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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

私は確信する

2000年にフランスのトゥールーズで実際に起こった38歳の主婦スザンヌ・ヴィギェが三人の子供を残して謎の失踪を遂げ、夫のジャック・ヴィギェに殺人の容疑がかけられた〝ヴィギェ事件〟をモチーフにした裁判映画である。容疑者のジャックが『バルカン超特急』を引用したり、裁判長が『間違えられた男』に言及したりするが、サスペンスから生じるエモーションを芸術にまで高めたヒッチコック映画とはほぼ無縁であるといってよい。 本作の魅力は、事件の真相を探っていくヒロインが、レストランのシェフで一人息子を育てる、ふつうのシングルマザー、ノラ(マリーナ・フォイス)であるという意想外な、しかし出色のシチュエーションにこそある。ノラは息子の家庭教師であるジャックの娘のために、彼の冤罪を晴らそうと孤軍奮闘する。辣腕弁護士モレッティ(オリヴィエ・グルメ)の指示で、膨大な関係者たちの電話の通話記録を解析することに熱中するあまり、日常生活が破壊にほとんど瀕してしまうほどである。恋人であるコックの黒人とのつかの間の情事とかナマナマしいエピソードも実に効果的で、この直情型のパッショネイトなヒロインの得も言えない生活感、魅力がさりげなく浮かび上がるのだ。マリーナ・フォイスとタルデンヌ兄弟の映画で知られる名優オリヴィア・グルメの微妙な、しかし決してべとつかない距離感の描写も印象に残る。

21/2/8(月)

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