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和田彩花のアートさんぽ

ピカソのセラミックの創造性と「お菓子とアート」を体験する——ヨックモックミュージアム

毎月連載

第13回

青山・骨董通りから路地を入ったところにあるヨックモックミュージアム

東京・南青山にある、お菓子「シガール」で有名なヨックモックの会長が開館したミュージアムへやってきました。こちらでは、ヨックモックグループが30年以上かけて収集した約600点近いピカソのセラミック作品を中心としたヨックモック・コレクションからさまざまな切り口で企画展が行われています。また、臨床美術を取り入れた「アートセッション」や「お菓子とアート」など、ヨックモックミュージアムならではの教育プログラムやイベントも目白押しです。

いたるところにセラミックが使用された温かみのあるミュージアム

建物の屋根の瓦は、ピカソがセラミック制作をしていたコートダジュールの瓦をオマージュしたもの

友人の家に招かれるように温かい雰囲気で迎えていただいたヨックモックミュージアムへ訪れると可愛らしい青色の屋根が目に入ります。何層にも重ねられた丸い瓦は、ピカソがセラミック作品を制作していた南仏コートダジュールの伝統的な瓦を再現しているのだそう。床や壁には、陶芸窯で使われている耐熱レンガをイメージした素材が使用されており、美術館の空間そのものがピカソのセラミック作品の世界へと私たちを誘います。

建物の外壁にも青い瓦が使用されています

現在開催中の企画展「ピカソ・セラミック『見立て』の芸術」(12月28日(日)まで)は、ピカソの遊び心満載なアッサンブラージュ彫刻とセラミック作品を通して取り組んだ実験を、日本文化の「見立て」という視点から解釈していく展示です。お話しを伺ったのは、ヨックモックミュージアム教育普及担当主任学芸員の小幡佳奈子さんです。

案内していただいた、ヨックモックミュージアム教育普及担当主任学芸員の小幡佳奈子さん

ピカソは65歳以降、南仏のヴァローリスという伝統的な陶器で有名な街へ移り住み、本格的にセラミック作品の制作を始めます。地中海沿岸に位置するヴァローリスの風土は、ピカソの生まれ故郷スペインのマラガにも似ていたんだとか。

展示は少し照明が落とされた地下1階の展示室からスタート。第1章「生命を吹き込む」では、可愛らしいフクロウが並んでいます。

「ピカソは形を捉えることに長けていたので、職人が作った陶器に、彫りや絵付などを加えて、さまざまなモチーフに見立てていきました。陶器作品は、いろんな角度から見ると面白いですよ。」

また、スペインの伝統的な大皿もフクロウに見立ててしまったんですね。可愛らしいです。

「ピカソの故郷、スペインでは、大家族で食事をする文化がありました。第二次大戦を通して、ピカソは家族で当たり前に食事をすることは当たり前ではない、とても貴重なことであると気づいたのではないでしょうか。
ピカソは、多くの人に自分の作品を使ってほしいという想いを込めて、工房の職人たちと共同で陶器作品を作りました。陶器作品は、あたたかみがありほっこりするようなものも多いんですよ。」

左:床にはレンガが敷き詰められている地下1階の展示室 右:館内のサインは手作り感のある優しい風合い。こちらも素材にはセラミックが使用され、スペースに合わせた色や形で展開されています

つづく第2章「手のひらの闘牛場」では、円形のお皿を闘牛場に見立てています。

ピカソがセラミック作品に絵付をしていくときって、故郷スペインの風景を描きこむことが多いんですね。

「とても不思議なのですが、土に触れていると故郷を思い出すのか、闘牛やピカソの好きだった鳥や魚など、生き物を陶器に描くことも多いです。ピカソといえば、絵画ではゲルニカなど反戦の悲しみや怒りなどを描くイメージもありますが、陶器では、このようなあたたかく故郷を思い出すような作品もたくさん制作しているんですよ」

次に、ピカソの遊び心が満載な第3章「テーブル -見立てのトートロジ-」です。

お、これはマネ《草上の昼食》をオマージュした陶器作品ですね。マネ作品に描かれていない生き物が発見できるそうなのですが、なかなか見つけられないな。キュビスムの手法を発見できる《スプーンのある生物》や生きた魚に、オーブンで焼かれた魚までさまざまなモチーフが、さまざまな形で陶器に描かれていきます。

遊び心満載なお皿を目の前に、自分だったらどんな料理を載せたいかをついつい考えてしまいます。

ヨックモックミュージアムらしい作品を発見。《お菓子》は、ゲルニカを制作したわずか二週間後に描かれた油彩作品だそうです。愛人の娘に贈られたというこちらのお菓子の作品は、常時展示されているとのことです。

最後の第4章「変容する顔、古典への見立て」は地下1階から、明るい光が差し込む2階の展示室へと続いています。こちらでは、丸皿の形を利用して描かれる神話の精聖霊や、水差しの凹凸に沿って大胆に描かれた人物の顔や、踊り子や楽師たちの姿をみられます。

立体物であるセラミック作品を見ていても、そこには絵を描く感覚と同じピカソが見てとれるようでした。ピカソが二次元のキャンバスにどんなモチーフをどんな形でどんな色で描き出したかったのかを想像しました。

最後の常設展示室では、54点のピカソのセラミックのお皿がずらりと展示されています。家で使うなら、部屋に飾るなら、いろんなシチュエーションを想像しながら好みの作品を探してみてくださいね。

