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GYROAXIA 小笠原 仁×ASH DA HEROが語る、『BanG Dream!』プロジェクトに向ける情熱とバンドとしての野望

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 TVアニメ放送もスタートしたメディアミックスプロジェクト『ARGONAVIS from BanG Dream!』で、明るく前向きな印象のArgonavisに対して、ラウドロックを響かせるGYROAXIAは、さながらダークヒーローといった印象。

参考:Argonavis 伊藤昌弘×廣澤優也 対談インタビュー 両者が語る、結成からアニメ化までの軌跡とバンドの成長

 そんなGYROAXIAのカリスマボーカル=旭 那由多を演じる声優の小笠原 仁と、「REVOLUTION」「MANIFESTO」「LIAR」などの作詞・作曲・編曲を手がけて音楽の方向性の鍵を握るASH DA HEROが、GYROAXIAの魅力を語る。対談中は、熱い音楽談義に花を咲かせた二人。ASH DA HEROも驚く小笠原のポテンシャルの高さが、音楽シーンを揺るがす存在となることへの期待を高めるトークになった。(榑林史章)

■ひとりカラオケで培ったハイブリッドボーカル

ーーこの『ARGONAVIS from BanG Dream!』というプロジェクトはアニメ放送の前から声優がリアルバンドを組んでライブ活動を行っていますが、こういうプロジェクトはどう思いましたか?

小笠原仁(以下、小笠原):このプロジェクトがスタートした時点で僕はまだオーディションを受けてなかったので、『BanG Dream!(バンドリ!)』シリーズのいちファンとして「チャレンジングな作品だな」と思いました。実際に座組のひとりとしてこの作品と関わるようになって思うのは、何を伝えるにもまず先に音楽があって、Argonavisが奏でる音やお客さんに伝える気持ちから熱を感じるということ。でもやっぱり根っこには『BanG Dream!』という魂を受け継いでいるんだなっていうところは、ファンから見てもすごくエモーショナルな気持ちになります。最初からとても高い熱量が詰まっている作品だなと。

ASH DA HERO(以下、ASH):僕ももともと『BanG Dream!』の存在は知っていたけど、僕とは違うフィールドのムーブメントだと思っていたから、声をかけていただいたときはすごく意外だったし驚きました。そこでプロットを見させていただくと、バンドや音楽を志す人のリアルをすごく追求しているなと感じて。もともとバンドをやっていた人間としてこれまでに経験してきたこと、例えばライブハウスで凌ぎを削ったことや泥水をすするようにやってきたことなど、自分に蓄えられているものをすべて注ぎ込んで、作品に命を吹き込むことに一役買えたら良いなと思いました。

ーーそういう熱量が作品に欲しかったからこそ、ASHさんにお声がかかったんでしょうね。お二人が最初に出会ったのは、どのタイミングですか?

小笠原:昨年12月にTOKYO DOME CITY HALLで開催された『BanG Dream! Argonavis 2nd LIVE 「VOICE -星空の下の約束-」』のときです。GYROAXIAがシークレットゲストで出て、控え室に戻ったらASHさんが待っていてくださって。

ASH:でもそのときはバタバタしていたし関係者も多かったから、挨拶ぐらいだったよね。「超良いライブでしたね!」って。

小笠原:熱い握手を交わさせていただいて、その手から熱量みたいなものがすごく伝わりました。僕としてはASHさんが仮歌を入れた「MANIFESTO」のデモを通してASHさんの人柄に触れさせていただいていたから、「確かにあの曲を作った人だ」ってすごく納得した覚えがあって。

ASH:分かる。それってボーカリスト特有の特殊能力で、僕も仁くんに対してまったく同じことを感じた。そもそもGYROAXIAの「MANIFESTO」という曲は、仁くんの歌声を聴いて作った曲だし。

ーーどういうことでしょうか?

ASH:制作スタッフから楽曲のオファーをいただいたときに、仁くんの歌声を聴かせてもらったんです。SPYAIRさんの「現状ディストラクション」を歌っている音源だったんだけど、その声から「こういう性格を持った人なんじゃないか」、「こういう気持ちを持っているんじゃないか」って、仁くんの人間性やキャラクターが見えて。そこからイメージを広げて、仁くんが心から歌える言葉やメロディを考えたから、「MANIFESTO」という曲のモデルは仁くんなんです。だから僕も初めて仁くんと会ったときは、声のイメージ通りでした。爽やかだけど心の奥底には、燃えているものを持っている人。ステージングも堂々としていたし。

小笠原:そうだったんですか。すごく嬉しいです。でもステージに立つまでは、子鹿のようにプルプル震えていましたけどね(笑)。

ーー小笠原さんの声は、鋭さなどフックになる個性があって、高いけど嫌な感じがしない。ASHさんは小笠原さんの声に、どんな魅力を感じたのですか?

