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HAWAIIAN6が歌う、希望を持って進み続けることの大切さ 「ずっとダメなことが続くわけではない」

音楽

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リアルサウンド

 HAWAIIAN6の5thミニアルバム『The Brightness In Rebirth』は文句ナシの傑作である。前作『Beyond The Reach』から約2年5カ月ぶりになる今作は、自分たちのやるべきことに焦点を絞ったメロディックパンク作に仕上がった。よりシンプルに、よりストレートに持ち味を発揮したサウンドの説得力が半端じゃない。2ビートを用いた怒濤の疾走感、歌謡テイスト溢れる哀愁メロディ、多彩なコーラスワークも含めて、これぞHAWAIIAN6!と言いたくなる揺ぎないオリジナリティを提示。表題同様、先の見えない社会や不安を抱える多くの人々の心に一条の光を差し込む歌詞も必読。メンバー3人に話を聞いた。(荒金良介)

少しでも新しいことをしたい

ーー新作『The Brightness In Rebirth』は前作以上に勢いや切れ味が増しているし、全体を通して明るい作風になりましたね。

HATANO(Dr):演奏形態がどんどんシンプルになってるからじゃないかな。そこまで詰める時間がなかったのもあるんだけどね(笑)。

ーーHATANOさん、毎作品でそう言ってますが(笑)。

HATANO:はははは。それでも煮詰まった時は、足すよりも引く作業の方が良いと思うから。

YUTA(Vo&Gt):録り音もいつもよりギターを減らしているんですよね。いろいろハーモニーを作っていたところを、今回はギター1本でも成り立つような状態を作って録ったんですよ。だから、あまり余計なものは入ってないし、それで音像もカラッとしているのかなって。

ーーそれはよりライブに近い音像を意識したから?

YUTA:ライブのこともあるし、少しでも新しいことをしたいという気持ちもあるから。昔の音源もシンプルだったし、そこに立ち返ってみようかなと。『FANTASY』(2000年)とかあの辺はそういう感じでしたからね。

ーー過去作を改めて聴き返すと、『Where The Light Remains』(2014年)の頃はアレンジや曲展開もかなり凝ってましたよね。それ以降は作品を重ねるたびにシンプルになっているなと。

HATANO

HATANO:バンドの個性で作品を作った方がいいかな、と考えるようになったんですよ。足そうと思えばいくらでも足せるけど……そうなると、何がしたいのかわからなくなるから、腑に落ちないことで穴を埋めてもね。昔の曲作りは出口がなくて、1曲の中で7、8回も展開したら誰も正解がわからなくなることもあったけど(笑)、すげえいいものって、パッと出てきた時にみんな疑問も沸かないから。

ーーGUREさんはいかがですか?

GURE(Ba&Cho):今作の「Skull And Bones」は展開が少し盛り沢山ですけど、リード曲になった「Stand By You」はさっき言われたようにシンプルで聴きやすい曲になってますからね。全6曲の中でメリハリは付けられたんじゃないかと。自分のベースで出したい音も、こうしたいというビジョンもより見えてきたから。

ーー前作(『Beyond The Reach』2017年)の時に、HATANOさんはベースフレーズをGUREさん本人に考えさせるようにしたと言ってましたけど、今作ではGUREさんの個性もより出てきた感じ?

HATANO:個性というより、性格が出てると思う(笑)。それが今のこのバンドのやり方なのかなと。GUREは当たり障りのないフレーズを持ってくるから、「それつまんねえから、もっと考えろ!」って言うんですよ。ただ、今作は全体像を確認している暇もなくて、録ってみなくちゃわからないところもあったから、シンプルにせざるを得ないところもあったし、逆にそれが良い結果になっていればいいのかなって。

ーーバンド的にはそういう状況だったんですね。

HATANO:既存の曲をやっている時も性格が出てると思うしね。GUREのコーラスは、以前と比べたら全然時間はかかってなくて。前は何を言われているのかGURE自身がわかってなかったけど、今はわかるもんな?

GURE:“自分はこうしたい”っていうのがあるのにできないというか……その理由がわかるようになってきましたね。

HATANO:そう考えると、前進はしているんだなと。

GURE

ーー今作のGUREさんのコーラスワークは過去最高の出来じゃないかと思いますよ。曲にいい色味を添えているなと。

HATANO:ふふふふ。良かったな?

GURE:少しずつできるようになってきたのかなと。歌い方に関してもすごく言われましたからね。

HATANO:譜面を書いて、「お前が発声する言葉がこういう感じで乗っているんだよ」とわかりやすく伝えたし、それで録った後に「譜面で言わんとしていることはわかるよな?」って話して。それを自分の中で消化するきっかけとなったのが前作なんですよ。だから、それを経て今作では確信でやれているのかなと。

YUTA:前作よりも(コーラスは)違う感じになっているし、ヘンな迷いは薄れてきたのかなって。

ーー「Rebirth」における透明度の高いコーラスも新鮮でした。

GURE:高いピッチで伸ばして歌うのは苦手ではあるんですけどね。「Rebirth」だったり、「Stand By You」のサビは高いまま声を伸ばすことにもトライしました。苦手だからこそ、こういう風に歌いたいと具体的なビジョンを持ってレコーディングに臨めましたからね。キレイなところはキレイに入れて……あと、叫ぶところはまだ試行錯誤しているところですね。今作で言えば、「Rain Song」の途中で叫ぶパートは自分の中で意識して入れました。適度に歪ませて歌ったり、高いピッチで歌う時にロウを足したりとか、それは日々頑張ってるところです。

ステージで笑うために何をすべきなのか、わかってきた

ーー現3人体制で作品を重ねて、自分たちのやるべき方向性がクリアになっている感じはありますか?

