将棋とクラシックにはとても深い結び付きがあるように思います。でも将棋の研究をしている時にクラシックをBGMとして流すようなことはありません。将棋は将棋、クラシックはクラシックと分けていて、聴くときにはひたすら聴くようにしています。そして、クリスチャンになったことによって宗教曲を聴く機会が増えたことは間違いありません。洗礼を受けたのは昭和45年です。もう随分長い時間が経ちました。思い出として残っているのは、名人戦に臨む前に、NHKの音楽番組で、アバド指揮ミラノ・スカラ座の演奏によるヴェルディの『レクイエム』を聴いた時のことです。とても感動して、自分も目前に控えた名人戦で、このヴェルディの『レクイエム』のような素晴らしい将棋を指したいと思ったわけです。勝ち負けは別として、素晴らしい心境のもとで戦いたいと願ったのですね。