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ぴあ 総合TOP > 嵐の“Rebornシリーズ”に込められたパーソナルなメッセージ BloodPop®︎による「Face Down」リミックスを解説

嵐の“Rebornシリーズ”に込められたパーソナルなメッセージ BloodPop®︎による「Face Down」リミックスを解説

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 嵐がこれまでにリリースしてきた楽曲をリプロダクションする試み“Rebornシリーズ”。その第5弾となる楽曲、「Face Down : Reborn」が6月26日に配信開始された。2012年にリリースされたシングル曲「Face Down」を原曲とする本楽曲だが、今回のリプロダクションでは海外の著名音楽プロデューサーであるBloodPop®︎を起用しており、そのコラボレーション自体も大きな話題を呼んでいる。取り組みとしては、同じく海外の著名ダンスミュージックプロデューサーを招いた「Turning Up (R3HAB Remix)」に近い試みと言えるだろう。

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 BloodPop®︎が手掛けた音楽作品としては、ジャスティン・ビーバー「Sorry」(2015年)やレディー・ガガ「Perfect Illusion」(2016年)などが挙げられる。特にガガからは全幅の信頼を寄せられており、先日リリースされた最新作『Chromatica』ではエグゼクティブプロデューサーとして参加。アリアナ・グランデとのコラボレーションも話題となった「Rain On Me」もBloodPop®︎が手掛けた楽曲だ。今やBloodPop®︎は現代のポップシーンのトレンドを決定付ける存在と言っても過言では無いだろう。

 一方で、原曲となる嵐の「Face Down」は、4つ打ちの重いビートと力強いシンセベースが牽引するダンサブルなトラックや特徴的なコーラスワーク、機械がかったボーカルエフェクトなど、2012年当時の海外ポップシーンの主流とも言えるエレクトロサウンドが特徴的な楽曲である。随所にアクセントとして仕掛けられた英語詞、櫻井翔のラップパートにおける大胆なビートチェンジなどからは、当時流行していた少女時代や2NE1などのK-POPとの同時代性も感じさせる。今聴いても実に中毒性の高い楽曲だ。

 今回、“Rebornシリーズ”として「Face Down」を選んだ背景には、改めて海外ポップシーンの流れを汲んだ楽曲作成にチャレンジするという意図があるのかもしれない。だからこそ、今のポップシーンの中心人物とも言えるBloodPop®︎とのコラボレーションが実現したのだろう。結果として、「Face Down:Reborn」は過去の“Rebornシリーズ”以上に大幅に生まれ変わった一曲となった。完全に2020年のダンスミュージックシーンを下地にした、最新型ポップミュージックへとモデルチェンジしているのである。

 近年のダンスミュージックシーンでは、MeduzaやSkrillexといったプロデューサーが牽引する、スタイリッシュなハウスミュージックが強い支持を集めている。本楽曲も、その流れに呼応するようにメインパートでハウスビートを取り入れ、丁寧に配置されたシンセサイザーのフレーズや躍動するベースラインがスタイリッシュに空間を盛り上げる。しかし、あくまで本楽曲では原曲のメロディの良さに焦点が当てられていて、トラックがメロディの邪魔をせず、嵐の歌声がしっかりと伝わるようトラック全体が丁寧に構築されており、聴いていて感情を強く刺激される。これはポップミュージックとダンスミュージックの融合に取り組んできた、BloodPop®︎ならではの手腕と言えるだろう。

 一方で、少し残念に思う部分としては、前述した櫻井翔のラップパートがカットされている点が挙げられる。とはいえ、ラップの歌詞は楽曲のビートに合わせて制作されるため、今回のように大幅にトラック全体が生まれ変わった場合、そのまま入れるだけでは原曲のラップの良さが失われてしまう。そのため、「Turning Up(R3HAB Remix)」の際と同様、原曲の良さを残すために、敢えてパート自体をカットするという判断に至ったのであろう。

 “Rebornシリーズ”では、原曲の歌詞の一部が英語詞に変更され、しかもそれがただの翻訳ではなく、嵐からファンへの新たなメッセージとして読み取れるという特徴がある。原曲の「Face Down」ではタイアップ先となるドラマ側の世界観を踏襲し、鍵のかかった部屋で孤独に苦しみ、謎の人物に翻弄されていくというミステリアスな世界観を描いている。だが今回の「Face Down:Reborn」では、歌詞全体が大幅に書き換えられており、原曲のミステリアスな空気が薄れ、徹底して孤独に苦しんでいる人物に嵐が手を差し伸べる、光を照らそうとする様子が描かれているのである。これは、迫る別れの日を寂しく想うファンへの、嵐からのメッセージなのではないだろうか。

 実は、BloodPop®︎はそのような寂しさや孤独といった感情をポップミュージックに落とし込む手腕についても定評があり、前述した「Sorry」や「Rain On Me」といった大ヒット曲も、トラック自体はダンスミュージックを下地としているものの、歌声が訴えるメッセージは実にパーソナルなものとなっている。BloodPop®︎の作る音楽が求められる背景には、近年増加の一途を辿るメンタルヘルスの問題によって、そのようなパーソナルな内容を求める人々が増えていることも挙げられるかもしれない。実際、本楽曲のリリースに合わせて公開されたリリックビデオには、海外からのメッセージが数多く寄せられていることが確認出来る。その中には「この楽曲に込められたメッセージに救われている」、「辛い日々だけど、少し明るい気持ちになることが出来た」といったコメントもある。

 世界中にJ-POPを放とうとする嵐の活動の中心の一つである“Rebornシリーズ”は今後も新たなアプローチを取り入れながら、ファンを驚かせ、そして楽しませてくれるであろう。長年応援し続けてきた大切な人々へのメッセージを忍ばせながら。(ノイ村)