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佐藤玲×萩原利久『高崎グラフィティ。』対談 「分かっていて青春を送る人なんていない」

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 群馬県・高崎市を舞台に、高校を卒業し新生活を控える5人の男女を描いた青春群像劇『高崎グラフィティ。』が、8月25日より公開された。第1回「未完成映画予告編大賞」でグランプリを受賞した予告編をもとに長編化された本作は、メガホンを取った川島直人監督にとって長編映画デビュー作となる。

【写真】佐藤玲と萩原利久

 リアルサウンド映画部では、発起人として監督とともに企画段階から本作に携わってきた主演の佐藤玲と、共演の萩原利久にインタビューを実施した。グランプリに応募後から本作公開までの経緯や、若い世代が集結した現場で感じた熱量について語ってくれた。

■佐藤「映画を作ろうと声を掛けました」

ーーこの作品は、佐藤玲さんが川島直人監督へ送ったTwitterのダイレクトメッセージからスタートしたそうですね。

佐藤玲(以下、佐藤):川島監督とカメラマンの武井(俊幸)くんが、私が通っていた日芸(日本大学芸術学部)の同級生だったんです。在学中は違う学科だったので知り合いではなかったんですけど、卒業するにあたって、これから先頑張っていきたいなと思い、映画を作ろうと声を掛けました。2カ月に1回くらいお茶しながら打ち合わせをしたり、どういう作品にしたいのか話したりすることはありましたが、なかなかタイミングがなく、どうしようかなと1年半くらいが経過したあたりで、川島くんが「未完成映画予告編大賞」のポスターを見つけてきてくれて。

ーー実際に作品になることが決定したときはどんな気持ちでしたか?

佐藤:応募作品の中には本当に面白い作品がたくさんあったので、ダメだろうなと思いながら「グランプリを取れなくても作りたいね」とは話していたのですが、まさか本当にグランプリをいただけるとは思っていませんでした。初めは全く実感が湧かなかったんですけど、制作の打ち合わせでスタッフの方々と会い始めたり、オーディションが始まったりして、徐々に現実味を帯びていきました。

ーー3年前、大学生の頃に話していたことが映画として完成し、ついに劇場で上映されるということですね。

佐藤:映画を作ること自体はできると思うんです。ただ、どんな状況で、どんな環境でやらせていただけるかによって、たくさんの人に観ていただけるかが決まると思っていて。今回は、オーディションを開いて、みなさんに来ていただけるような作品になったことがすごく嬉しかったんです。オーディションに来てくださった俳優さんたちは、今回ご一緒しなかった方々も本当に良い役者さんにばかりで、ひとつの役に候補者がたくさん上がるほど、皆さん本当に素晴らしかった。同世代の役者さんで頑張っている人たちと触れ合えたこともすごく勉強になりましたし、糧になりました。

■萩原「感じたことのない緊張感」

ーーオーディションから参加された萩原さんは、佐藤さんや川島監督をはじめとする立ち上げ当初から携わっている初期メンバーに加わる、という形でしたが、現場の雰囲気はどう感じましたか?

萩原利久(以下、萩原):オーディションの段階から佐藤さんが参加してくださったり、川島さんもその場で演出してくださったりと、要所要所でものづくりに対する熱を感じました。この作品の制作が始まったプロセスを知って、川島監督の作品に対する膨大な熱量をどうにか僕自身もうまく引き継いで作品に入りたいなと意識しました。特に、佐藤さんと僕を含め、岡野真也さん、中島広稀さん、三河悠冴さんという5人が演じる役に対する川島監督の熱い想いを常々感じて、キャスト同士でもかなりディスカッションを重ねました。監督を含めこんなに距離感が近い現場はこれまでなかなかなかったので、すごく新鮮で楽しかったです。本読みする前にも、感じたことのない緊張感があって、今までの自分の中でも経験のない作品になったと思います。

ーー佐藤さんはこれまで経験してきた現場と比べていかがでしたか?

佐藤:企画の発案に参加していたこともあり、すごくプレッシャーがあって、緊張感や責任感をもっと持たなきゃいけないなとすごく構えていたときもありました。ただ、オーディションや本読みで役者さんたちと会ったときに、5人の居心地の良い雰囲気を感じて、安心してもっと委ねていいんだなと思ったんです。スタッフさんたちも若い方が多く、みんなで作っていくんだというところは学生映画みたいなところもあって楽しかったですし、ちゃんと大人のスタッフの方々にも支えていただいて枠組みもしっかりしていたので、5人の芝居も楽しくやろうということを念頭に置いて、演じることができました。

■萩原「僕はやっぱりしっかり者」

ーー萩原さんは5人の空気感はいかがでしたか?

