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伊藤沙莉、志田未来、福田麻由子が躍進 大成した20代半ばの元子役女優

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リアルサウンド

 子役は大成しないと言われたのは昔のこと。現在では多くの子役出身の女優、俳優が活躍している。なかでも20代半ばになる伊藤沙莉(26)、志田未来(27)、福田麻由子(25)が躍進中だ。

 伊藤は、現在放送中の連続ドラマ『いいね!光源氏くん』(NHK総合)での千葉雄大とのコンビが絶好調。「源氏物語」の登場人物であるはずの平安貴族・光源氏(千葉)が現代に出現。自分に自信のないこじらせOLの沙織(伊藤)の家で同居し始める。中盤からは光の義兄の中将(桐山漣)も登場し、さらに多元宇宙論の研究者のフィリップ(厚切りジェイソン)の出現で、ラストに向かって物語が目まぐるしい加速を始めた。

 「コロナ疲れが癒される」と、同局「よるドラ」枠で最高視聴率を記録している同作。烏帽子にジャージー姿でポテチを頬張る光源氏をチャーミングに体現する千葉と、地味な自分にコンプレックスを持ち、卑下しがちながら、光源氏に絶妙なツッコミを入れる沙織を巧みに見せる伊藤の相性の良さがバツグンで、成功へと繋がった。特に伊藤の魅力的なハスキーボイスと、小気味よいテンポを生みだす芝居感覚が、突飛な設定のラブコメを、男女を問わず幅広い年齢層に受け入れられる空気で包んでいる。

 伊藤のデビューは、2003年の高岡早紀主演ドラマ『14ヶ月~妻が子供に還っていく~』(日本テレビ系)。「若返り」の薬によって運命を狂わされたカップルの時間を見つめるラブストーリーだ。伊藤は物語のキーパーソンである、ヒロインの旧友で、少女に若返ってしまった女性研究員役という難役を9歳にして演じきり、深い印象を残した。そして『わたしたちの教科書』(フジテレビ)、『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)などでキャリアを積み上げ、近年の連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)で高いコメディセンスを発揮したのを皮切りに、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)、『この世界の片隅に』(TBS系)と急速に支持を得ていった。新垣結衣主演、野木亜紀子脚本の『獣になれない私たち』(日本テレビ系)では、空気を読まず、やる気もない、それでも憎めない後輩の夢子を嫌味なく演じ、多部未華子主演の『これは経費で落ちません!』(NHK総合)の頼りなさそうに見えて常に味方として傍にいてくれる後輩・真夕役で「こんな後輩がほしい!」と人気を確実なものにした。

 ちなみに映画では、オムニバス『全員、片思い』(2016年)の一編と『獣道』(2017年)に主演。前者では中川大志(W主演)を相手に思春期の片思いのもどかしさとはがゆさ、そして切なさを、須賀健太とW主演の後者では最近ファンになった人はドキっとするような体当たりの演技も見せている。新作としては山田孝之主演の『ステップ』、山崎賢人主演の『劇場』と2本の映画が控える伊藤。このところのコメディエンヌぶりもさることながら、彼女の芝居には、役柄に応じて、誰しもが必ず持っているパーソナルスペースを、きちんと感じられるのがいい。だからこそリアルで共感できるコミュニケーションが成り立ち、どんなジャンルであろうとも、そこに相手がいることが伝わってくる。

【写真】『美食探偵 明智五郎』出演中の志田未来

 2000年にドラマ初出演を果たした志田の子役時代の代表作は、2006年に放送された初主演ドラマ『14才の母』(日本テレビ系)だろう。未成年の妊娠と出産をテーマに切り込んだ作品でまさに熱演を見せ、ギャラクシー賞ほかに輝いた。そしてドラマ『正義の味方』(日本テレビ系)、『小公女セイラ』(TBS系)、映画『誰も守ってくれない』と作品を積み上げていった。『借りぐらしのアリエッティ』や『風立ちぬ』など、劇場アニメーションの吹き替えでも才能を発揮している。近年では助演やゲスト出演での好演が多く、綾野剛主演の医療ドラマ『コウノドリ』(TBS系)シーズン2第2話での耳の聞こえない妊婦役も大きな話題に。こちらは先月、傑作選として再放送された。

 今クールの作品では、NEWSの増田貴久主演のドラマ『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系)の第1話ゲストや、東村アキコ原作、中村倫也主演のドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)で小池栄子演じるマグダラのマリアの仲間として殺人に加担するキャラクターを演じている。元気な笑顔も魅力の志田だが、最大の武器は繊細な心の内を溢れさせる涙。志田の涙は、一気に彼女の立つ世界へと引き込む力を持っている。一方、公開待機中の加藤清史郎主演の青春映画『#ハンド全力』では、また違った魅力を振りまく。主演の加藤のほか、鈴木福、仲野太賀、安達祐実と人気子役、元子役が勢ぞろいした作品になっているのも話題の同作で、志田は加藤の兄を演じる仲野の彼女役。軽そうでいて情に厚い女性をさらりと演じている。

 福田のドラマデビューも2000年。2004年には『下妻物語』で映画デビューを果たす。ドラマ『白夜行』(TBS系)、『てるてるあした』(テレビ朝日系)などに出演。映画では神木隆之介と主演を務めた『Little DJ~小さな恋の物語』や、『犬と私の10の約束』、日本でもヒットしたドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』をリメイクした長瀬智也とのW主演作『ヘブンズ・ドア』などで好演。近年では『疑惑とダンス』『ラ』で女性としての成長を感じさせる大胆な演技を披露している。また、志田もゲスト出演したドラマ『コウノドリ』シーズン2には福田も第6話にゲスト出演しており、松岡茉優演じる産婦人科医に影響を与える妊婦を演じた。そして連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)で戸田恵梨香演じるヒロイン喜美子の妹・百合子に扮し、林遣都との可愛らしい夫婦役で人気を集めたことが記憶に新しい。秘めた強い意志を放つ瞳が印象的な福田だが、どこか物憂げなオーラをまとっており、福田だからこそ成り立つと言える役柄も多く、その演技は常に奥行きを感じさせる。

 さて、まだまだ自粛生活の続く今。動画配信サービスを利用している人も多いだろう。そんな人に『女王の教室』(日本テレビ系)がおすすめだ。遊川和彦脚本により、天海祐希が小学校の鬼教師を演じた2005年の社会派ドラマで、今や大人の女優として大成した伊藤、志田、福田の3人がそろい踏みしている。幼さの残る3人の姿はつい声を上げてしまうほどに愛らしいが、それだけでなく、当時からそれぞれがきっちり個性を発揮していて改めて驚かされる。またドラマ自体、15年を経た今でも、初回からドカンと響く内容になっている。キャリアは長いが、まだ20代半ばの3人。これからもその演技力と滲み出る個性で、魅了してくれるに違いなく、楽しみで仕方ない。

(望月ふみ)