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それは“運命”の出会い。ロン・ハワード監督が語る『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』

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ロン・ハワード監督とチューバッカ 撮影:堤博之

『スター・ウォーズ』サーガの人気キャラクターの若き日を描く新作映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が本日から公開になる。監督を手がけたのは、数々のヒット作を手がけてきたロン・ハワードで、彼はオファーを受け、脚本を読んだ瞬間に「運命的なものを感じた」と振り返る。「『スター・ウォーズ』は“同僚”とか“盟友”みたいな存在で、自分が監督するなんて考えたこともなかった」というハワード監督はなぜ、本作に“運命的なもの”を感じたのだろうか?

ハワード監督は5歳の時に演技を始め、子役としてテレビドラマなどで活躍した。その後もジョージ・ルーカス監督の映画『アメリカン・グラフィティ』などに出演し、1977年に監督デビュー。ルーカスが原案を務めた『ウィロー』や『バックドラフト』『アポロ13』などヒット作を数多くを手がけ、2001年製作の『ビューティフル・マインド』でアカデミー監督賞を受賞した。現在は自身の制作会社イマジン・エンターテインメントを率いながら、『ダ・ヴィンチ・コード』『フロスト×ニクソン』など幅広いジャンルの作品を手がけている。

『スター・ウォーズ』サーガの生みの親ジョージ・ルーカスと長年に渡って友情を築いてきたハワード監督だが、そもそも彼は本作の監督ではなかった。当初、このプロジェクトは別の監督によって撮影が進められていたが、様々な事情が重なって、前監督がプロジェクトを離脱し、制作が中断してしまう。「スタジオとプロデューサーと監督の間で意見が分かれていて、それぞれが食い違っていた。問題がひとつなら打開できたんだろうけど、複数の箇所で問題があったんだ。そこで僕に声がかかった。僕の役目は、状況をよく理解して、問題を掘り下げて、全員に納得してもらえる新しいアプローチを見つけること。確かにプレッシャーはあったけど、これまでの経験値が役に立ったし、何より前の監督が優秀なスタッフとキャストを揃えてくれていたから、僕はクリエイティブな問題だけに集中できたんだ」

ハワード監督が時間がない中で現場を引継ぐことを決めたのは「最初に脚本を読んだ時に、直感的に映画のテーマと通じ合うことができたから」だという。本作の主人公ハン・ソロは、力で人々を支配する帝国軍が猛威をふるっている惑星で育ち、悪事を働いてでも生き延び、この環境を抜け出して、パイロットになって自由に宇宙を飛び回ることを夢見ている。しかし、日々の暮らしは苦しく、何とか惑星を抜け出すが、幼なじみとは離ればなれになってしまい、想像もしなかった苦境に放り込まれる。青年ハン・ソロはいかにして苦境に立ち向かい、自由を手に入れたのか? 後にルークたちを助け、帝国軍を倒すために戦った“宇宙有数のワル”はどのようにして生まれたのか? 「この映画では理想主義的な青年が、戦いの傷、心の傷を負って、私たちの知るシニカル(冷笑的)なハン・ソロになるまでの旅路を描いている。本作は、主人公が複数ではなくハン・ソロひとりで、どのシーンもソロが経験する試練として描かれているから、他のスター・ウォーズ作品とは少しだけ違うユニークなものになっていると思うよ」

月面を目指して出発するも未曾有のトラブルに巻き込まれてしまった人々を描いた『アポロ13』、数学で世界のすべてを操る理論を発見する夢を追うも精神的に追いつめられていく数学者が主人公の『ビューティフル・マインド』、そしてレース中の事故によって生死の境を彷徨いながら再びサーキットに戻ろうともがく男とそのライバルを描いた『ラッシュ/プライドと友情』など、ハワード監督は繰り返し“理想を抱く主人公が厳しい現実に立ち向かう”ドラマを描いており、プロジェクトを途中から引き継ぐかたちで参加したにも関わらず、『ハン・ソロ…』でも同じ主題が繰り返されている。「そうだね。それは間違いない。僕は人間の最も素晴らしい部分は、夢を抱いて、それを追いかけることだと思う。生きていく中では苦境や葛藤はあるけど、夢を追うことは高貴な行為だと思うんだよ。だから、『ハン・ソロ』の脚本を読んだ瞬間に、描かれているテーマと通じ合うことができたんだ。監督のオファーを受けるのか? それとも断るのか? 熟慮する時間はなかったけど、この物語が描く価値観にはすぐに共感できたから、この物語に飛び込んで直感を信じて動けると思ったよ」

さらにハワード監督は、若き日のハン・ソロにも共感と愛着を感じたようだ。「僕はいつだって自分は少しだけ“アウトサイダー”だと感じながら生きてきたんだ。僕が俳優をやっていた頃の映画界は、子役を育てて大人の俳優に成長させようなんて考えは存在しなかったから、僕は小さな頃からこの世界で生きていくことは試練の連続だと思ってきたし、葛藤を感じてきた。まぁ、当たり前のことだけど『おお! 子役か! こいつは有望な監督候補になるな!』なんて誰も思わないしね(笑)。それに僕は当時、人気のある子役だったから、学校ではセレブリティ扱いされて、結構イジメられたんだよ。子どもというのは時に冷酷になるものだからね。結果として僕はタフになったし、映画の世界で生きていきたいという決意はより堅いものになっていったと思う。だから、僕はいまだに『ハン・ソロ』みたいなストーリーに惹かれるのかもしれないね」

監督の話を聞けば聞くほど、『ハン・ソロ』の物語と、ハワード監督の歩んできた道のりと、彼が手がけてきた作品の主題は重なってくる。しかし、繰り返しになるが本作は彼が始めた企画ではない。「そうなんだ。ジョージ・ルーカスとは45年に渡って友情を築いてきたし、『スター・ウォーズ』は“同僚”とか“盟友”みたいな存在で、自分が監督するなんて考えたこともなかった。ところがこの話が来た。それも絶妙なタイミングで! というのも、僕はイマジン・エンターテインメントで仕事をしていて、何年もかけて進めているプロジェクトもたくさんあって忙しいんだけど、声をかけてもらった時、偶然にも自分で監督をする予定が1年ほどなかった。だから、このプロジェクトに飛び込んでみようと思ったんだよ」

本作は、『スター・ウォーズ』サーガの知られざるドラマを描いた作品であり、みんなが愛するハン・ソロの若き日を描いた作品であり、ロン・ハワードが長年に渡って追い続けてきたテーマを描いた作品でもある。「そうだね。僕はこのプロジェクトに運命的なものを感じているよ」

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
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