『未満警察』、オリジナルとの違いがそこかしこに 中島健人×平野紫耀のキャラを活かした脚色
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ようやく放送がスタートした日本テレビ系列土曜ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』。Sexy Zoneの中島健人とKing & Princeの平野紫耀、ジャニーズ事務所の次世代を担うグループのメンバーである2人がダブル主演を務め、“警察未満”である警察学校の学生2人が難事件に巻き込まれていく様を描いたバディ・サスペンスだ。放送開始が延期されていたため、かれこれ3カ月近くにわたって第1話の予告映像ばかりを見てきただけに、まさに待ちに待った放送開始。ついに2人のグータッチが観られたわけだ。
裸足で交番に助けを求めてきた少女(鈴木梨央)の姿と、一家3人の感電死体が発見されるという衝撃的なオープニングシーンからはじまった6月27日放送の第1話。警察学校へ入校した本間快(中島健人)と一ノ瀬次郎(平野紫耀)が出会い、警察官になるための過酷な訓練を乗り越えながら絆を深めていくさまが描かれた。訓練の途中で捻挫をしてしまった快は、寮の部屋から見えたアクアショップにいた女性・楓(真木よう子)に目を奪われる。食事も忘れて次郎とともに彼女の様子を覗き見していると、彼女が男から暴行を受けているのを目撃。咄嗟に助けに向かった次郎だったが、そこで思いも寄らぬ事件へと巻き込まれることに。
本作のオリジナルは、今話題の韓国ドラマ『梨泰院クラス』のパク・ソジュンと、『ミセン』のカン・ハヌルがダブル主演を務めた2017年製作の韓国映画『ミッドナイト・ランナー』。警察学校に入学した主人公2人が、外出先で偶然にも誘拐事件の現場に遭遇。警察に通報するも他の事件で手一杯になって取り合ってもらえなかったため、習いたての知識とスキルを駆使して自分たちで捜査に乗り出し、やがて人身売買組織にたどり着くという快作である。そのオリジナルで描かれた事件は、どうやら次週の第2話で本格的にリメイクされるようで、今回の第1話では序盤のみがオリジナルの描写を踏襲していた。
食事のシーンで不平を漏らす次郎が快からソーセージをもらうくだりや、山道を走る訓練で怪我をした快を次郎が背負って走るくだりはオリジナルそのものだ。それでも神経質で真面目な快のキャラクター性に新たに“意識高い系”という要素が加えられており、次郎のほうも無軌道に突っ走る奔放なキャラクター性と、やたらと身体能力の高さが際立つあたり、演じている平野のパブリックイメージにぴたりと符合する。2人のキャラ立ちがかなり重視された脚色が施されていると見える。
逆にオリジナルと大きく異なる部分は時系列に大きな移行がないという点であろうか。オリジナルでは主人公2人が打ち解けるとすぐに2年後にジャンプするわけだが、本ドラマでは入学直後のまま。もっとも、オリジナルは2年経っても警察学校での教えに懐疑的で入学ホヤホヤ感がかなり残っていることに違和感があっただけに、これは正しい選択かもしれない。それに段階的にいくつものエピソードを重ねていく連続ドラマの利点を活かし、2人が徐々にスキルを身につけて成長していく様子を描くというねらいがあるのかもしれない。
それにしても第1話から高電圧の通電棒を持って襲いかかる真木よう子の姿や、黒沢清の『クリーピー 偽りの隣人』を彷彿とさせるダークな事件が展開。さらに快が怪我したことを利用して繰り広げられるヒッチコックの『裏窓』さながら窃視ミステリーの定説通りに運ぶストーリーなど、なかなか見応えたっぷりの作品であったと感じる。放送延期によって大幅にスケジュールが変更となったわけだが、できるだけ当初の予定通りの話数で展開してほしいと思いつつも、まだすべてが収束したわけではないので、まずはキャスト・スタッフ全員が安全に制作に臨めるようにと願うばかりだ。 (文=久保田和馬)