ASH:おっしゃっていただいたことに加えて、甘さと色気が奥にあって、それは彼のSNSからもうかがえるお茶目でキュートな面に通じていると思う。だから格好良さと可愛らしさの両面を持った、すごく現代型のボーカリストだと思います。

ーー旧来型は、どういうボーカリストなんでしょうか?

ASH:これしかできないというのが旧来型です。ロックはロック、ポップスはポップスしかできない。でも仁くんはロックもポップスも歌えるし、ラップもめちゃめちゃ上手い、ハイブリッドです。

ーー小笠原さんは、もともと歌の経験はあったんですか?

小笠原:いえ、ボイストレーニングや音楽教室に通った経験もなく、バンドは文化祭のときに友だちとやったくらいです。ただ歌うことはすごく好きで、中学校に入ってからはもらったお小遣いをすべて「ひとりカラオケ」につぎ込んでいて。最初は付き合いで行っただけだったんですけど、ものすごく楽しくて青天の霹靂でした。初めてカラオケを歌ったときの気持ち良さがずっと忘れられず、この仕事をやる前はお金が尽きるまで毎日のようにカラオケに通って、役者・声優の専門学校に通うようになってからも、1週間空けたことはなかったくらいです。

ーーそんなに歌が好きだったんですね。カラオケでどういう歌を歌っていたんですか? やっぱりロックが多かった?

ASH:それは俺も聞きたい。

小笠原:母親がB’zさんのファンで、お腹にいるときから聴いて育ったので(笑)、B’zさんの曲はほぼ全曲歌えます。そこから平井堅さんやコブクロさん、マイケル・ジャクソンなどの洋楽も。歌の上手い方の曲を聴くと「この歌声はすごい!」って思うのと同時に、「自分にも歌えるかな」っていう目線になるんですね。一度すごいと思ったら歌えるようになるまで練習して、納得できるレベルまで達したら次の曲に行くという感じで。エミネムのラップにハマったときは、もう大変でした。どれだけ練習してもものにできなくて。

ーーロックとかラップとかジャンルに関係なく練習されていたというところは、ASHさんがハイブリッドな現代型ボーカリストと評したところと繋がりますね。

ASH:腑に落ちましたね(笑)。完全にシームレスに音楽を聴いている世代の特徴です。だからこそ僕は楽曲を作るとき、もちろん制作サイドからのお題を消化した上で、自分のなかでは縛りを設けず彼の声の格好良さが際立つキーでメロディラインを考えています。でも仁くんがレコーディングした「MANIFESTO」や「REVOLUTION」を聴いたときは、僕の想像を軽く超えていたけど。

 それに極論を言うと、歌の上手い下手に音程はあまり関係なくて、むしろリズム感なんです。16分とか32分みたいな細かい休符が、しっかり取れているかどうか。仁くんは、自分で意識しなくてもそれができていて、きっと“ひとカラ”でエミネムなどいろんな音楽に触れたことで、その感覚が培われたんだと思う。正直「ちょっと難しいラップを提案してもきっと越えてくるだろう」と予想しながら作ったところがあったから、レコーディングのときは「ほらね!」って周りに言っちゃうくらいすごかったです。

■旭 那由多は一本の研ぎ澄まされたナイフ

ーーGYROAXIAの曲は、HoobastankやLinkin Parkといった海外のロックバンドのようなスケール感があると思いました。ASHさんはGYROAXIAの音楽の方向づけにも関わったそうですが、どんなバンド像をイメージしたんでしょうか?

ASH:GYROAXIAというバンドは、旭 那由多という圧倒的なカリスマ性を持ったワンマンバンドであることが絶対に面白くて、でも現代の音楽シーンにはそういうアーティストは少ない気がします。昔は「ボーカルの俺が偉い!」みたいな俺様ボーカルがけっこういて、今は時代がそういう存在を求めていないというのもあるけど、俺様ボーカルが好きな人も絶対いる。そういうロックの歴史みたいなものをちゃんと踏襲した、ある種の王道的なロックバンドを作りたいと思いました。だからボーカルのカリスマ性が爆発するような楽曲を作りたいと思って。

ーー俺様的なバンドって具体的には?

