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水先案内人のおすすめ

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話題作、アート系作品を中心に

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

トゥルーノース

そこで何が起きている、あるいは起きたのか。北朝鮮の政治犯強制収容所を舞台にした本作は、情報収集を重ね、元収容者や元看守、脱北者らの生の声も聞いた上で、そこに入れられた人々のあまりにも過酷な「日常」を描いている。収容所の現実を活字で読んだことがあったとしても、目の前に広がる情景に衝撃を受けるだろう。だが、それだけの映画ではない。 主人公ヨハンと妹ミヒの家族は、在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮に渡った。が、父親は突然、政治犯として逮捕され、まだ幼い兄妹は母親と共に強制収容所に入れられてしまう。強制労働、公開処刑、飢餓。ぎりぎりの状況下で、成長したヨハンは自分たち家族が生き抜くことだけを考えるようになる。 いつ終わるともしれない極限状況。なりふり構わずに生きるか、それとも……。この映画は、実写なら目をそむけたくなるであろう現実を、リアルすぎない絵柄のアニメーションを生かして描く。絶妙なさじ加減で観客の凝視を誘い、考えさせる。実際に何ができるかはともかく、少なくともどう生きたいかと思うかを。隠された現実を伝えるという大きなミッションを果たすと同時に、観客ひとりひとりの内面を問う作品なのだ。

21/5/31(月)

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