評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています
佐々木 俊尚
1961年生まれ フリージャーナリスト
帰れない二人
19/9/6(金)
ル・シネマ
2001年から17年にわたり、ふたりの男女の人生を追い続ける物語。2001年にはまだ人民帽や人民服、自転車が幅を利かせ、人々は『YMCA』などの1970年代ディスコ曲で踊り、とても「ダサい」。それが主人公が服役を終える2006年になると、街はすっかりおしゃれになって、日本のバブル時代のような光景が広がっている。そして終盤の2017年には主人公はiPhoneを使いこなし、もはや現代日本と同じ風俗だ。 近代化の速度というのは国によって異なっていて、ヨーロッパでは200数十年かけたのを日本は100年あまりで成し遂げ、そして中国はそれをわずか30年ほどで実現している。それだけの速度だと、中高年には「まったくついていけない」という感覚も当然生まれてくる。その切なさや悲しみみたいなものが全編にわたって横溢している作品。それでも生きていくんだ、という悲壮な決意も痛切に伝わってきて、深い感銘を受けた。
19/9/2(月)