ザ・ドリフターズの名曲がバイラルチャート上位に 国民的コメディアン、志村けんが遺した音楽的功績
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参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(4月2日公開:3月26日~4月1日集計分)のTOP10は以下の通り。
1位:Uru「あなたがいることで」
2位:YOASOBI「夜に駆ける」
3位:Rin音「snow jam」
4位:ザ・ドリフターズ「志村けんの全員集合 東村山音頭」
5位:ザ・ドリフターズ「ヒゲのテーマ」
6位:GeG「I gotta go」
7位:Uru「プロローグ」
8位:Official髭男dism「I LOVE…」
9位:ACE COLLECTION「70億にただ1つの奇跡」
10位:家入レオ「未完成」
Uru、YOASOBI、Rin音が2週続けてトップ3をキープ。ヒゲダン、ACE COLLECTIONなども先週に続いてトップ10に残っており、バイラルチャートでの圧倒的な強さを見せているが、今回取り上げるのは4位・5位にランクインしたザ・ドリフターズのほかないだろう。
(関連:ザ・ドリフターズの名曲がバイラルチャート上位に 国民的コメディアン、志村けんが遺した音楽的功績)
ご存知の通り、ザ・ドリフターズのメンバーであり、コメディアンの志村けんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったのが3月29日。今回バイラルチャートを急上昇したのは、1969年から放送された国民的人気番組『8時だョ!全員集合』(TBS系)にて、志村が主役の名物コーナーで披露されていた2曲「志村けんの全員集合 東村山音頭」「ヒゲのテーマ」である。
5位「ヒゲのテーマ」は、志村けんと加藤茶による“ヒゲダンス”のBGMとして当時大流行した楽曲で、シングルリリースされたのが1980年2月。SNSでも話題になったが、音楽雑誌『jam』でレコードレビューを執筆するほど志村は音楽マニアであり、特にソウルミュージックを愛聴していた。「ヒゲのテーマ」は、アメリカのソウルシンガー、テディ・ペンダーグラスが1979年にリリースした「Do Me」のリフを引用して、たかしまあきひこのアレンジで作られたという有名なエピソードがあるが、前年の海外のソウルミュージックを取り入れるスピード感からしても、志村が相当な音楽愛とヒットの目利きを持っていたことがよくわかる。
4位「志村けんの全員集合 東村山音頭」は、こちらも名物コーナー“少年少女合唱隊”の中で志村が歌って大ヒットした楽曲で、加藤茶による「加藤茶のはじめての僕デス」と合わせてレコード化されたのが1976年9月。こちらもアレンジはたかしまあきひこが担当しており、〈四丁目〉から始まって〈三丁目〉、〈一丁目〉へと進んでいく構成は、何度見ても思わず笑ってしまう。特に〈一丁目〉パートでの豪快なシャウトは、こちらも志村が愛するファンクの帝王、ジェームス・ブラウンからの影響だ。
志村けんが亡くなって以降、各局で追悼番組が放送されているが、新型コロナウイルスの影響で大人数のお別れ会などは開くことができていない。音楽を愛した志村を、せめて今は音楽を通して追悼しようというラジオ局やファンからの強い想いが、今回のバイラルチャート急上昇を生み出したと言える。そしてChildish Gambinoやデュア・リパなど、ファンクを現代風に解釈した作品がチャートを賑わせている昨今、ザ・ドリフターズの楽曲は、全くもって古びた気配を帯びていない。
志村は、どのコントも毎回続けるつもりはなく、1回きりだと思って作っていたというが、それが番組の名物コーナーになり、後世まで楽曲も受け継がれているのだから本当に素晴らしいことだ。それは未来永劫、日本の文化的な財産として国民の記憶に残り続けるに違いない。(信太卓実)