フォトスポットではピカソが使っていたロッキングチェアの現行モデルに座って、写真を撮ってみてね

カフェで気軽に体験できるラーニングプログラムが充実

展示を通してピカソの創造性をインプットしたあとに、ぜひ楽しんでほしいことがあります。

ヨックモックミュージアム館内のカフェでは、体験型アートキットメニュー「art for café (アートフォーカフェ)」を楽しめます。

ピカソが精力的にセラミック制作に取り組んだ町の名前を冠した「カフェ ヴァローリス」。カフェのみの利用もOK

現在は春バージョン「春色のminiミモザリース」(5月6日(火)まで)が提供されています。

まずは、ミュージアムの隣にアトリエを構えるフラワーデザインオフィス「J.D.CROSS」が手掛けた体験キットを選びます。ウッドパーツのアイテムが異なるので、お好みのものをチョイスしてくださいね。

ミモザの花は、ピカソが愛した南仏でも見ることができるそう ヴァローリス」。カフェのみの利用もOK

飲み物とプティ シガールを楽しみながら、デコレーションキットを開封すると、ミモザの良い香りが広がります。手のひらサイズの自然を五感を使って、楽しんでみてくださいね。
あとは、思いのままにデコレーションを進めていくだけ。ボンドで接着していくだけなので、誰でも楽しめそう。

リースの土台にボンドを使って張り付けていきます。※特別にカフェ内のライブラリーで体験させて頂いています

ピカソの遊び心満載なセラミック作品を見たあとのart for café体験は良いアウトプットになりますね。もちろんカフェのみの利用も可能です。

2025春の期間限定アートキット「春色のmini(ミニ)ミモザリース」は、プティシガール、ドリンク付きで1,800円(税込)で体験できます

ヨックモックミュージアムではその他の教育プログラムも充実しています。芸術の医学的な効用に着目した「臨床美術」を基礎としたアートセッション「Y Mアートセッション」は、誰でも自由に自分を表現できる、心を元気にするプロジェクトです。

《ピカソ de アート》では、粘土を使った制作や、素焼き陶器にいのちを描く体験など、感じる力、つくる力を育むワークショップが開催されています。加えて、ワークシートを使い、年齢や立場など関係なく、鑑賞の楽しさや発想の面白さ、豊かさを見つける鑑賞ツアー《ピカソde わくわくワークシートツアー》も行われています。

友人宅へ遊びにいくような気軽さで、ピカソのセラミック作品の世界を楽しみ、ここでしか叶えられないアート体験をぜひ楽しんでくださいね。

撮影:源賀津己

ヨックモックミュージアム

2020年、ピカソの誕生日である10月25日にオープン。(株)ヨックモックホールディングス取締役会長の藤縄利康が館長を務め、同グループが30年以上にわたって収集したピカソのセラミック作品を中心に油彩画や版画、図書資料などを収蔵し、そのコレクションをさまざまな切り口で紹介する展覧会を開催。さらに、臨床美術を基礎とした「アートセッション」や、併設のカフェでお茶やお菓子と一緒に気軽にアートを体験できるプログラム「お菓子とアート」など、「ヨックモック」ならではのユニークなラーニングプログラムが充実している。
https://yokumokumuseum.com/

【展覧会情報】
「ピカソ・セラミック『見立て』の芸術」
開催中〜2025年12月28日(日)

ピカソが第二次大戦後、南仏に居を移してから本格的に制作を始めたというセラミック作品を、日本文化における「見立て」という観点から紹介。伝統的な壺を組み合わせて「鳥」に、皿を「闘牛場」や人の「顔」に喩えたりするピカソの独創性的なセラミック作品を、日本文化における伝統的な視点である「見立て」との共通性を見出しながら紹介していく。

プロフィール

和田彩花

1994年8月1日生まれ、群馬県出身。

アイドル:2019年ハロー!プロジェクト、アンジュルムを卒業。アイドルグループでの活動経験を通して、フェミニズム、ジェンダーの視点からアイドルについて、アイドルの労働問題について発信する。

音楽:オルタナポップバンド「和田彩花とオムニバス」、ダブ・アンビエンスのアブストラクトバンド「L O L O E T」にて作詞、歌、朗読等を担当する。

美術:実践女子大学大学院博士前期課程美術史学修了、美術館や展覧会について執筆、メディア出演する。

★記事内で和田彩花が制作した「ミモザリース」とサイン入りチェキを計4名様にプレゼント!

【プレゼント内容】
記事内で和田彩花が制作した「ミモザリース」を1名様に、サイン入りチェキを3名様にプレゼントします。※チェキは選べません

①ミモザリース 1名様
②サイン入りチェキ 3名様

【応募方法】
①ぴあアート編集部のInstagram(art___pia)のフォロワーの方限定。
②下記の該当投稿のコメント欄にご希望の商品の番号をお送り下さい。

【応募締め切り】
2025年4月21日(月) 23:59まで

【注意事項】
※ご応募は1アカウントにつき1商品のみとなります。
※当選者の方には4月28日(月) 以降、Instagramアカウント(art___pia)よりDM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡いたします。なりすましアカウントには十分ご注意下さい。
※当選した場合のみ、DMをお送りさせて頂きます。
※当選者の方には、発送先等の情報を頂くために、編集部の問合せメールをご連絡いたします。ご自身のメールアドレスや住所などの個人情報をDMに記載しないようにご注意ください。
※当選後、お送り先メールアドレスについてご連絡頂ける方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
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