ASH:例えばBon Joviはそうじゃないですか? 自分の名前をバンド名にしちゃうくらいだし(笑)。だからバンドの持つ雰囲気は80年代で、音は90年代~2000年代というイメージ、歌詞にはちょっとグランジっぽい退廃的な要素を落とし込んでいます。というのも、那由多のようなエゴイスティックなボーカルは、きっとハッピーなことは歌わないと思うんです。歌いたいと思ってもシャイで、「頑張ろうぜ」って真っ直ぐ言えないと思うから。

小笠原:確かに那由多は、「頑張ろうぜ」なんて天地がひっくり返っても言いませんね(笑)。

ーー小笠原さんは、GYROAXIAのボーカルである旭那由多というキャラクターを構築する上でどんなことを考えましたか?

小笠原:僕がオーディションを受けたときは、3行くらいの説明文と4つのセリフだけで、そこから考えて演じなくてはいけなくて。そのときの印象としては、周りに当たり散らすだけの横暴な暴君といった印象でした。でもボイスドラマのセリフやASHさんが書いてくださった歌詞を通して、どんどんイメージが変わりました。

 ひとつラッキーだったのは、那由多は作詞作曲を自分でやっているというところ。つまりASHさんが書いてくださった「MANIFESTO」などの曲や歌詞は、そのまま那由多が書いたものだと受け取れるんです。なので、「MANIFESTO」をいただいたときに自分のなかで旭 那由多というキャラクターが、カチャカチャって組み上がった感覚がありました。

ーーそこでどんなキャラクター像をイメージしましたか?

小笠原:決して周りや世のなかに対して敵意を持っているわけではなく、単に音楽以外のことに興味がない。職人気質と言うか、ひとりで黙々とナイフを研いでいる感じで、それを邪魔しようものなら相手が誰であろうと容赦なくナイフを向ける。でもナイフって研げば研ぐほど鋭くなるけど、同時に脆くもなるんです。すごく強いけど、ある日突然いなくなってしまいそうな危うさも感じさせます。

ASH:そういうところが、昔のロックスターっぽくて格好いい。

小笠原:演じて、歌って、新しい曲をいただいて、関わっていくうちに、どんどん自分のなかで旭 那由多というキャラクターができあがって、一本の鋭いナイフのような印象になりました。最初は銃火器で周りに乱射するようなとんでもないキャラクターだと思っていたけど(笑)。

ASH:仁くんが言ったことに間違いないです。武士とか、「俺の後ろに立つな」じゃないけど、そういうハードボイルドさがあって、虎視眈々とした感じ。

ーー「REVOLUTION」は歌がメインで、「MANIFESTO」はラップがメインのラウド系。そしてアニメのエンディングテーマとして流れる「LIAR」は、両方の曲の格好良いところを合わせたようだと思いました。「LIAR」を作るにあたっては、どんなことをイメージしましたか?

ASH:「LIAR」は、音楽制作スタッフ側から「ダンスナンバーで」という指定があったんです。僕のなかですでにGYROAXIAというバンドに命が吹き込まれ始めていたから、「彼らの新曲のダンスナンバーはどういうものだろう?」と想像したときに、決してディスコやEDMではないと思ったんですね。そこで辿り着いたのが、エモーショナルロックやラウドロックに、トラップのビートを組み合わせることでした。最終的にはトラップじゃなくなったけど(笑)。だから最初はリズムのループとシンセだけでオケを作り、那由多がそれをジャイロのメンバーに投げたとして、メンバーはどんなアレンジを加えて返してくるかを想像してアレンジを固めて。最終的にループや打ち込みといった小賢しいものは無くして、バンド演奏のグルーヴのみで、ダンサブルさを表現する方向に持っていきました。

ーーバンドの生演奏でダンスビートを感じるのは難しいと思うのですが、歌うときはやはりリズムを意識していますか?

小笠原:「LIAR」は、リズムが「MANIFESTO」以上に難しくて。

ASH:相当難しいと思う。

小笠原:滑舌が吹き飛ぶようなめちゃめちゃ速いラップパートもあるんですけど、全体的にそれ以前に歌わせていただいていたジャイロの曲とは音数も雰囲気も違うし、イントロのコーラスの裏でシンセが鳴っている時点で「いつもと様子が違うぞ!」って。その後にダダダダッて入ってくるドラムの感じも手伝って、「今度のジャイロはこういう感じか!」と、ビジョンがバシッと伝わってくるインパクトがありました。でもひと通り聴いて思ったのは、「ASHさん“スクリーム”しすぎ。殺す気ですか!」っていうことでした(笑)。

ASH:スクリームは、やってもやらなくても良いと思っていたんですけどね。声優さんにノドを酷使させるのは申し訳ないから、俺が歌ったスクリームをそのまま使ってもらっても良いと思っていたんです。

小笠原:ディレクターさんからも「歌わなくても大丈夫だよ」と言われたんですけど……。旭 那由多は作詞・作曲からコーラス&ハモリまで全部やっているキャラクターだから、もしここで譲ってしまったら役者としてブレてしまいそうだし、旭 那由多として今後ステージに立つときやマイク前に立つときに、いろいろと大事なものを失ってしまうと思ったんです。だから。血反吐を吐く思いでスクリームの練習をしました。

ASH:マジメだな~(笑)。でもスクリームはやり方によってはノドをつぶしちゃうから気をつけないと。

■野外ロックフェスで対バンが夢!

