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『The Last of Us』のように今後はドラマ化が増加? ハリウッドにおけるゲーム実写化最新事情

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リアルサウンド

 日本で作られる映画やアニメ、シリーズなど映像コンテンツの多くが、マンガや小説などを基にした、いわゆる原作ものであることは、ここ何年も続く流れであるが、ハリウッドでもそれは同様で、例えば映画の興行収入の上位にランクインする作品の大部分が原作もの、もしくはフランチャイズものである。

参考:『ONE PIECE』『NARUTO』『約ネバ』など 日本の漫画やアニメがハリウッドで実写化される背景

 特にアニメや漫画、グラフィックノベルにおいては、ハリウッド実写化との親和性の高さを示す実績がすでにあるが、それに加えて同じくらい高い親和性をもっているのがゲームである。このコラムでは、ゲームのハリウッド実写映画・シリーズ化について、最新事情を書きたいと思う。

 北米の映画市場を見ると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で長期間の映画館が閉鎖が続く2020年は例外として、この5年ほどは年間の全体興行収入が1100億ドル(約1兆円)前後で横ばいになっていた。一方で、映画館の外では配信による観客の劇場離れが脅威になっており、この1100億ドルのうち約4分の3を占めるディズニーやワーナー・ブラザース、パラマウントなどメジャースタジオ5社にとっては、アメリカ国外市場の持つ重要性が相対的に大きくなっている。こういった状況を鑑みても、世界規模で成長を続けるゲーム産業は、ハリウッドにとって大変魅力的であり、そことうまくつながることは大きなビジネスチャンスとなる。

 現在のハリウッドのグローバル戦略においては、中国マネーのみが語られがちであるが、日本の映画市場も依然として米中に次いで世界3位の規模であるし、ゲームマーケットでも日本は同じく3位の規模を持っている。市場規模だけでなく、人気IPを生み出し続ける日本の存在は、ハリウッドにとって決して小さくはない。

 ゲームの実写化は、漫画やアニメのそれと比べ、原作の世界観を生かしつつ、映画やシリーズとして成立しうるストーリーの構築が課題となる。これを読んでいる多くの方もご存知のとおり、かつては日本のIPホルダー側から権利だけを手に入れ、製作者側が好き勝手に作ったとしか言いようのない海外作品もあった。だが最近は観客側が様々な要素において「オーセンティックであること」を重要視するようになり、また日本側もハリウッドとの十分なパイプラインができたことで、原作の世界観が比較的忠実に再現されるようになっていると言える。

 例えば、昨年公開の『名探偵ピカチュウ』や、今年6月26日に公開となったばかりの『ソニック・ザ・ムービー』は、それぞれワーナー・ブラザースとパラマウント映画の製作・配給(『名探偵ピカチュウ』の日本配給は東宝)だったが、共に日本のIPホルダー側も製作チームに入った。『ソニック』はコロナ禍で全米の映画館閉鎖の影響を受けたが、2作とも公開5週目まで北米興行収入で10位以内をキープするなど、概ね成功だったと言える。

 近年のゲーム実写化作品に特徴的なのは、これらのゲームの実写化タイトルが、全世界のオーディエンスをターゲットとしたブロックバスターとして扱われるようになったことである。ブロックバスターとは、大規模な製作予算と宣伝費が投じられ、大ヒットが期待される大作をさすが、そういった扱いの裏にあるのは、作品単体としての成功よりも、やはり新たな「シネマティック・ユニバース」構築やフランチャイズ化による継続的なヒットである。

 『アベンジャーズ』『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』などのシリーズに代表されるように、多くのスタジオが「シネマティック・ユニバース」構築に戦略の舵を切ってきた中、決まったストーリーに縛られることなく、よく作り込まれた世界観の中で、キャラクターを比較的自由に動かすことのできるゲームは、このユニバースの構築に向いている。前述の『名探偵ピカチュウ』は、その公開に先立つ2019年1月25日、『ソニック』も2020年5月29日に、それぞれ続編に関する報道がすでに出されている。今度はゲーム同士の垣根を超えた「シネマティック・ユニバース」的な作品や、一つのタイトルでも3部作の前提で作られる作品が増えるだろう。

 現在ハリウッドでは『名探偵ピカチュウ』『ソニック』以外にも、ゲームの実写化企画が数多く進んでいる。まずは9月4日の公開が決まっている『モンスターハンター』がある。主演はミラ・ジョヴォヴィッチだが、彼女は『バイオハザード』シリーズの出演によって、アクションゲーム系の実写化の主役というイメージが定着した感がある。またアメリカのゲームでは、『ソウ』シリーズや『アクアマン』で知られるジェームズ・ワンがプロデューサーを務めるリブート版『モータルコンバット』が、2021年1月の全米公開(日本公開未定)を待っている。

 企画・制作段階にあるタイトルとしては、まず長期にわたって人気を集めるゲームの実写化『ロックマン』に言及したい。本作は『フォードvsフェラーリ』や『グレイテスト・ショーマン』などを手がけたベテランプロデューサー、ピーター・チャーニンと『HEROES/ヒーローズ』で知られるマシ・オカが参加している。