HATANO:いい歳だからさ(笑)。やり続ける以上は先に進まなきゃいけないから。いい加減、自分で自分のこともわかるようになってきたし、ここは人になくて、自分にしかない良いところだなというのも理解できるようになった。逆に言えば、ここはダメなんだって、ここ2年ぐらいでわかったところもあるからね。今は練習しているのが楽しいんですよ。不器用なところを含めて、自分たちはそういう集団なんだなって。自分と向き合うことっていろいろキツい時もあるけど、向き合わなきゃやってる意味もないからね。

ーーえぇ。

HATANO:GUREと練習するようになって、ベースプレイヤーに対して、俺もやりたいことをちゃんと見せなきゃ相手も迷うことになる。今はお互いにダメなところを言い合うし、「今のドラムやりづらくなかった?」みたいな確認もするからね。ステージで笑うためには何をするべきなのか、それがわかるようになってきたし。ヘンな話、いじわるし合おうぜって、笑いながら言う合う関係性なんですよ。

ーーバンドとしては健全ですよね。その風通しの良さが今作にも出ているんじゃないかと。

HATANO:うん、昔はそういう風に言えなかったから。いじわるなことをいじわるな気持ちのまま言ってたような気がするし(笑)。子供に物を教える時も「こうしたほうがいいんじゃない?」と注意するのはいじわるじゃなくて、愛情からでしょ? それを当たり前のようにお互いバンドの中でやることが理想なんですよ。人間がやることだから100点はないんだけど、ライブ後に「惜しかったよなあ!」という話をするのはネガティブというより、ポジティブな気持ちで言ってるから。やっぱり苦しむことが喜びに繋がるわけで、今はそういう意味でちゃんと苦しめているのかなと。昔はただ苦しいだけだったからね。昔みたいにずっとバンドやろうぜ! と軽々しく言える年齢ではなくなってきたからこそ、より現実的に楽しむために考えるようになったんだろうね。

ーー今はメンバー3人の意志や気持ち、見ている方向が固まってきたんでしょうね。

HATANO:そうだね。集団でそれを共有できた時にバンドは強くなるんじゃないかな。もう逃げられないからね。逃げられないというのは、いい意味に捉えているんですよ。それだけやりがいのあることをやっている証だから。ライブで楽しい思いをするためには納得できる曲を作らなきゃいけないし、それは努力しなければ生まれない。若い頃はよくわからなかったけど、どんどん積み重ねていくうちにわかるようになってきた。やりがいは苦しみの量と比例するし、そこから逃げないで対峙できるようになったんじゃないかと。昔はライン録りを聴くのも辛かったけど、今は聴いてできてなくても、じゃあ練習するか! って気持ちを切り替えられるようになったからね。ダメな自分も受け入れて、「ダメですね!」と言えるようになった。この歳でね、はははは。

ーー良いことも悪いことも全部ひっくるめて、自分たちを真正面から見据えられるようになったと。

HATANO:そう! 新譜を出す時も、あなたはここまでどれぐらい成長してこれましたかっていう通信簿みたいな感覚で、それが節目のタイミングになるわけでさ。それが形になるのが音源だから。ドラムを録ってる時も今は楽しいもん。やべえ、ハマッた! って、それさえも楽しめてるから。

自分にも世の中にも当てはまる“創造と破壊”

ーー楽曲の話をすると、MVも制作された「Stand  By You」は直球勝負の楽曲ですね。

YUTA

YUTA:曲に関してはわりと悩みまくったんですけどね。歌詞はよりダイレクトというか、そのままの内容だと思います。過去には暗にこういうことを言ってますみたいな書き方も多かったけど、今はそういう気持ちはなくて。

ーー歌詞はさらにシンプルになりましたね。しかも力強く言い切った内容が増えたなと。

YUTA:自分でも好きな歌詞が多いですね。

ーー特に気に入っている歌詞を挙げると?

YUTA:「Stand By You」は好きですね、すんなり書けたというか。今だから書けた内容だなと。歳を取ったなあ、とは思いますけど(笑)。

ーー「Stand by you」の〈今の積み重ねが/より良い未来を作るんだ〉(和訳)という歌詞も胸に響きました。

YUTA:言ってしまえば当たり前のことなんですけど、そういうことを大事にしなきゃいけないなと。

HAWAIIAN6 : Stand By You [OFFICIAL VIDEO]

ーー「Unknown」「Stand By You」という闇から光へ向かう歌詞の流れも好きで。あと、「Rebirth」「Liberation Blues」の流れに関しても、ここまで明るい雰囲気で作品を締め括るアプローチも珍しくないですか?

