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山内宏泰
ライター
工藤麻紀子 空気に生まれかわる
20/12/11(金)~21/1/16(土)
小山登美夫ギャラリー
色調はやや抑えめ、だけど多彩だ。人物の表情やポーズは、憂いや不安を抱え込んでいるように見えるものの、世界をなんとか肯定しようと努めている様子も感じられる。 明るいばかりじゃないが、何気なく過ぎていく日々をすこしでも希望ある方向へ導こうとする意思に満ちているのが、工藤麻紀子の絵画だ。 今展には小品から大作までが多数並んだ。その中でとりわけ眼を惹くのは《空気に生まれかわる》。小高いところから眺めた町の光景に、たくさんの人や動物の姿が配された大画面は不思議な浮遊感に満ちている。現実と虚構、奥行きと平面性、過去と現在と未来……が混ざり合って、対峙していると自分の立ち位置がよくわからなくなってくる。知らず工藤の世界に、こちらが完全に取り込まれているのである。
20/12/26(土)