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志尊淳、『探偵・由利麟太郎』で果たす役割 吉川晃司を視聴者に近づける橋渡し役に

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リアルサウンド

 5週連続特別ドラマ『探偵・由利麟太郎』(カンテレ・フジテレビ系)第3話は「殺しのピンヒール」。

 三津木(志尊淳)が殺人の容疑で逮捕されてしまい、その容疑を晴らすべく、大学時代の旧友である由利(吉川晃司)と京都府警の等々力(田辺誠一)が、久しぶりに緊急タッグを組むというストーリー。第1話や第2話で見られた、吉川と志尊の“先生と助手”という軽快なやりとりがお預けとなった第3話、ここでは志尊淳の魅力と本作での彼の立ち位置を追っていきたい。

参考:『探偵・由利麟太郎』吉川晃司の渋味を堪能 今後は秘められた過去も明らかに?

 志尊淳が演じるのは、おしゃべりで素直、由利を慕うミステリー作家志望の青年だ。志尊淳と言えば、若手俳優の登竜門でもある戦隊モノ出身で『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)で主演デビュー。『女子的生活』『半分、青い。』とNHKのドラマでは性的マイノリティーやトランスジェンダーの役柄を演じ、その美しさと漂う気品の高さ、爽やかさにファン層を拡大。『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』で魅せた、田中圭演じる春田にほのかな恋心を抱く無邪気な後輩社員役もハマり役だった。

 志尊の場合、ピュアさや一生懸命さが全面に滲み出るため、いやらしさが全くない。その余りある純粋さに、これまでその役が感じてきたであろう様々な葛藤や人に言えないような苦悩、複雑な想いが逆に浮き彫りにされ、観る者に訴えかけてくるものがある。「底なしの笑顔」はきっと「想像を絶する絶望」と隣り合わせだと思うが、志尊が演じる複雑な役どころにはそんな「心の中で泣きながら笑う」という類の表裏一体さが感じられる。

 また、ドラマ『きみはペット』(フジテレビ系)では、バリキャリ女性と同棲するペット的存在・合田武志(通称:モモ)を演じた。「子犬系男子」とも呼ばれたその存在は、愛くるしくて中性的な魅力を持つ彼だからこそ、実写版でも嘘臭さがなく実現できた人物だろう。

 志尊が纏う独特の空気感から、やはり「強い女性」像の近くで束の間の癒しとなったり、1番の理解者的存在を演じることが多い。『Heaven?~ご苦楽レストラン~』(TBS系)でも、石原さとみ演じる女性オーナーの無茶振りにあくせくしながらも、皆のコミュニケーション間でクッションの役割を果たすようなムードメーカーで、どこか憎めないスタッフ役だった。

 彼のいかにも「化粧映えしそうな顔面」は、同じくコミック原作ものでも少女漫画だけでなく、SFチックなものから学園モノまで幅広くハマる。映画『帝一の國』では主人公の右腕的存在である光明役を演じ、ビジュアル系に近しい見た目も全く違和感がなかった。つまり、現実離れした「振り切った役どころ」にも上手く溶け込めてしまえる。

 もともと華奢で線も細めな彼が、『女子的生活』で魅せたイマドキ女子の姿は、メイク、ヘアスタイル、ファッションから、立ち居振る舞い、嗜好性に至るまでを完全に取り込んで自分のものにしていた。

 そんな志尊が本作で挑んだ役どころは、これまでとは少し似て非なるものかもしれない。強烈なキャラクターを持つ由利という主人公の「静」「陰」の部分を際立たせるために配置されたかのような、「動」で「陽」な一面が強調された、ある種、印象通りの青年。これまでの役どころのように、「一見無邪気に見えても実は心に深い傷を負っている」などといった逆説的な要素を持ち合わせない、ギャップのない存在だ。ただ、本作では昭和の物語設定を現代に持ち込んだ異色さや、常人離れした由利という存在を我々視聴者に近づけてくれるような、橋渡しの役割を見事果たしているように見受けられる。「過去」と「現在」、「天才」と「常人」、「日常」と事件が起きるような「非日常」、そんな二項対立を内包して魅せてくれている志尊淳がいてこそ、この物語は成立していると言える。次回はまたそんな2人のタッグ姿を拝めるのが楽しみだ。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。