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水先案内人のおすすめ

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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。

春日 太一

映画史・時代劇研究家

ダーク・アンド・ウィケッド

とにかく最初から最後まで薄気味悪いことこの上ない映画だ。 張りつめた厭な空気が絶えず画面全体を覆い続けーー何かなんだかよく分からない展開にもかかわらずーーそのミステリアスな迫力により、グイグイと作品世界に引きずり込まれていった。 田舎の農場で寝たきりの父親と暮らす母親を姉弟が訪ねるところから物語は始まる。だが、母親は何かに思い悩み続けた末に首吊り自殺してしまった。その直前、母親は突如としてある奇行に走るのだが、そのあまりの突然さたるや……。ここからこの作品の摩訶不思議さが加速していく。 農場に残った姉弟は奇妙な超常現象を何度も経験することに。これは心理的ストレスのもたらす幻覚や妄想なのか、それとも本当に“何か”が起きているのか……。起きているのなら、誰がなんのために何を起こしているのか。 本作が新しいのは、その真相にほとんど触れていないことだ。理屈らしい理屈は説明されない。そのためシンプルに"なんだか怖い"という感覚だけが前面に出る。 シャワー室、電灯、窓、鏡、固定電話のベル、謎の神父といったホラー映画の定石といえる恐怖演出を存分に駆使しつつ、淡々とした展開の中に不穏な空気がじわじわ広がっていく。 “怖い”をいかにして描くか。そこに特化した作品といえる。

21/11/19(金)

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