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水先案内人のおすすめ

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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

窮鼠はチーズの夢を見る

ひとは、ときに、他人事とは思えないような恋愛映画に出くわす。 これは、わたしにとって、アルノー・デプレシャン監督の『そして僕は恋をする』以来となる“近すぎる”映画となった。 大倉忠義扮する主人公、大伴恭一はこれまで、自分に近づいてきてくれる女性とだけ、お付き合いしてきた。 わたしは恭一のようなモテ男ではないが、あるときまで、自分に興味を持ってくれる人にしか振り向かなかった。そう、自ら話しかけることをしなかった。客観的に見て、ずいぶん高飛車な人間だと思う。 恭一のことを単に嫌なヤツだと感じるひとは少なくないだろう。なので、自分なりに弁護すると、誰かを必要とするよりも、誰かに必要とされることに安堵を覚え、その状態に安住してしまうタイプの人間はいるのだ。 決して思いあがっているわけではない。ただ、話かけてもらえると、安心して応えられる。相手からのアプローチがあって初めて、優しくできる。そういう者にとっては、コミュニケーションが基本的に“応答すること”だったりもする。 これは、そんな恭一が、大学時代の後輩男性、今ヶ瀬渉に告白され、付き合う物語だ。 誰かに必要とされるより、誰かを必要とすることの方が、重要なこと。 少し遅れて生きる普遍を発見する恭一の姿には、自分で自分の深層を覗き見するような、リアルと感慨があった。 今ヶ瀬を演じる成田凌の一途なまぶしさが妙に懐かしく、さまざまなひとコマがよみがえった。 同時に、行定勲監督と大倉忠義は、どうしてわたしの人生をここまで理解しているのだろう、と素直に思った。

20/9/7(月)

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