 また、アドベンチャーゲーム『アンチャーテッド』の映画化企画が、やはりコロンビア・ピクチャーズの下、トム・ホランド主演で進んでいるし、世界的人気を誇るゲーム『マインクラフト』の実写映画化企画も忘れてはならない。こちらはワーナー・ブラザースから2022年公開が予定されており、近年活躍が光る俳優スティーヴ・カレルの出演が決まっている。他にも『グランツーリスモ』『人喰いの大鷲トリコ』の実写化企画が存在しているようであるが、目白押しの状態だ。

 実写ドラマ化では『The Last of Us』が注目に値する。ちょうどこの6月19日にプレイステーション用新作ソフト『The Last of Us Part II』が発売された人気ゲームであるが、2021年放送予定の実写化を手がけるのは、2019年に話題になったHBOのドラマ『チェルノブイリ』の監督・脚本コンビだ。『チェルノブイリ』だけでなく『ゲーム・オブ・スローンズ』などで圧倒的な質の高さの作品を出してきたHBOだけに、今回のドラマ化の期待も高まる。

 ところで、『名探偵ピカチュウ』のピカチュウ役に、ハリウッドのトップ俳優の一人であるライアン・レイノルズがキャストされた際、ポケモンがすでにアメリカでも長く親しまれてきたことを考慮しても、ハリウッドでの日本のゲームの立ち位置が随分変わったと感じた。それだけでなく、前述のようにトム・ホランドやスティーヴ・カレルといった人気俳優がキャストされているのを見ると、メジャースタジオでのゲーム実写化にかける本気度を垣間見ることができる。

 一方で、普段はついスクリーン上に見える俳優に目が行きがちであるが、こういった作品を手がけるプロデューサーやスタジオを見てみると、特にゲームの実写化作品を扱う傾向が見えてきて面白い。

 ハリウッドのスタジオは、常に各ブランドやビジネス戦略を考えて扱う作品を決めており、映画の場合は、ゲーム化作品を多めに扱うスタジオと、そうでないスタジオは比較的はっきりと分かれている。特に日本発で世界的にヒットしたゲームも多く、日本のIPに好意的なスタジオかそうでないか、という部分とかぶることも多い。例えば、ソニー傘下にあるコロンビア・ピクチャーズは、同じくソニーのゲーム機プレイステーションの関係もあり、先に紹介した『アンチャーテッド』、映画版『バイオハザード』や『グランツーリスモ』など、多数の映画化を手がける。

 また、ワーナーは『AKIRA』『進撃の巨人』などの日本IP企画を開発中であるが、同時に『ハリー・ポッター』シリーズやDCコミックスなどのユニバース戦略に長けており、ゲーム実写化にも積極的なスタジオの一つである。また、傘下のニュー・ライン・シネマはスリラーやホラー系作品など、多くのゲームの世界観と親和性が高いジャンルを得意にしていることから、ここで扱われるゲーム実写化も多い。

 パラマウント映画は『ゴースト・イン・ザ・シェル』や『ソニック』をリリースするなど、日本のIPを上記2スタジオと同じくらい多く扱っている。現在パラマウントは、ワーナーやディズニーのような有力なユニバースを持たないが、同様の戦略に倣うのであれば、有力なゲーム作品でのユニバースを展開することも可能かもしれない。

 一方、当然ながらゲームの実写化にあまり積極的でないスタジオもある。その一つはディズニーだろう。ディスニーはその確固としたブランディングがすでに存在しており、あえて外部から積極的にゲームの実写化を行う必要はないと思われる。一方で『ロックマン』は、2019年にディズニーに買収された20世紀フォックスで進んでいた企画であり、今は「20世紀スタジオ」ブランドで製作が進んでいる。従来の「ディズニー」ブランドとはまた違うこの枠組みであれば、今後もゲーム実写化企画への参戦があるかもしれない。

 ユニバーサルもまた、ゲーム実写化とはやや距離を置いているスタジオの一つである。ユニバーサルはメジャースタジオでありながら、社会性の高い作品や「フォーカス・フィーチャーズ」ブランドでアート系作品を出してきていた。ユニバーサルが作品の配給を行うアニメーションスタジオ、イルミネーションで『スーパーマリオ』長編映画企画が進行中であるが、こちらは実写ではない。

 上記のようにゲームのハリウッド実写化と最新事情をまとめたが、ゲーム実写化の流れは、今後もしばらく続くだろう。現在のところ映画化が多い印象であるが、長時間プレイをするゲームの特性を考えると、じっくりとストーリーを掘り下げることのできるドラマの方が、ゲームの強みを活かせるというクリエイティブ上の利点がある。このため今後はドラマ化の数も増えていくだろう。成長を続けるゲーム市場を見てもビジネスの戦略的にも大きな可能性をもつゲームの実写化であるが、今後の動きを注意深く追っていきたい。

【参照】
・https://deadline.com/2019/12/mortal-kombat-release-date-james-wan-warner-bros-1202618026/
・https://deadline.com/2019/01/resident-evil-tv-series-in-works-netflix-1202541277/
・https://www.boxofficemojo.com/
・https://variety.com/2019/film/news/detective-pikachu-sequel-1203118582/
・https://variety.com/2020/film/news/sonic-the-hedgehog-sequel-1234619356/
・https://www.motionpictures.org/wp-content/uploads/2020/03/MPA-THEME-2019.pdf

(田近昌也)