GALNERYUS、現状維持ではなく最高を更新する 観る者を惹きつける技術と表現力の進化
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昨年10月23日からスタートしたGALNERYUSの全国ツアー『GALNERYUS 15th Anniversary 〜Radiance〜“WAILING IN THE FLAMES OF PURGATORY”TOUR』が1月10日、新木場STUDIO COAST公演をもって幕を下ろした。筆者はツアー初日の新宿BLAZE公演も観覧しているが、当日は約2年ぶりのニューアルバム『INTO THE PURGATORY』リリース日当日ながらも、次々に繰り出される新曲群に対してフロアからは早くも熱い声援が送られたが、待望のツアーファイナルではその熱がさらに高いものへと昇華され、新年早々忘れられない一夜となった。
意外にも、GALNERYUSが新木場STUDIO COASTで単独ライブを行うのは今回が初めて。会場に入りまず目についたのが、フロア内に設置された収録用のクレーンカメラ。なにやら特別なことが用意されている予感にワクワクしつつ開演を待つと、定刻過ぎに会場が暗転し不穏なSEが流れ始める。続いてメンバーが一人、また一人とステージに現れ、楽器隊がセッティングを済ませるとニューアルバム『INTO THE PURGATORY』のオープニングを飾るインストナンバー「PURGATORIAL FLAME」へと突入。SYU(Gt)のエモーショナルなギタープレイをフィーチャーしたこの曲で早くもフロアの温度が急上昇したところに小野“SHO”正利(Vo)が加わり、ドラマチックなファストチューン「MY HOPE IS GONE」で5人揃ったGALNERYUSの総攻撃が始まった。
小野はオープニングから年齢を感じさせない伸びやかなハイトーンを轟かせ、観る者を圧倒。FUMIYA(Dr)の地を這うようなドラミング、TAKA(Ba)の分厚さと繊細さをあわせ持つベースサウンド、YUHKI(Key)による華麗かつテクニカルなキーボードプレイ、そこにSYUと小野の存在感と卓越した技術&表現力が加わることで生まれる“GALNERYUSならではの個性的なサウンド”は、作品を重ねるごとに難易度が上がっているにも関わらず決してキャッチーさが損なわれない新曲群を最良かつ最適な形で彩っていく。メロディックスピードメタルの究極形とも言える楽曲をポップスの世界でも大成功を収めたシンガーである小野が歌うこと、マニアックさとメジャー感が絶妙なバランスで融合した新作『INTO THE PURGATORY』は、音源を聴く限りではヘヴィメタルとしてもポップスとしても成立する不思議な魅力を放っているが、こうやって各メンバーの技量が最高の状態で提示されるライブで聴くと、改めてヘヴィメタル以外の何ものでもないことに気づかされる。
また、SYUやYUHKIのスリリングなソロプレイをフィーチャーしたアレンジは、肉感的な躍動感のみならず一瞬たりとも気を抜けない緊張感も伴っており、爆音に身を委ねて思いのまま動く楽しみ方もできるし、目を瞑ってその芸術的な演奏をじっくり堪能することもできる。そんな贅沢な楽しみ方ができるのも、GALNERYUSのライブならでは。さらに、そういったバンドのプレイを眩い照明や先鋭的なレーザーの演出が過剰なまでに盛り上げていくのだから、楽しくないわけがない。
演出に関してもうひとつ言えば、今回のツアーはアルバム『INTO THE PURGATORY』を曲順通りに再現していく前半、過去の代表曲がたっぷり凝縮された後半と、休憩を挟んだ2部構成というのも特筆に値する。新作の世界観を音源以上に高い純度で楽しんだあとに、GALNERYUSの歴史が垣間見られる贅沢なセットリストは、新作から彼らに入ったビギナーにも優しいものだろう。
個人的には新曲と過去の楽曲が入り乱れることで、両者がどう馴染んでいくのかが楽しめる形も好きだが、こうして作品性の高さを深く味わえる構成も改めていいものだと実感させられた。と同時に、1部を終え2部に入ったときに気づいたのだが、新作の楽曲群は過去のどの曲よりも歌や演奏の難易度が高いこと。過去の楽曲群ももちろんテクニカルで、常人が歌えるレベルのものではないのだが、『INTO THE PURGATORY』の楽曲はその難易度がこれまでの比でははい。かといって、キャッチーさが失われているわけではないのだから、このバンドが新作でどれだけ難しいことにチャレンジしていたかが理解できたのではないだろうか。
個人的ハイライトは、オペラ調の歌唱法を導入したことで小野の新たな魅力を提示することとなった「THE FOLLOWERS」(この曲では、TAKAのベースソロもフィーチャーされており、ボーカルのみならず楽器隊の個性も際立っていた)、小野がピアノのみをバックに切々と歌う前半からSYUのエモーショナルなギターソロがキラリと光る後半へと盛り上がっている極上のバラード「REMAIN BEHIND」、そしてアンコールに突如演奏された15分超の大作「ANGEL OF SALVATION」だろうか。
中でも「ANGEL OF SALVATION」は2時間を優に超えるライブ本編を終えたあとに披露されたにも関わらず、観る側としてもまったく緊張の糸が途切れることなく、会場がひとつになる大合唱のエンディングまであっという間という印象を受けた。ラストナンバー「DESTINY」を終える頃には開演から3時間に迫ろうとしていたことには驚きを隠せなかったが、GALNERYUSの面々がそれくらい時間を感じさせない充実したライブを見せてくれたこと、ここまで観る者を惹きつける技術と表現力を持ち合わせていることに心から拍手を贈りたい。
MCでも触れられていたが、この日のライブの模様は後日映像化されるとのこと。その映像作品を携えて、今年後半にも新たなツアーを行いたいとも発言しており、次のツアーでは今回とはまた違った形のセットリストにも期待したい。
昨年秋のインタビュー(※参照:GALNERYUSが究める、ヘヴィメタル×ポップスの融合「最新作が最強というバンドでありたい」)でSYUは「毎年進化していきたい」「毎回最新作が最強というバンドでありたい」と語っていたが、この日のツアーファイナルは本当にその言葉どおりの一夜だった。有言実行のためには日々の鍛錬は欠かせないものになるし、現状維持ではなく最高を更新するには想像を絶する努力が求められる。ライブ中本人も口にしていたが、小野はこの1月29日で53歳になる。現在のような難易度が高い歌/演奏をあとどれだけ続けられるか、『INTO THE PURGATORY』を超える新作をあと何枚生み出せるか、もはや神のみぞ知る領域だが、同時に「GALNERYUSなら大丈夫」と楽観視している自分もいる。そう、あの日のライブを観たら、きっとみなそう思うはずだ。
■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。
■セットリスト
GALNERYUS 15th Anniversary 〜Radiance〜
“WAILING IN THE FLAMES OF PURGATORY”TOUR
2020年1月10日(金)新木場STUDIO COAST
<1部>
01. PURGATORIAL FLAME
02. MY HOPE IS GONE
03. FIGHTING OF ETERNITY
04. GLORY
05. NEVER AGAIN
06. THE FOLLOWERS
07. COME BACK TO ME AGAIN
08. REMAIN BEHIND
09. THE END OF THE LINE
<2部>
10. STRUGGLE FOR THE FREEDOM FLAG
11. POINT OF NO RETURN
12. FATE OF THE SADNESS
13. MY LAST FAREWELL
14. REBEL FLAG
15. UNITED FLAG
16. PROMISED FLAG
<アンコール>
17. ANGEL OF SALVATION
18. DESTINY