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『美食探偵』プロデューサーが明かす撮影の裏側 中村倫也、小芝風花らの演技は何をもたらした?

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 いよいよ6月28日22時より30分拡大SPで最終話が放送される『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)。『海月姫』『主に泣いてます』『ママはテンパリスト』『偽装不倫』『東京タラレバ娘』などで知られる東村アキコ原作の同名漫画をドラマ化した本作は、サスペンスに止まらずコメディー、ラブストーリー、グルメドラマなど多様な側面を見せる。中村倫也演じる私立探偵・明智五郎、小芝風花演じる苺、小池栄子演じるマリアの三角関係の行方にも注目が集まっている。

参考:詳細はこちらから

 今回リアルサウンド映画部では、荻野哲弘プロデューサーにインタビュー。豪華なキャスティングの経緯、撮影の裏側、そして最終回に向けた思いまで、話を聞いた。

「予定調和にしたくない」

ーー視聴者からのリアクションはいかがですか?

荻野哲弘(以下、荻野):SNSを見ていると、中村倫也さんのセリフや一瞬の動きを深く細かく楽しんでいる方々の声が見受けられて、驚くと同時に嬉しいですね。現場では中村さんと意見を交わしながら創る箇所もあるのですが、その部分の反響も大きくて、中村さんのすごさを改めて実感します。

ーー主演の中村さんの力はやはり大きいと。

荻野:中村さんは、自分のシーンだけでなく、物語全体の流れを俯瞰で捉えている方だと思います。明智五郎は台本だけ読むととらえどころがないキャラクターですが、その台本にない部分をご自身で考えて補っているんだろうなと感じます。例えば、明智はマリアに惹かれるキャラクターですが、台本ではなぜ惹かれるのかといった理由はセリフでは意図的に説明していない。でも、「マリア」と聞いたときに明智の目が潤んだり、表情がぐっと変わったり、一つ一つの演技がすごく繊細なんです。

ーーキャスティングはどのように決めたのでしょうか?

荻野:まずは中村さんでしたね。個人的にですが、日曜ドラマという枠は、新しいことをチャレンジする枠だと思っているので、まだ主演を務めたことがない人にしようと。あと、食にまつわる長いセリフもあるので“声”も重視していました。そうした設定の上で、何をしでかすか分からない方がいいなと思い、中村さんにオファーさせていただきました。ちなみに、中村さんは撮影の合間に歌を口ずさむことがあるんですが、その声がすごく綺麗で、思わず聞き惚れてしまいますね(笑)。

ーーマリア役の小池栄子さん、苺役の小芝風花さんはいかがでしょう?

荻野:マリアを演じた小池栄子さんは、原作を読みながら既に頭に浮かんでいたので、引き受けていただいたときは思わずガッツポーズをしていました。一方、苺のキャスティングについては少し悩みました。もともと苺役が決まる前から、中村さんとは「1.5倍速に感じるくらい、情報量が多いドラマにしたい」と話し合っていたんです。そこで、早口でも滑舌が良くて、中村さんとテンポの良いかけ合いができる若手女優の方々を探して、『トクサツガガガ』(NHK)での演技を観て小芝風花さんにオファーしました。小芝さんの芝居は、本当に素晴らしいです。実はさっきまで最終話の編集をしていたんですが、そのときも思わず鳥肌が立ってしまいました。今回はキャストのみなさんが、台本にないものを持ち込んでくれるんです。中村さんは第1話の撮影から「セッション」と本作での演技についておっしゃっていましたが、その「セッション」のレベルが話数が経つにつれ、さらに上がっているように感じます。

ーー作品自体も、ユーモラスなかけ合いもあれば、残酷なシーンもあって、役者の方々それぞれの見せ場があります。

荻野:予定調和にしたくないと当初から決めていました。東村アキコさんの原作自体もそうだったので、そのエッセンスを55分の枠で表現したいという制作陣の気持ちを、キャストの方々が汲んでくれたからこそ、いろいろなことを試すことができる場になっているんだと思います。

ーー第6話のラストシーンでの特殊な撮影方法(参考:『美食探偵』第6話は一部で“通常と異なる”撮影 第7話以降は放送延期、3週にわたって特別編に)も話題を呼びました。

荻野:あの撮影は、ドラマの世界観を崩してまでやる必要があるのかという葛藤も当初はありました。あの部分をカットしても、尺自体は足りていたから放送はできたんです。でも第6話は、明智、マリア、苺の三角関係を表現する重要な回だったので、あのシーンがないと成立しない。そこで、「朗読でもいいからやりたい」と会社にも中村さんにも小芝さんにも提案して。うまくいくか不安だったんですが、撮り終わったものを観たときはあまりにも素晴らしかったので、「やってよかった」と思いましたね。実は、あのシーンはテストなしの一発本番なんです。中村さんと小芝さんだからこそできたことですね。

ーー本日が最終話放送日となりますが、見どころは?

荻野:先ほど述べたように、明智、マリア、苺の三角関係がドラマのメインテーマでもあるので、その結末にはもちろん注目してほしいですし、マリアがこれまで以上の殺人計画を企てるので、サスペンス的な面白さもあります。とんでもないことが起こります(笑)。台本の段階から作っていて面白かったし、上がったものもすごく自信を持ってお届けできます。何より中村さんの演技ですね。観ていただけたら、「中村倫也ってすごい役者なんだ」と改めて実感させられるかと思います。これまで喜怒哀楽をあまり表に出してこなかった明智が感情をあらわにするシーンがあるのですが、撮影のときは、カットがかかった瞬間に思わず拍手してしまいました(笑)。楽しみにしていてください。あと、原作との違いも楽しんでいただければ嬉しいですね。最終話の放送が終わっても原作の連載は続きますので。

ーー最後に、視聴者へのメッセージを。

荻野:東村さんが「生きることは食べること」だとおっしゃっていて。本作において、殺人の動機は全て食にまつわることなんです。愛することも憎むこともあらゆることが、食べることとリンクしている。最終話で、改めて食べることの大事さとその意味を感じていただければ嬉しいです。 (取材・文=島田怜於)