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TrySailの楽曲は『まどマギ』作品とリンクする? 絶望と希望を内包した『ごまかし/うつろい』を考察

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リアルサウンド

 TrySailが、3月11日にダブルAサイドシングル『ごまかし/うつろい』をリリースする。TrySailは、2011年に開催された『第2回ミュージックレインスーパー声優オーディション』で合格した、麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜の3人で2014年末から活動を開始したユニットである。

(参考:夏川椎菜、東山奈央……多彩な声色&演技力を発揮した声優音楽に注目

 彼女らの「TrySail」というグループ名には、「どんな時でも前に進んでいけるように」というメッセージが込められている。それがゆえに、彼女らの楽曲からは、前向きでポジティブなムードが常に感じられる。

 メンバーである夏川は「「絶望」なんて歌ったことないもん(笑)」とインタビューで答えているように、デビュー曲「Youthful Dreamer」、彼女らのヒットソングとなった「adrenaline!!!」「High Free Spirits」といった楽曲に、パッシブな表情を見つけるのは難しい。声優ファンやアニソンファンのなかにも、絶望よりも、カッコよさと可愛さを併せ持った3人が、希望や理想像を明るく歌い上げる姿を思い出す方が多いだろう。

 今年5月にグループデビュー5周年を迎える彼女らは、ほぼ毎年ライブをこなし、数千人級のライブホールならば即座に埋められるほどのグループへと成長を遂げた。先にあげたような希望や理想像を3人それぞれに歌ってきた姿に、大きな期待を寄せるファンも少なくない。

 今作の収録曲2曲は、メンバー3人が出演するスマートフォンゲーム及びテレビアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の主題歌、「ごまかし」はテレビアニメ版オープニングテーマとして、「うつろい」はゲーム版第2部テーマソングとして起用されている。この2曲の前に、本ゲーム第1部テーマソングである「かかわり」も彼女らが歌唱しており、この作品の主題歌のすべてに参加している。作詞作曲を担当するのは、原作となる『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどマギ』)のテレビアニメ版や劇場版に起用されたClariSの「コネクト」「ルミナス」「カラフル」を作曲していた渡辺翔である。

 2011年に放映された『まどマギ』は、2010年代初め頃のアニメシーンのトップにあった作品だ。虚淵玄が描いた絶望と希望とが禍々しく渦巻くシナリオは、多くの視聴者を魅了し、様々な派生を生み出した。『まどマギ』は、はつらつとした3人娘と陰鬱なムードをとっかかりにした作品で、TrySailとはイメージは逆なのだが、実はとても噛み合ったコラボだろうと筆者は感じている。『まどマギ』作品に登場するキャラクターは、どんな願いにせよ、希望と夢を強く願っている。だからこそ彼女らは迷い、戸惑い、ドラマへと昇華される。Trysailの3人は、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』内では、軸となるヒロインを演じ、酷く濃い霧のなかにいるような苦悩を歌ってみせる。

 『ごまかし/うつろい』はともに、BPM200~180のロックサウンドを基盤にした楽曲だ。歪んだギターサウンドとタイトに叩かれるドラムスに耳を引かれるが、この曲で驚かされるのは、そのコード進行と変幻していく曲構成であろう。

 オカズやタメを効かせて音数が少なくなる部分を作り、そこからリズムパターンとコード進行を変えてドラマティックに聴かせる手法が軸になってはいるものの、リズムとコード進行は一気に変わらない。ボーカル3人のメロディラインの譜割や音並びが、詰め込められた部分で少しだけ変拍子気味になったり、サビの部分では言葉数とメロディラインが少しだけズレて聴こえたりもする。メロディラインと歌声、バンドサウンドがアンビバレントなまま共存しているのだ。

 夏川がインタビューで答えた「「絶望」なんて歌ったことない」という言葉の通り、彼女らはこの2曲を“希望の歌”として歌おうと試みていくだろう。絶望と希望は裏表であると、『まどマギ』作品を知る人なら頷いてくれると思う。TrySailの表現もこの2曲を通して深く濃くなっていくのではないだろうか。(草野虹)