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佐藤寛太の偏愛主義でいこう!

「パーマカルチャーデザイナー四井真治さんのお宅を訪ねました!」の後日談

不定期連載

第46回

前回、ご自身のリクエストで“パーマカルチャー”デザイナーの四井真治さんに会うために都内を離れたお宅に単身突撃したときのことを書き下ろしていただいた寛太さん。後日、そのときのことを振り返って、あらためてなぜ四井さんだったのか、四井さんにお会いしてどんなことを思ったのかなど、率直な気持ちを語っていただきました。

前回は東京から離れた場所でパーマカルチャーを実践している四井さんのお宅を訪ねて、僕が書いた文章で暮らしの様子を 紹介させていただきました。

四井さんは『地球再生型生活記−土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザイン−』を読んで以来、ずっとお会いしたかった方です。カメラを持ってお邪魔したのに、話すことに夢中であまり写真を撮っていなかったり、ピントが合っていなかったり……。そんな反省点もありましたが、今回はそのときの取材の裏側や今の僕が考えていることをお話ししたいと思います。

エッセイにも書いたことなのですが、年齢を重ねていくうちに、こんな風に暮らしてみたいという生活の理想像がはっきりしてきました。いろいろなことを考えていますが、今の僕にとって、都内を離れたところに住むことも選択肢のひとつ。

もちろん、同じような夢を持っている人たちと会いたいときに会えること、劇場や映画館に足を運んで熱量を感じる機会を多く持てることなど、東京のいいところもたくさん知っています。でも単純に生活の支出を抑えようと思ったとき、僕の場合は海より山かな、よく山登りに行くところに住めたら夢みたいだな、と考えるようになってきました。

今年と去年の仕事の選び方からすると、2時間ほどで東京に出られるような場所での暮らしは、非現実的ではないと思っています。移住という言葉を使うほど大げさではなく、ちょっと通勤時間が長くなるところに引っ越しをする感覚に近いかもしれません。去年インドに行ったことで、カプセルホテルのようなところでも普通に暮らせることが分かったので、東京の拠点は必要ないかなと思っています。

去年くらいから今まで勉強してこなかった経済の分野にも興味が湧いて、資本主義、貧困や格差、エコなどについて考えるようになりました。主語が大きくなればなるほど自分ができることは少ないような気持ちになるけど、この仕事をしていると、自分がアクションを起こして発信することが、人を動かす可能性につながっていくこともあるんじゃないか。そんなことを考えているときに出会ったパーマカルチャーについて学ぶうちに、一番分かりやすくて実践可能だと思わせてくれたのが、四井さんの本でした。実際に四井さんの暮らしを見てみたくて僕がラブコールを送り、会いに行かせてもらったというわけです。

四井さんとはお金についての具体的な話もさせてもらいました。今のような暮らしを始めようとした頃はお金がなかったけど、貨幣経済から完全に切り離してしまうと選択肢がなくなってしまう。家族が増えてくるとさらに難しいから、外部からの収入は必要だよねという話もしました。

四井さんの暮らしを見て思いがけなかったのは、想像以上にいろいろなものをご自身で作っていたこと。食卓に並んだすごく素敵な器について、「これは漆ですか?」と聞いたら、「漆を何回か塗らなきゃいけなくて。庭先でも漆の木を育て始めたんだよ」という答えが返ってきたので、これもお手製なのか!と驚きました。

四井さんは生活に必要なものを作ったり、古い道具や機械も修理しながら大切に使っています。自分の目で暮らしを見せてもらったことで、身の回りのものを作ったり、土に触れることの楽しさを学ぶことができました。僕がまず実践してみたいのは、食べたものや出したものを土に還して畑を作ること。農業というよりも本当に庭先の畑のようなものになると思うのですが、できることからやってみたいと思っているし、場所が見つかったら引っ越しをしたいと考えています。

四井さんと話をするとき、最初は録音をしようと思っていたんです。でもご自宅というアットホームな空間に仕事の関係性を一度持ち込んだら、今後もそこから抜け出すことはできないだろうなと思い、スマホは触らないことにして必死に話を聞いていました。話を聞く脳と写真を撮る脳は全然違うから、逃しまくった写真がたくさんあると思います(笑)。

四井さんは本当にナチュラルな方で、一緒に時間を過ごすことがとても楽な人でした。暮らしだけではなく人生についての話をもっと聞きたいので、これからもお付き合いができればと思っています。

エッセイでは僕の視点で四井さんの暮らしについて書かせてもらいましたが、考えを押しつけたり限定したりするつもりはありません。読んだ後に、いや、俺は自然と共に生きるのではなく、お金を稼ぐ人生を送りたいんだと思う人がいてもいい。あの文章が、自分にとっての幸せの定義を考えるきっかけになったら、嬉しいなと思います。

取材・文:細谷美香
撮影:稲澤朝博

『地球再生型生活記 土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザイン』
アノニマ・スタジオ 2090円
https://www.anonima-studio.com/books/lifestyle/permaculture-life-design/

四井真治さんインスタグラム https://www.instagram.com/yotsuishinji_permaculture/

プロフィール

佐藤寛太(劇団EXILE)

1996年、福岡県生まれ。2015年に劇団EXILEのメンバーとなり俳優活動を開始。主な出演作に『恋と嘘』『わたしに××しなさい!』『DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW』『家族のはなし』『走れ! T校バスケット部』『jam』『今日も嫌がらせ弁当』『いのちスケッチ』『花束みたいな恋をした』『軍艦少年』『Blind Mind』『正欲』(以上映画)、『探偵が早すぎる』『駐在刑事』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『おやすみ王子』『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』『ハゲしわしわときどき恋』『美食探偵 明智五郎』『ヒミツのアイちゃん』『シェフは名探偵』『TOKYO MER 走る緊急救命室』『JAM -the drama-』『あせとせっけん』『テッパチ!』『結婚するって、本当ですか』(以上TV)、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」『怖い絵』『サンソン ―ルイ16世の首を刎ねた男―』(舞台)など。Web版『PEAKS』にて「旅する寛太」連載中。4月には舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』に出演、5月公開の映画『不死身ラヴァーズ』にも出演した。11月17日(日)、同29日(日)に生配信された、ニッポン放送開局70周年×WOWOW共同制作生配信ドラマ『ゴースト・オブ・レディオ~バチボコ怖い心霊バスツアー』にも出演。12月5日からはLemino『情事と事情』(毎週木曜0:00全8話)が配信中。2025年2月1日(土)からはNHK土曜ドラマ『リラの花咲くけものみち』(総合テレビ 毎週土曜 夜10:00〜10:49 全3話)がスタート。

本連載の前身、佐藤大樹さん&佐藤寛太さんの連載はコチラ!