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B’z、不安な時代を明るく照らした「“HOME” session」 互いを思いやる温かいパフォーマンスの力

音楽

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リアルサウンド

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛により、様々なアーティストがライブ映像やリモートセッション動画などを配信して話題を集めている。B’z公式YouTubeチャンネルでは名曲「HOME」のセッション動画が2つ公開され、総計約510万回再生を記録。「歌詞が刺さる」「ずっと見ていられる」など様々なコメントが寄せられ、改めてB’zのすごさに魅了された人が続出している。“STAY HOME”週間に彩りを与えてくれた、この「HOME」という曲の持つ力とは何なのか。B’zが持つ人々を動かす力に迫りたい。

(関連:B’z、時代を明るく照らす「“HOME” session」

 B’zの「HOME」は、1998年にリリースされた25枚目のシングル表題曲で、この曲で21作連続でのチャート初登場1位を獲得し、ミリオンヒットの売り上げを記録した。発売から20年以上経った現在も、ファンの間で根強い人気を誇っている名曲だ。

 オリジナルはアコーディオンや松本孝弘の奏でるガットギターのイントロが印象的な、ブルージーなミディアムナンバー。太く丸みのあるエレキギターの音色を中心にした、泥くさいタッチのグルーヴィなバンドサウンドと、稲葉浩志のどこか飄々としてすべてを笑い飛ばすようなボーカルが秀逸に耳に響く楽曲だ。香港で撮影されたアジア映画のようなMVは、現在もB’zの公式YouTubeチャンネルでショートバージョンを見ることができる。

 実はこの曲にスポットが当たったのは、リリース時を除いてこれが2度目になる。1度目は東日本大震災発生時で、Linkin Parkが設立したチャリティー団体「Music For Relief」によるチャリティーアルバム『Download to Donate: Tsunami Relief』に、Hoobastank、Linkin Park、Guns N’ RosesのSlashやR.E.M.ら海外ロックアーティスト勢に混じって日本代表として参加し、「HOME」の英語バージョンが収録されたことがあった。

 日本のピンチにいつも寄り添ってくれる、温かくて優しい隣人のような存在の曲。「HOME」の魅力は、松本によるミディアムテンポの心地よいサウンドもさることながら、稲葉が手がけた歌詞にあるだろう。そもそもは、気持ちを素直に言えなかったことで終わった、1つの恋を悔やんだ男泣きの曲。実は2番では、あきらめ悪く彼女を追いかける姿も歌われているが、「B’z “HOME” session」では、誰かのせいにしたり羨んだりするのではなく、地に足を付けて自分が信じる居場所を見つけようと歌った1番にスポットが当てられている。

 この1番の歌詞を自分たちの今に置き換えた時に感じるのは、主人公の中でうごめく感情が、圧迫された日常から生まれる軋轢や不信といった負の感情と必死で戦っている、まさしく今の我々の感情と重ねられるということだ。自分の中から溢れ出そうになる負の衝動を、決して上から抑えつけることなく、B’zの2人が一緒に悩みながら〈さあ見つけるんだ 自分だけのHOME〉という歌詞で、率先して手を引いてくれているように感じられてならない。

 どんな時でも、聴けば挫けそうな自分を奮い立たせてくれる。そんなパワーとメッセージが、「HOME」には込められている。

 「B’z “HOME” session」は、4月27日にB’z公式YouTubeチャンネルで公開されるやすぐ話題となった。まず、松本が奏でるオールディーズのアメリカンロックを思わせるような、アコースティックギターの響きに耳を奪われる。続けて稲葉のカウントによって、レスポールのエレキギターに持ち替えてイントロのフレーズが奏でられる。たった2本のギターにも関わらず実にゴージャスに聴こえるのは、松本のギタープレイによるものだろう。運指やカッティングの角度など細かいところまで確認できるのは、ギタリストを志す者にとっては実に貴重な機会でもある。加えて稲葉のボーカルは、いつもより柔和に感じられて非常に心地良い。画面に向かって訴えかけるような動きや、歌詞に合わせて深呼吸をする仕草など、いつものド派手なパフォーマンスとはひと味違った抑えめの動きが逆にリアルで、画面を通して2人の想いが伝わってくる。2人のプライベートスタジオの様子が見えるのもファンには嬉しいだろう。

 4月30日にはこれを元にしたバンドセッション動画「B’z “HOME” Band session」も公開された。昨年開催されたツアー『B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』のサポートメンバー4人を加えたもので、ライブのアコースティックコーナーを目の前で見ているような臨場感と優しく響くバンドサウンドが秀逸だ。2人の時のリラックスした雰囲気はそのままに、「HOME」という曲に乗せた温かさや相手への思いやりがさらに感じられるものになっている。バンドというものは、メンバー全員が歩調を合わせて、相手を尊重しながら自分自身も個性を発揮していくのが理想。少し大げさかもしれないが、ここにこそ今求められる社会の在り方があるのかもしれないと感じられた。

 また「B’z “HOME” session」に先駆けて、稲葉浩志とスティーヴィー・サラスによるユニットINABA/SALASも、3年ぶりのアルバム『Maximum Huavo』から「IRODORI」のセッション動画を公開。犬のニット帽を被ったサラスのユーモラスな表情もあいまって、プライベート感が溢れるこの動画では、稲葉のエモーショナルな歌声と豊かな表現力、さらに人間臭さが溢れる言葉で思いが綴られた歌詞に喝采が集まった。

 B’zと言えば「LOVE PHANTOM」や「ultra soul」などのド派手なアッパーソングで知られるが、「ALONE」や「今夜月の見える丘に」「永遠の翼」など心の機微を歌ったミディアムナンバーやバラードのヒットも数多い。これら名曲の数々は、どれもスーパースターでありながら、自身もみんなと同じひとりの人間であるという視点から生まれている。常に聴く人を思い楽しませることを心がけ、ファンやサポートメンバーと家族のように接するB’zの2人の心意気が、これらセッション動画には溢れている。(榑林史章)