2020年4月期ドラマ、なぜ続編モノが多い? 『半沢直樹』『ハケンの品格』に膨らむ期待
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4月からの春クールドラマは続編モノが多い。
月9(フジテレビ系月曜夜9時枠)では昨年放送された織田裕二が敏腕弁護士を演じたリーガルドラマ『SUITS/スーツ』のSeason2『SUITS/スーツ2』が放送。
日曜劇場(TBS系日曜夜9時枠)では2013年に放送され最高視聴率42.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)を獲得した堺雅人主演のメガバンクを舞台にしたドラマ『半沢直樹』が放送。水曜ドラマ(日本テレビ系水曜夜10時枠)では2007年に放送され最高視聴率26.0%を獲得した篠原涼子が主演を努めたドラマ『ハケンの品格』の続編が放送される。
また、FODとAmazon Prime Videoでは柴門ふみの漫画をドラマ化して月9で大ヒットした『東京ラブストーリー』のリメイクが配信。同じく柴門ふみ原作で過去にドラマ化もされた『女ともだち』もBSテレ東でリメイクされる。
【写真】『ハケンの品格』新キャラクター
他にもテレビ朝日系では『家政婦のミタゾノ』の第4作と『警視庁・捜査一課長2020』(Season4)、そして2018年に木村拓哉が主演を努めた『BG~身辺警護人~』の第2作が放送される。注目はやはり『BG』だろう。今後、定期的にシリーズ化されるのであれば『相棒』や『ドクターX~外科医・大門未知子~』に匹敵するヒットコンテンツになるかもしれない。
同じ続編モノでも毎年新シリーズが作られているテレ朝系のドラマと、長いブランクを挟んで作られる『半沢直樹』や『ハケンの品格』とでは位置づけは違ってくるのだが、話題作の続編が4月クールに出揃ったのは、視聴率の大幅下落が予想される東京オリンピックの開催される夏(7月~8月)を避けたためだと言われている。
だが、それ以上に感じるのは、民放地上波におけるプライムタイム(19~23時台)の連続ドラマの視聴率が低下しているため、過去のヒット作の続編しか企画が通らなくなっている厳しい台所事情だ。
もちろん続編モノだからといって保守的でつまらない作品になるとは限らない。時代の経過による価値観の変化をうまく盛り込めれば、今の時代にふさわしい傑作に仕上がる。
昨年末に放送された『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)はそのあたりがうまくいっていた。おそらく『ハケンの品格』も、放送当時よりも非正規雇用が増えた現在ならではの派遣社員の描き方に変わるのだろう。そこさえしっかりと描けていれば、時代に対する批評となりうるため、放送することの意味はあると思う。
とはいえ、全体をみると今のテレビドラマは、オリジナリティのある企画は深夜ドラマや配信ドラマに移行しつつあり、民放地上波は、1話完結の刑事ドラマや医療ドラマの続編が多数を占めている。
これはテレビ朝日系の『相棒』や『科捜研の女』といったシリーズモノが開拓してきた安定拡大路線で、フジテレビの月9も、今クールは『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』も4作目が放送されている。おそらく月9はテレ朝の成功パターンに学び『SUITS/スーツ』以降も続編モノでつないでいくのではないかと思う。
1クール(3カ月)のオリジナルドラマを毎週放送し、イベントとして盛り上げていく放送形態は、フジテレビのトレンディドラマが80年代後半以降に定着させたスタイルだったが、その主戦場だった月9が路線転換したことを考えると、テレビドラマの在り方そのものが過渡期を向かえているのだろう。
そんな中、異彩を放っている春クールドラマが、TBS系金曜ドラマで放送される『MIU404』だ。
本作は綾野剛と星野源が主演の刑事ドラマで、警察内部で「何でも屋」と揶揄される機動捜査隊が24時間というタイムリミットの中で解決するバディもの。
設定だけ見ると『相棒』の亜流のように見える安易な企画だが、野木亜紀子(脚本)、塚原あゆ子(チーフ演出)、新井順子(プロデューサー)の3人が手掛けるのだから一筋縄ではいかない作品となるだろう。この3人が2018年に手掛けた『アンナチュラル』(TBS系)も設定だけ取り出せば『CSI:科学捜査班』シリーズや『科捜研の女』のような科学捜査モノで新味はなかったが、社会派テイストのエンターテインメント作品に仕上がっていたので、『MIU404』も、今までにない刑事ドラマになるのではないかと期待している。
最後に新型コロナウィルスの影響についても触れておきたい。
現在、コンサートや演劇といったライブイベントが続々と中止になっている。騒動が長引けば、多くのスタッフが関わるドラマの撮影にも、影響を及ぼすのではないかと懸念している。
同時に思うのは、この騒動が日本人の仕事や病気に対する考え方を、根本から大きく変えてしまうのではないかということだ。
刻一刻と変化する日本政府や医療機関の対応、多くの企業が通勤を控えて、在宅でのテレワークへと就労形態を切り替え、学校が一斉に休校となっている状況を見ていると、3.11に匹敵する日本社会への影響が生まれつつあるように感じる。
こういった変化は、刑事ドラマや医療ドラマにも大きな影響を与えるのではないかと思う。慎重に経緯を見守りたい。
(成馬零一)