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深夜帯ドラマは次世代女優の宝庫? 『女子高生の無駄づかい』『ゆるキャン△』から考察

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リアルサウンド

 令和2年の冬ドラマが佳境を迎えている。医療や刑事ものが中心のゴールデン・プライム帯を離れた深夜帯には、次の世代を担うホープがひしめいている。

参考:深夜ドラマがプライム帯ドラマを超える? 80年代からの傾向と新風の予感

■岡田結実、福地桃子による化学反応『女子高生の無駄づかい』
 金曜ナイトドラマ『女子高生の無駄づかい』(テレビ朝日系)は、女子高生のキラキラしてない日常を描いた挑戦的なコメディー作品。主人公の「バカ」」こと田中望(岡田結実)に、漫画家志望の「ヲタ」菊池茜(恒松祐里)、感情の死滅した優等生の「ロボ」鷺宮しおり(中村ゆりか)がキャラ全開で繰り広げる濃い化学反応が見どころだ。

 バラエティー番組のMCやモデルなどマルチに活躍している岡田だが、コメディエンヌとしても頭一つ抜けた存在だ。連続ドラマ初主演を飾った2019年の『私のおじさん~WATAOJI~』(テレビ朝日系)では、新米ADを演じ、遠藤憲一や小手伸也、青木さやから一癖も二癖もある共演陣と息の合ったかけ合いを見せた。普通なら躊躇してしまうような演技も体当たりでこなす役者魂で独特のポジションを築きそうな予感がある。

 個性的なキャストの中で目を引くのが、中二病女子「ヤマイ」こと山本美波を演じる福地桃子だ。福地といえば、NHK連続テレビ小説『なつぞら』の柴田(小畑)夕見子役が記憶に新しい。『女子無駄』のヤマイは金髪ツインテールで頭の中はファンタジーという同作でもっとも尖ったキャラだが、福地のなりきり具合はすさまじく、実父・哀川翔の代表作『セブラーマン』(2004年)を彷彿とさせる。

 岡田や福地以外にも、『賭ケグルイ』(MBS/TBS)シリーズや『きのう何食べた』(テレビ東京系)、『左ききのエレン』(MBS/TBS)など注目作へのキャスティングが続く中村ゆりかや、先ごろ『100文字アイデアをドラマにした!』(テレビ東京)第5・6話で待望の主演を果たした恒松祐里、アイドルグループSUPER☆GiRLSの元メンバーで、映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(2019年)、今年に入ってからは『SEDAI WARS』(MBS/TBS)など女優業を活発化する浅川梨奈など、『女子無駄』には勢いのある20代前半女優が多数出演している。ドラマ好きなら観ておいて損はない作品だ。

■『3年A組』OBが再集結した『ゆるキャン△』
 原作再現度の高さという点で『女子無駄』と並ぶのが『ゆるキャン△』(テレビ東京ほか)だ。こちらは“まいんちゃん”福原遥が主演を務める。芸歴の長い福原だが、2019年1月期の『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)で再注目された。『ゆるキャン△』で演じる志摩リンはテンション低めの女子高生で、表情と心の声のシンクロや、言葉にならない悲鳴を表すネットスラングの「くぁwせdrftgyふじこlp」など、難度の高い役柄を乗りこなしているのはさすがだ。

 『ゆるキャン△』で各務原なでしこを演じているのが大原優乃。富士山を見に行こうとして力尽き、道端で眠ってしまう超がつく天然女子として「ゆる」要素を一手に担っている。ドラマ版『ゆるキャン△』成功の要因は、原作のムードをパーフェクトに再現していること。「幸せそうな寝顔選手権」があったら満場一致で1位を獲得しそうな大原だが、漫画っぽいオーバーアクションが板についているのは一種の才能と言っていいだろう。

 『女子無駄』の福地や『ゆるキャン△』の大原の演技は、原作を無理に改変するのではなく、漫画のおもしろさをそのままドラマで再現しているように見える。漫画原作の映画やドラマは数多くあるが、二次元と三次元に境界なく接する世代感覚を反映しているようで興味深い。

 また、なでしこが所属する野外活動サークルのメンバー犬山あおいを箭内夢菜が演じている。実は、箭内は福原や大原とともに『3年A組』に生徒役で出演。放送終了後も、生徒たちが話題作に途切れなく出演する同作のサイクルは、確実に他の作品にも波及している。

■各世代の起点となる作品に
 『女子無駄』と『ゆるキャン△』は女子高生を主役に設定しているが、「学園もの」というくくりでは、MBS制作のドラマ特区『ホームルーム』にも注目したい。山田裕貴演じる教師の愛田に狂愛される女子生徒・桜井幸子を演じる秋田汐梨も『3年A組』出身。秋田の他にも横田真悠や富田望生ら『3年A組』卒業生が出演する『ホームルーム』は、歪んだ妄想が炸裂する深夜帯ならではの異色作に仕上がっている。

 『3年A組』同窓会のような『ゆるキャン△』や『ホームルーム』からは、各世代で俳優を輩出する起点となるような作品が存在することがわかる。最近では、映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年)や、『賭ケグルイ』シリーズがそれに当たるだろう。

 各話に劇団出身の気鋭の脚本家を起用した『女子無駄』から明らかなように、各局がチャレンジする深夜枠は若手の登竜門としての役割を担っている。深夜帯で経験を積んだ彼女たちがゴールデン・プライム帯で活躍する日を楽しみに待ちたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。