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Little Glee Monster、女王蜂 アヴちゃん、秋山黄色らが繰り広げる音楽との真剣勝負 『THE FIRST TAKE』が伝える歌の力

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 『THE FIRST TAKE』というYouTubeチャンネルがある。自身の曲を一発撮りし動画を公開しているチャンネルだ。演奏前に発声練習や楽器の音をチェックしている様子もこの動画には収められており、普段とは違う緊張感ある雰囲気の中で歌い演奏するアーティストの姿を鮮明に届けている。音源とは違う編曲で披露している動画が多いことも魅力的だ。

参考:Little Glee Monsterが語る、“輪”を広げるための新しい挑戦「今年もリトグリを好きって人たちをもっと増やしたい」

 2月28日には秋山黄色が「モノローグ」を歌う動画が配信された。音源ではバンドサウンドだが『THE FIRST TAKE』では弾き語り。ループマシンを使いながら音を重ねていくスタイルだ。激しく歌う歌唱が印象的なライブや音源とはまた違った丁寧で優しい歌声を聴くことができる。音源とは違う新しい魅力が伝わる動画だ。

 女王蜂のアヴちゃんは『THE FIRST TAKE』で「火炎」と「BL」の2曲を歌っている。ソプラノ歌手が使うことが多い「ヘッドボイス」を使用しロックを歌うことがアヴちゃんの個性の1つだ。普段のバンドの演奏をバックに歌っている時とは違い一人で歌っているので歌を前面に感じる動画になっている。特にアコースティックアレンジになった「火炎」ではヘッドボイスの美しさが際立っている。

 女王蜂や秋山黄色のように音源と異なるアレンジで歌を引き立たせる動画も多いが、いつもと同じスタイルで演奏することで、改めてすごさを感じる動画もある。崎山蒼志は音源や普段のライブと同じように弾き語りで演奏。「五月雨」では音源以上に迫力あるアコースティックギターのカッティングを聴かせてくれる。激しくエモーショナルに弾いているようだが、音の粒は崩れずに流麗だ。ギター演奏の確かな腕前も感じる。発声や声質が独特なため歌声の個性が強いボーカルではあるが、ピッチの正確さからは歌唱力の高さも伝わってくる。演奏する姿のみを集中して撮られているので、視聴者も演奏に集中して動画を観る。それによりいつもの演奏スタイルの完成度が高いことに改めて気づくのだ。

 加藤ミリヤはピアノアレンジになった「Aitai」で椅子に座りながら歌っている。ライブではダンスなどの魅せるパフォーマンスで盛り上げるが、それとは違い歌のみに集中している。息使いも聴こえる繊細なボーカルには高い表現力と歌唱力が必要だ。自身の強みであるダンスなどの魅せるパフォーマンスをあえて封印することでボーカリストとしても一流であることを示している。

 『THE FIRST TAKE』はアコースティックアレンジを中心とした落ち着いたアレンジが多い。そのため歌声が音源以上に目立つ。そのため歌声のハーモニーを強みとしているゴスペラーズとLittle Glee Monsterは、グループの本質ともいえる魅力を最大限に活かしている。

 ゴスペラーズの「VOXers」からは迫力を感じる。全員が違う歌唱方法で美しいハーモニーを重ね、ヒューマンビートボックスも駆使しており聴きごたえがある。まるで歌声だけでどこまで感動させられるか挑戦しているかのようだ。メインボーカルが次々と入れ替わる部分も刺激的だ。映像で全員が歌っている姿を見ているだけで楽しい。ゴスペラーズの歌唱力ならば歌っている姿を撮っているだけで、エンターテインメントとして成立してしまうのだ。

  Little Glee Monsterも歌声が強みのグループだ。最近の楽曲は演奏が華やかで、メンバーの歌声以上に演奏が印象的な曲も多い。しかし『THE FIRST TAKE』の歌唱では改めてリトグリの歌唱力の高さに気づく。「愛にリボンをかけて」のサビではハーモニーの美しさを存分に味わうことができる。メンバー全員が高い歌唱力を持っているからこそできるハーモニー。特に複数の歌メロが同時に重なり一つになる後半部分はリトグリだからこそできる歌割りだ。「研ぎ澄ました歌声で人々の心に爪痕を残す」という初期からのグループコンセプトが今でもぶれていないことがわかる。

 ライブは観客が作る空気感も重要だ。観客によってライブの雰囲気も変わる。それはライブ映像でも伝わる。しかし『THE FIRST TAKE』に観客はいない。ライブと同じように本番一発勝負だが、直接ファンに向けて演奏しているわけはない。アーティストが音楽にのみ集中し自分自身と真剣勝負しているような動画だ。視聴者は演奏し歌う姿にのみ集中する。本人の演奏力や歌唱力のみの勝負なので、実力がなければ視聴者を満足させられない。確かな実力があるアーティストのみ参加していることも『THE FIRST TAKE』の特徴でもある。

 『THE FIRST TAKE』ではアーティストの新しい魅力を発見できたり、強みを改めて実感することができる。観客がいない中で音楽にのみ集中して一発撮りする、ファンが普段観ることができないアーティストの姿を観ることができる。ぜひ真剣勝負するアーティストのリアルな姿を観てみてほしい。(むらたかもめ)