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「風をおこした男」、主演の金世佳「田漢さんから学んだのは誠実さ」

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ナタリー

「風をおこした男―田漢伝」合同取材会より。左から金世佳、田沁金。

10月に東京・世田谷パブリックシアターにて上演される「風をおこした男―田漢伝」の合同取材会が本日9月5日に東京・早稲田大学にて行われ、上海戯劇学院学長の黄昌勇(こうしょうゆう)、演出家の田沁金(でんしんきん)、主人公・田漢役を演じる金世佳(きんせいか)が登壇した。

本作は日中平和友好条約締結40周年記念公演として、上海戯劇学院と世田谷パブリックシアターにより上演されるもの。1916年から6年間日本に留学し、のちの中国文化に大きな功績を残した田漢の半生を描いた作品で、舞台には8台のデジタルハイビジョンカメラを配置し、リアルタイムで舞台上の映像や作品に関連する資料を映し出す。なお本作は2001年に中国・北京にて上演され、昨年17年に中国にて再演、日本では初の上演となる。

上演にあたり黄昌勇は「この作品は、昨年5月に上演されて以来、中国で多大な影響力を発揮している作品です。日中和友好条約締結40周年というタイミングで日本で上演されることはとてもうれしい」と上演の喜びを語る。

演出の田沁金は「今年は田漢さんの生誕120周年であり、日中和友好条約締結40周年であり、田漢さんが亡くなって50年という年でもあります。このたび中国国家話劇院と上海戯劇学院により17年前に私が手がけた作品が、上海戯劇学院の卒業生でもあり、中国の若い人たちから大変人気のある俳優さんの1人である金世佳さんを迎えて、田漢さんが留学していた日本で上演されることを光栄に思います」と挨拶。また田漢について「(彼は)日本に留学している際、島村抱月や松井須磨子さんの演劇を観て感銘を受けました。日本の演劇の美しさに心を奪われて、“東京の雨の夜に花が咲いています。演劇のためにこの生涯を捧げます”というような言葉を残している方です」と説明した。

「この作品で、主人公の田漢さんの役を演じられたことを光栄に思います」と語ったのは、日本に留学経験もある金世佳。「私も自分の人生や演技のこと、世界の見方についてなど田漢さんから学びましたし、上海や北京で上演された際には、多くの若い人がこの作品から感銘を受けました。俳優としては、舞台の上で演じると共にカメラの前で演じることにも専念する必要があり、自分にとっても大きな経験となりました。このような形式の作品は、日本の舞台芸術にとっても新しいものではないでしょうか」と続けた。

作品の構造について田沁金は「田漢さんの生涯を描きつつ、彼が作った作品の中から5作品(「日本」「郷愁」「サロメ」「一致団結」「関漢卿」)を劇中劇として登場させています」と話し、「田漢さんの演劇に対する理想は東京から始まると言っても良いですし、この作品ではそういった田漢さんが演劇を観ているときの心情、考え方をメインで表しています」と述べる。

また舞台上にカメラが持ち込まれることについて田沁金は「この作品は舞台を観つつ、同時に映画を観るような体験ができるので、“半映画化”された演劇だと言えます」と説明。さらに「観客は俳優さんたちの表情をより鮮明に見ることができるので、金さんの映画ファン、舞台ファンは二重の喜びを体験できるのではないでしょうか」と笑顔を見せ、会見場を和ませる。

記者から田漢の人物像について問われた金世佳は「私は田漢さんを演じるにあたり、いろいろなことを学び感じましたが、中でも影響を受けたのは『誠実さ』ということでしょうか。田漢さんは『誠実さがすべての悪を消せる』という言葉を残しています。今の中国はとても発展が早いのですが、人間としての道理やモラルは時代が変わっても変わりません。この作品を通してそんな田漢さんの精神力が感じられますし、そのことが、この作品が中国の若い人の支持を得ている理由でもあるのではないでしょうか。今の中国にはまさに、この精神性が必要だと思います」と力強く語った。

公演は10月6・7日、世田谷パブリックシアターにて。日本語字幕付きの中国語上演となっている。

日中平和友好条約締結40周年記念公演「風をおこした男―田漢伝」

2018年10月6日(土)・7日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター

作・演出:田沁金
出演:金世佳 ほか

※田沁金の「金」の字は「金」の下に「金」2つが正式表記。