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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

ジョアン・ジルベルトを探して

奇しくも今年の7月6日、リオの自宅で亡くなった〝ボサノヴァの神様〟ジョアン・ジルベルトをめぐるドキュメンタリーである。1960年代初頭、スタン・ゲッツと組んだアルバム『ゲッツ/ジルベルト』が世界中を席巻した時の記憶はかすかに残っている。当時は、最初の妻アストラッド・ジルベルトのクールなヴォーカルばかりが注目されたが、ボサノヴァの本質は、むしろジョアン・ジルベルトのややくぐもったような、メランコリックな声にこそ体現されていたのだ。 映画は、晩年、あたかもJ・D・サリンジャーのように世間から隔絶した隠者のごとき存在だったジョアン・ジルベルトを監督のジョルジュ・ガシュが探偵のように探索するスタイルをとる。そこで、重要な役割を演じるのは、ジョアンをめぐる書物を書き上げ、自殺したマーク・フィッシャーというドイツ人ジャーナリストだ。ガシュは、この書物を完璧になぞるようにして、元妻や親友のミュージシャンたちに取材を重ね、ジョアンそのものに近づいてゆく。だが、次第に映画は、ジョアン・ジルベルトではなく、マーク・フィッシャーという謎めいた逸話に囲まれた作家のほうへ視線が移ってゆくのが面白い。ジョアンの歌が断続的に流れ、リオの街並みやイパネマの海岸、鬱蒼とした森の中を彷徨するようなキャメラを介して、ボサノヴァという音楽が必然的に生まれてきたブラジルの風土が感得されるのだ。ボサノヴァそのものへのオマージュといってよい逸品だ。

19/8/21(水)

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