浜辺美波、2020年は映画にドラマに主演ラッシュ 「東宝シンデレラ」出身女優の流れを継承?
映画
ニュース
2020年、女優・浜辺美波に作品への出演ラッシュが訪れている。2月から放送された土曜ナイトドラマ『アリバイ崩し承ります』(テレビ朝日系)で、事件容疑者の“アリバイを崩し”を得意とする主人公・美谷時乃を演じプライム帯での連ドラ初主演を務めると、ドラマ『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)でも横浜流星とW主演、映画も『思い、思われ、ふり、ふられ』、『約束のネバーランド』と主演作が続いている。
【写真】映画で共演を果たす浜辺美波と福本莉子の「東宝シンデレラ」
浜辺は2011年に開催された第7回「東宝シンデレラオーディション」で、ニュージェネレーション賞を受賞し芸能界入り。同年に、ショートムービー『アリと恋文』で女優デビューを果たすと、2016年の『咲-Saki-』でテレビドラマ(MBS/TBS)、映画主演を務める。その後も、『君の膵臓をたべたい』(2017年)、『センセイ君主』(2018年)、『賭ケグルイ』(2019年)などキャラクターがガラリと違う作品で主演を見事に全うし、10代にして“演技ができる女優”として高い評価を受けた。
浜辺の魅力の一つは、“清々しさ”にある。清廉で爽やかというビジュアルの“清々しさ”はもちろんだが、芝居へのアプローチがとにかくためらいがなく思い切りがよいのだ。
『君の膵臓をたべたい』では、難病におかされた少女ながらも、秘密を知ってしまった北村匠海演じる“僕”を翻弄する小悪魔的な可愛らしさを見せたかと思えば、『センセイ君主』では、パロディシーン満載で、金八先生の物まねや、原作コミックに寄せたかなりの際どい顔芸を惜しげもなく披露している。浜辺自身は大スクリーンに変顔が映し出されることに対しても「どんなに不細工に映っても全然気にならない」とあっけらかんと話すなど、思い切りが良いのだ。しかも『センセイ君主』は『君の膵臓をたべたい』と同じ月川翔監督作品である。同一監督で、こうまで違ったキャラクターを演じてもらうというのも、信頼がなければできないことだろう。
『賭ケグルイ』でも、清楚な制服姿で丁寧な言葉づかいで人と接しているが、いざ賭け事になると「賭け狂いましょう」と目を見開いて豹変する主人公・蛇喰夢子を好演。メガホンを取った英勉監督は現場で俳優たちのアドリブを容認したというが、浜辺も“なにをやっても大丈夫”という撮影のなかで、年上の俳優たちに交じって怪演を楽しんでいたというから、度胸も据わっている。
東宝シンデレラオーディションと言えば、1984年に開催された第1回の沢口靖子をはじめ、野波麻帆(第4回)、長澤まさみ(第5回)、上白石萌歌(第7回)、福本莉子(第8回)というメンバーがグランプリを受賞している。グランプリ以外にも、審査員特別賞として、水野真紀(第2回)、上白石萌音・山崎紘菜(第7回)などがいる。
沢口と言えば『科捜研の女』(テレビ朝日系)という大ヒットシリーズが20年にも渡り続いており、信念を貫く法医学研究員・榊マリコのイメージが強いが、しっとりとした役からコミカルな役まで幅広いキャラクターを演じてきた大ベテランだ。長澤も、デビュー当時は王道ヒロイン的なキャラクターが多かったが、近年は『モテキ』(2011年)でのエロ可愛い役から、ミュージカル『キャバレー』(2017年)での妖艶な役、『コンフィデンスマンJP』シリーズでのぶっ飛んだコミカルな役、そして『MOTHER マザー』(2020年)の陰鬱な役などふり幅の大きな演技を見せている。
上白石萌歌も、ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)で印象的な演技を見せると、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)と話題作に出演。さらにドラマ『ファーストラヴ』(NHK総合)では、父親殺しの容疑者の大学生という難役を見事にこなし演技力の高さを見せつけた。やや影のある役が多い萌歌だが、舞台『続・時をかける少女』では、コメディエンヌとしての素質も垣間見せた。
萌歌の姉・萌音も、健気で一生懸命というパブリックイメージに近い役を演じつつ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)では、コミカルな演技も加わり、多くの視聴者の共感性を生んだ。
前述したように、浜辺は10代であるにも関わらず、すでに役柄のレンジは広く「東宝シンデレラ」出身の人気女優たちの流れを継承しているように感じられる。2018年3月に日比谷シャンテ前で新・ゴジラ像除幕式が行われたが、その際の式典には、島谷能成東宝社長、チーフゴジラオフィサーの太田圭二氏、沢口と共に浜辺も出席していた。沢口と言えば1984年公開の映画『ゴジラ』に出演していたが、『ゴジラ』に縁のない浜辺が出席したことを見ても、東宝の期待が伺えた。
作り手は、当たり役に似たキャラクターをオファーするという安全作もあるが、芝居ができると思う俳優には「新たな一面を出したい」と意欲的な役柄に挑戦させようと思う人も多い。その意味で、レンジの広い役を思い切りよく自身の手の内に入れる浜辺には、今後もさまざまな役柄が舞い込むだろう。
(磯部正和)