HATANO:俺らっぽいけど、ぽくない終わり方がいいんじゃないかと思って。曲順を決める時にそれぞれの希望はあったけど、終わり方はこれが面白いんじゃないかと。今までやったことがなかったし、それほど違和感もないだろうから。

ーーラスト曲「Liberation Blues」はとりわけキャッチーですよね。口ずさみたくなるようなポップさも感じました。

HATANO:昔の曲作りはバンドっぽさや、パンクっぽいアレンジを入れてたんですよ。今聴いても『SOULS』が面白い理由はそういうところだと思うし、あの当時のガラッと切り替わる展開は斬新だったと思うから。今作の最後の曲に関しては、歌ものとして進めた方が早く仕上がるだろうなと思い、こういう曲調になりました。

GURE:みんなが歌いやすいコーラスも入れられたので、それは良かったと思います。シンガロング風にやれましたからね。

ーー今作には「Rebirth」という曲名もありますけど、アルバム名にも同様の言葉を入れてます。この言葉に込めた思いというのは?

YUTA:全体的に僕の中で創造と破壊みたいなものがテーマにあったんですよ。自分の歌もそうですけど、個人的にできることができなくなったりして、そこでもがいている部分もありましたからね。そういう苦しみみたいなものは、自分的にも世の中的にも当てはまるものがあるんじゃないかと。

ーー世の中的というと?

YUTA:震災から今年で9年ということもあり、その中で変わっていくものもあるし……この先も創造と破壊はあるだろうから、そういう意味でもこのアルバム名を付けたんですよね。

ーー「Rebirth」の中に〈再生してゆく街の上を〉という歌詞の記述があるので、震災からの復興を描いた内容なのかなと思いました。

YUTA:実感としてそういう場所に行って、いろんな人に会ったり、感じたことをそのまま書いた感じですね。

ーー今作の歌詞全体からも、希望を持って進み続けることの大切さを歌ったものが多いですね。

YUTA:まさにそうですね。単純に今いろいろあるし、普通に生きている中でも感じることはあるから。ライブでもこういう風にしたいという欲はあるけど、全然上手くいかないこともあるし……その中でも目標に向かって進まなきゃいけない。希望は自分の捉え方次第だけど、普遍的なものだと思うから。ずっとダメなことが続くわけではないし、ずっと良いことが続くわけでもないと思うし、巡り巡っていくものだと思うんですよ。

ーー歌詞の世界観を含めて、今の時代性にも響く素晴しい作品になったと思います。今作を引っ提げたツアーも予定されていますが、それに関して今の気持ちを聞かせてもらえますか?

HATANO:音楽業界という言い方をすると、自分たち目線になってしまうし、最優先が命だとしたら、それに対して、飲み込めないことも飲み込まなきゃいけないし。やるにも覚悟がいるし、やらないにしても覚悟がいるからね。それをひっくるめて進まなきゃいけない。俺はいろんなことに対して覚悟はできているから、どんな答えが出てどんな結論になろうとも、悔いがないようにやっていきたいですね。このインタビューも、あんな時もありましたねって言える日が来ることを祈ってます。

HAWAIIAN6『The Brightness In Rebirth』

■リリース情報
HAWAIIAN6『The Brightness In Rebirth』
3月25日(水)発売
¥1,800+税

<収録曲>
1. Skull And Bones
2. Unknown
3. Stand by you
4. Rain Song
5. Rebirth
6. Liberation Blues

■ライブ情報
『HAWAIIAN6 The Brightness In Rebirth TOUR』
4月30日(木)下北沢 SHELTER
5月5日(火)酒田 MUSICFACTORY
5月7日 (木)仙台 MACANA
5月8日(金)水戸 LIGHT HOUSE
5月10日(日)柏 ALIVE
5月15日(金)KLUB COUNTER ACTION 札幌
5月17日(日)盛岡 change WAVE
5月20日(水)名古屋 HUCK FINN
5月21日(木)京都 GATTACA
5月30日(土)横浜 F.A.D
5月31日(日)静岡 SUNASH
6月2日(火)鈴鹿 ANSWER
6月3日(水)岐阜 柳ヶ瀬 ants
6月5日(金)長野 J
6月6日(土)新潟 GOLDEN PIGS RED
6月12日(金) 高崎 club FLEEZ
6月13日(土)club SONIC iwaki
6月17日(水)HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
6月21日(日)姫路 BETA
6月23日(火)福岡 CB
6月24日(水)大分 club SPOT
6月26日(金)松山 Double-u Studio
6月28日(日)大阪 ANIMA
6月30日(火)名古屋 CLUB QUATTRO
7月8日(水)恵比寿 LIQUIDROOM

■関連リンク
HAWAIIAN6 The Brightness In Rebirth 特設サイト
HAWAIIAN6 OFFICIAL SITE

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2020年4月12日(日)