っているのです。このキャスティングも絶妙で、一番見て欲しい思春期の若者に「人を傷つけないで」と伝える為に作られた気がしてならないです。大傑作！

21/7/3(土)