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高橋 諭治

映画ライター

透明人間

1933年のユニバーサルホラー『透明人間』から2000年のポール・ヴァーホーベン監督作品『インビジブル』まで、これまでの“透明人間もの”の多くは科学者の視点に立ってストーリーが語られていた。身体を透明化する驚異の新技術を開発したことで万能感を得た主人公が、狂気をエスカレートさせて暴走するというのがお決まりのパターンである。 ところが本作は違う。凶暴なストーカーと化した透明人間につけ狙われる恋人の視点で全編を描き、彼女の極限心理を核にしたサイコスリラーに仕上げているのだ。とりわけ“見えない恐怖”の気配を表現した前半が絶品で、リー・ワネル監督の演出が冴え渡っている。 アクション映画に転じる後半と意外なオチは賛否が分かれるだろうが、主演女優エリザベス・モスのハイテンションな狂乱演技もスリルを増幅させる充実の出来ばえだ。

20/7/9(木)

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