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演出はハリウッド映画のよう 劇場版『ヒロアカ』は“TVアニメの映画化”の意義を感じさせる作品だ

映画

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リアルサウンド

 『週刊少年ジャンプ』で連載中の堀越耕平のコミックス『僕のヒーローアカデミア』。テレビアニメ3期も絶賛放送中だが、初の劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』も、先日いよいよ公開となった。

 本作は、雄英高校の期末試験後から林間合宿前までの夏休み期間を描いたオリジナルストーリー。海外の人工島で開催される、ヒーローアイテムなどの展示会「I・エキスポ」というこれまでにない舞台で、新キャラクターも多数登場する内容となっている。しかし、原作者の堀越が映画の脚本段階から打ち合わせに参加し、総監修とキャラデザを担当していることもあってか、まったく違和感なくストーリーに入り込むことができた。

 平和の象徴であるヒーロー・オールマイトのキャラデザや衣装(星条旗の青・赤・白が使われている)がアメコミ的に描かれていることからもわかるように、堀越といえば、大のアメコミ好きとして知られている。とはいえ、ヒロアカの作品全体を通して見ると、そこまでアメリカンテイストが強いわけではない。だが、劇場版は海外が舞台ということもあって、冒頭からこれまでにないアメコミ節が炸裂していて新鮮だった。

 また、堀越自身も映画特設サイトにて「映画ならではの派手なアクション等盛りだくさん」と語っているように、大きなスクリーンで観るバトルシーンの迫力も想像以上の仕上がりだ。新登場のヴィラン(悪役)も、ハリウッド映画を彷彿させるような規格外のスケールで、テレビアニメ版よりも自由度の高い演出を堪能できる。

 こうした演出以外に、新キャラクターの存在も際立っていた。キーマンとなるのは、オールマイトの旧友で世界的な科学者でもあるデヴィッドと、その娘・メリッサだ。彼ら親子は、科学の力でヒーローたちを支えている。本編でも、サポート科の発目のような技術者が登場するものの、ややマッドサイエンティスト気味の発目と比べて、デヴィッドとメリッサの人となりはごくごく一般的だ。

 さらに、メリッサは過去のデクと同じ“無個性”の少女。頭脳明晰だが、それも努力の上に成り立っている。皆キャラが濃く、人並み外れた個性を持つヒーローたちと比較すると、メリッサはひどく“凡庸”だ。しかし、そんな彼女にも、劇中で重要な役割が与えられている。メインテーマは「ヒーロー」だが、華やかに活躍する彼らを陰ながら支える裏方的存在にも焦点が当てられている点が、この劇場版の見どころだろう。

 このように、新キャラを含めて非常に多くのキャラが登場するにも関わらず、一人ひとりの印象的なエピソードがうまく織り込まれてるため、ゴチャゴチャとした印象をまったく受けないのも、本編の仕上がりに通じている。もちろん、雄英高校メンバーの見せ場もしっかりと用意されているので安心してほしい。劇場版でしか観られないオールマイトとデクの共闘はもちろん、轟・爆豪・切島ら爆裂トリオの活躍にも注目だ。

 テレビアニメ版の旨味を凝縮し、さらに遊び心も加えた仕上がりの劇場版ヒロアカ。本編をまとめた総集編的な劇場アニメも多いなか、わざわざ映画化することの意義を存分に感じさせてくれる作品だった。

■まにょ
ライター(元ミュージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。Twitter

■公開情報
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』
現在公開中
声の出演:山下大輝、三宅健太、岡本信彦、佐倉綾音、石川界人、梶裕貴
原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平
監督:長崎健司
脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
音楽:林ゆうき
アニメーション制作:ボンズ
(c)2018「僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE」製作委員会(c)堀越耕平/集英社
公式サイト:http://heroaca-movie.com/