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戦争前夜の庶民を描く井上ひさしの代表作『きらめく星座』が開幕

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こまつ座『きらめく星座』

1983年に作家・劇作家の井上ひさしが立ち上げ、以降、井上作品を専門に上演し続けている制作集団・こまつ座が、井上が戦争前後の庶民の営みを描いた“昭和庶民伝三部作”の第1作となった音楽劇『きらめく星座』を、3月10日(火)から15日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演する。

物語の舞台は昭和15年の東京・浅草。小さなレコード店・オデオン堂では、家族4人とふたりの間借り人が仲良く暮らしている。ある日、陸軍に入隊していた長男の正一が脱走し、すぐさま憲兵伍長“蝮の権藤”が乗り込んでくる。さらに、長女みさをが“ハガキの束から選んだ”という夫・源次郎が家族に加わるが、堅物の愛国主義者で傷痍軍人の源次郎は、音楽好きでジャズを流す家族たちが許しがたい。こうしてオデオン堂には大嵐が吹き荒れることになり……。

本作は1985年に初演され、井上自身が演出した数少ない作品のひとつ。太平洋戦争前夜の昭和16年12月7日までの1年間を描く物語で、その時代は決して明るくはなく、戦争の愚かさを痛切に浮かび上がらせる。一方で、ピアノの生演奏にのせて『青空』や『一杯のコーヒーから』などの昭和初期の流行歌の軽快なメロディと数々の名セリフが劇空間を弾ませる。生前、井上はこの物語を「涙と笑いに満ちた懐かしい香りのするもの」とし、私戯曲的と位置付けている。

これまで多彩な顔ぶれにより上演され、既に延べ500回の公演回数に達している舞台。演出は井上が絶大な信頼を寄せ、本作を手がけるのは4度目となる栗山民也。そしてキャストには久保酎吉、松岡依都美、高橋光臣、粟野史浩、瀬戸さおり、後藤浩明、高倉直人、村岡哲至、木村靖司、大鷹明良が揃い、上質なアンサンブルを紡ぐ。

文:伊藤由紀子