これまでにも前田敦子を起用して傑作を放ってきた黒沢清監督が、ウズベキスタンを舞台にあらためて前田主演のヒロイン映画を撮った。 染谷将太のディレクター、加瀬亮のカメラマン、柄本時生のAD、そして前田のレポーターからなるテレビ番組の撮影チームが、ウズベキスタンで何やら胡散臭い紀行番組のロケを敢行している。しかし諸事うまくいかず、どこか行き当たりばったりの現場で、前田は懸命に(時としてナンセンスなお題にもかいがいしく応えて)業務をまっとうしている。だが、そんな彼女には秘めたる夢もあり、この理想とはほど遠い撮影行程のなかで、自分探しの時空に迷い込む。 全篇出ずっぱりの前田は、ごくさりげなくヒロインの心の空隙を表現して素晴らしい。文字通り黒沢監督のヒロイン愛が横溢した傑作がまたひとつ。

19/6/10(月)