【GYROAXIA】「MANIFESTO」【BanG Dream! Argonavis 2nd LIVE「VOICE -星空の下の約束-」】
ーーASHさんが太鼓判を押す小笠原さんの歌声、旭 那由多のカリスマ性、洋楽ロックのようなスケール。GYROAXIAが今後どんな曲を歌うのか、早く次の曲が聴きたいです。

小笠原:僕もすごく気になります!

ASH:これは僕の勝手な想像ですけど、GYROAXIAが世の中に出ていく過程で、自分の思い通りにできないことが出てきて。那由多が悶々としながら、のしかかったバイアスを全部ハジき飛ばしていくときのような、那由多がひとつ成長するときのキーとなるような曲が書けたら良いなって思っています。

小笠原:僕としてはバラードが聴きたいです!

ASH:でも、まさにそれです! あえてバラードとは言わなかったけど、Nickelbackみたいなスケールのでかいバラードが、きっとすごく似合うんじゃないかって思っています。

小笠原:良いですね。歌ってみたいです。

ーーGYROAXIAは、今はまだアニメやコンテンツの一環ではあるけど、『BanG Dream!』のPoppin’Party やRoseliaのようにコンテンツの枠を超えた活動に広がって行く可能性もある。今後は、どんなバンドに成長していくと思いますか?

ASH:誤解を怖れずに言わせてもらうと、そこらへんのバンドに対して「おまえらこいつらを甘く見てるとと余裕で負けるぞ!」って声を大にして言いたい。世の中のバンドの人たちって、ちょっとArgonavisやGYROAXIAをナメてる節があると思うんです。もちろん理解のある人もいるけど、「どうせアニメでしょ」とか「声優でしょ」って。でも、ナメてると今のポジションが余裕でなくなるくらい、GYROAXIAは求心力を持っている。携わっている人間としても今後の活躍がとても楽しみですし、俺自身もうかうかしてらんねえなって。

小笠原:そんな風に思ってもらってありがたいですし、その期待に沿えられるように頑張らないとなって思います。僕らの立ち位置って本当に不思議で、コンテンツの中に存在するバンドなんだけど、いちバンドとしても頑張りたい気持ちは100億%あります!

 2nd LIVEにシークレットゲストで出たときにいろんな反応をいただいて、業界の方からも「良いライブだった」と感想をいただきました。きっと新たなステージを見つけられるだろうと思っています。そのときに自分たちがどういう気持ちで、どういうモチベーションでステージに立つのか、メンバー全員が楽しみにしているところです。

ーー何か具体的な目標はあるんですか?

小笠原:『ARGONAVIS from BanG Dream!』という作品を知らない人ばかりが集うフェスに出ることが、ひとつの目標です。

ASH:俺は野外ロックフェスでGYROAXIAを見たい。願わくばそこで対バンしたい。それがいちばん格好良くない?

小笠原:格好いいです! 僕らとしてもそういう形でASHさんと一緒のステージを踏むことが、ASHさんへの一番の恩返しだと思っています。言葉ではいくらでも述べられるけど、音楽家であるASHさんに一番気持ちを返せるのは音楽で、ステージでのパフォーマンスやステージ上での言葉だと思っているから。

ASH:GYROAXIAと対バン。俺にとっても夢が一個増えました。それもフェスっていうね。俺らのことを全然知らないやつらが見て、「格好良くない?」ってなって、そこでGYROAXIAってどんなバンドか調べたらアニメやゲームに出ていて、「そうだったんだ!」って。

小笠原:それが理想です僕らを見てもらって、『ARGONAVIS from BanG Dream!』プロジェクトと僕らの本気を知らしめたいです。

ASH:なるんじゃない?

小笠原:そう、ならせるつもりでいます! GYROAXIAとして、何ごとも妥協することなく、常に殴り合いの気持ちでやっていきます!

ASH:コンテンツのなかのGYROAXIAと同じように、立ちはだかるもの全部なぎ倒して進んでいって欲しいね。(榑林史章)