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K-POPカバーダンスが日本の若者を魅了する理由 ブームは“憧れ”から“一体化”のフェーズへ

音楽

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リアルサウンド

 いまや世界規模の人気ジャンルになったK-POP。そのきっかけを作ったのはBTSであることに異論をはさむ人はいないだろう。彼らの活躍によって今、海外のポピュラーミュージックシーンにアジア枠が出来つつある。

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 だが、日本におけるK-POPの人気に関しては若干事情が異なる。もちろん現在の日本での盛り上がりにBTSの存在は必要不可欠だが、10代を中心に盛んに行われているK-POPのカバーダンスも忘れてはいけない重要なキーワードなのだ。

 K-POPカバーダンスのイベントは日本のいたるところで開催されている。火付け役となったのは2011年から続いている『DREAM ON!』だ。それまではアンダーグラウンドなエリアでやっていた感のあるK-POPのカバーダンスを、このイベントがメジャー化。おかげで以降は学校で専門の学科やサークルができるほど一般的なエンターテインメントに急成長した。

 イベントの内容も細分化している。代表的なものとしては『報われナイト』が真っ先にあげられるだろう。歌番組で1位を獲ったことがないグループ限定のカバーダンス大会で、マニアもうならせる振り付けが続々と繰り広げられる。参加者も年々増えているようだ。

 個人的な話で恐縮だが、私は数年ほど、韓国語を母語としない日本居住の人を対象にしたK-POPのど自慢大会の審査員を務めていた。しかし残念ながら昨年は開催されなかった。おそらく歌よりも踊りを披露したいという参加者が増えてきたためで、主催者もそんな変化を受け止めて休止を決めたのだろう。

 では、カバーダンスとは一体何が魅力なのか――。そんな問いに答えてくれるのが、2020年3月7日にNHK BS1で放送されたテレビ番組『ザ・ヒューマン』の「輝ける場所がここにある~K-POPに挑む女性たち~」という回だ。これはK-POPスターを夢見て韓国へ渡った日本人女性たちの挑戦の日々を追うドキュメンタリーで、ステージ上では語ることのない本音を聞けて興味深かった。

 登場する女性たちはいずれもK-POPアーティストに対する憧れとダンスの完成度の高さについて熱く語る。中でもかつてK-POPのカバーダンスをやっていた、公園少女のメンバー・ミヤのコメントが印象に残った。

「日本のアイドルとは全然違う。女の子もかわいいだけじゃなくてカッコよく踊る」

 カバーダンスが日本の若い世代を引き付ける理由はこれに尽きるのではないだろうか。同番組でも紹介されていた“刃群舞(カルグンム)”という1センチのズレも許さないほど全員の動きをシンクロさせるダンスはK-POPらしさのひとつであり、そこにオンリーワンの魅力を感じるのは当然だろう。

 韓国なら自分の夢が叶えられると思って海を渡る若者は、実は以前からそれなりにいた。古くはガールズグループのひな型を作ったと言われるS.E.S.のシューや、後にソロで活動するSugar出身のアユミ(伊藤ゆみ、元ICONIQ)など、例をあげればきりがない。また、日本で成功を収めたUNIONEのJINも、10代の頃は韓国でプロになろうとYGやSMといった大手芸能会社のオーディションを受けたそうだし、K-POPイベントの司会でおなじみのNICE73(ナイスナナサン)も、かつて韓国の事務所と契約し現地でシンガーとなっている。

 しかし昔と違うのは、今はK-POPアーティストになるためには歌とともにダンスもかなりのレベルを要求されるということだ。これは2010年代に入ってから顕著な傾向であり、日本で最初に巻き起こったK-POPブームをけん引した少女時代やKARAなどの活躍によるところが大きい。

 現在のK-POP支持層の大半はこうしたグループをネットやテレビを通じて物心ついたときから親しんできた世代である。しかも学校ではダンスの授業も当然のようにある。それゆえに日本の若者の多くがK-POPのきらびやかなパフォーマンスに魅力を感じてカバーしようとするのもうなずける。

 最近さらなる変化を実感することがあった。それはオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』(GYAO!/TBS系)で誕生したボーイズグループ・JO1のメンバーだ。サウンドもビジュアルもK-POPの要素を取り入れている。もちろんそれだけでは驚かないが、普段の会話のノリも韓国的だったことに新鮮さをおぼえた。例えば「ケミ(케미)」。ケミストリーの略で、「お似合いのカップル」「仲良しペア」という意味だ。韓国でよく使われる言葉だが、彼らはさらりとトークの中に入れてしまう。

 K-POPというジャンルはダンスを筆頭にメイクやファッションなど、さまざまなものが憧れの対象となってきたが、今の若い世代はK-POPアーティストの普段の立ち振る舞いや話し方さえも吸収しようとしているのだろう。単なる“憧れ”から、同じような存在になりたいという“一体化”へ。日本のK-POPブームは早くも第2のフェーズへ進もうとしているのだ。(まつもとたくお)