萩原:僕は5人の中では歳が下だから、ちょっと不安を感じてもいたんですけど、今考えるとそれは始まる前のほんの一瞬だけだったなと思います。本読みの段階から皆さんが寄り添ってくれましたし、年齢差を感じさせないようなコミュニケーションを取ってくれたので、不安もなく、芝居しているときは同級生としての感覚でいることができました。

ーー撮影現場ではそれぞれどんな存在だったのでしょう?

萩原:そうっすね、僕はやっぱりしっかり者というか……。

佐藤:よう言えたな、本当に(笑)。

萩原:いやでもほんと、しっかり(笑)。本来ならば、5人の中だと僕が気を遣うべきなんだろうけど、気を遣わずにいられるくらい皆さんが居心地良い雰囲気を作ってくれていました。だから、5人の中でどんな役回りって言われると、本当にただエネルギーを出していただけですね。目覚まし係です。朝が早かったので、僕はみんなの眠い目を開けるくらいしかできなくて。佐藤さんは初めから携わっているので、僕ら演じる側と、川島監督サイドと、いろんなものをつないでくれる、最もリーダー的な存在でした。

佐藤:利久くんは、キラキラ~っとした目で「小豆ミルク飲みましたー!?」「カフェカー来てたんですけど!」とか、「缶蹴りしません?」「人狼ゲームみんなでやろうよ!」と言ったりしているのが本当に微笑ましくて。自分の実年齢とギャップがある高校生を演じる上で、利久くんは「あっ、これが若いってことだ!」と何度も思い直させてくれました。ずっと5人でふざけていたのが本当に楽しくて、劇中で描かれている5人の関係性にもうまく乗っけることができたかなと思っています。

■萩原「分かっていて青春を送る人なんていない」

ーーこの作品のテーマでもある“青春とは何か”にちなんだ、自身の青春エピソードを教えてください。

萩原:僕は高校生の頃からこの仕事をしていたので、青春を感じることはなかったです。もし過去に戻れるなら、改めて高校生活を体験してみたいなとは思いますね。

佐藤:缶蹴りもいっぱいできたかもね。

萩原:缶蹴りもいっぱいできただろうし……。

佐藤:人狼ゲームもいっぱいできたかな。

萩原:人狼ゲームもいっぱいできただろうし……。僕は体育の授業が大好きで、体育のときに男子が無条件にやたら本気になる感じはもう1回体感したいなと。もしかしたら、青春真っ只にいる最中は、それが青春とは分からないのかもしれません。

佐藤:映画のキャッチコピーだよね。「私たちの日常を、大人たちは青春と呼んだ」。

萩原:振り返ると、「あれが青春だったな」というのを最近ようやく実感しはじめている気はしますね。

佐藤:19歳なんだからまだだよ!

萩原:少しだけね。分かっていて青春を送る人なんていないのかなっていうのは、この映画を通して最近学び始めました。

■佐藤「もっと見識を広げていきたい」

ーーこの作品を経験して見えた自身の課題や今後の展望を教えてください。

萩原:この作品は、とにかく考えても考えても無限に課題が出てくる現場でした。男子チーム3人は夜に部屋に集まって秘密のミーテイングをしていたくらい、本当に役に接する機会が多かった作品でした。それでも、まだまだ追求できるところは日々出てきたので、どの作品でも、このぐらい役に対して貪欲に掘っていきたいし、この作品で役と向き合うためにしてきた作業をもっと細かくできるようになりたいです。あと、エネルギーをなんとか全て芝居に使い切りたいなと、最近本当に思っています(笑)。

佐藤:本当にエネルギーがあるよね。結構クールな役が多いの?

萩原:そうだね。そういう肉体的なエネルギーもだし、僕自身、萩原利久の中にあるこのエネルギーをまだ全然芝居に転換しきれていないところがあって。このエネルギーを120%芝居に使い込むことができたら、また新たな一面に出会えるんじゃないかなと個人的に思っています。

佐藤:私は、日々映画の現場に行く中で求められることが全然違うし、言われることも全然違うのですが、それだけ正解が一つではないということでもあるので、これからもより柔軟に対応していきたいです。今までやったことがないような仕事、例えばナレーションにも挑戦していきたいし、最近は舞台からちょっと離れているので、舞台にまた改めて取り組んだりと、もっと見識を広げていきたいです。

(大和田茉椰)