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『かぐや様は告らせたい』白銀会長の「弱さ」は美点にもなるーー恋愛頭脳戦は次のステージへ

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リアルサウンド

 両片想いの二人による「いかにして相手から告白させるか?」の頭脳戦を描いたラブコメディ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』。生徒会副会長の四宮かぐやとのラブバトルに火花を散らすのは、秀知院学園の生徒会長・白銀御行だ。

参考:『かぐや様は告らせたい』四宮かぐやはなぜ愛おしい? 超負けず嫌いなヒロインの本心

 天才と称され、生徒会長として自信満々に振る舞う白銀だが、その姿を形作ったのは、白銀が徹底的に隠す自分自身の「弱さ」だった。

 四宮かぐやの対の存在として描かれる白銀だが、二人のステータスは対照的だ。

 四宮かぐやは四宮財閥の令嬢であり、どんなことでも難なくこなす天才。一方の白銀は一般家庭出身で、多才な四宮と違って勉学一本で結果を出した人物。学園模試は不動の一位で、全国でもトップレベルの成績だが、それは1日10時間の勉強を続けている賜物である。

 加えて、白銀には弱点も多い。失神するほど虫が苦手、カナヅチで風呂で溺れたこともある。運動センスも壊滅的になく、藤原書記に「なまこの内臓」と言われるほど音痴。表向きは堂々とした会長の姿を見せながら、影での猛特訓で弱点を必死に補っている。万能型で正真正銘の天才である四宮に対して、白銀は「努力の人」なのだ。

 四宮相手では裏の裏の裏を読むような知能戦を繰り広げているけれど、基本的に白銀御行はとても善良で親切だ。困っている人には分け隔てなく手を差し伸べる人物でもあり、その優しさは随所で描かれている。

 それは例えば、石上優。石上はクラスメイトにストーカーと勘違いされて非難され、引きこもりになっていた。それを知った白銀は、学年中から白い目で見られている石上のもとを訪れ、会計として生徒会に迎え入れる。

 例えば、伊井野ミコ。ミコは二期目の生徒会長選挙に出馬した白銀の対立候補となる。けれど、真面目すぎて融通が利かないミコは周囲から鬱陶しがられており、候補者演説でうまく喋れない姿をここぞとばかりに笑いものにされてしまう。そんなミコに、選挙のライバルである白銀は「言ってみ」と語りかけ、緊張をほぐして彼女の言葉を引き出してみせる。

 損得に囚われないその優しさは、四宮の心を掴んだ白銀の美点だ。

 そんな白銀が、明らかに四宮のことを好きにもかかわらず頑なに自分から告白しないのには、実は意地だけではない理由がある。

“俺には四宮程の才覚は無く、器用さもなく、家柄など到底比べ物にならない”

 なんでも持っていてなんでもできる、万能の四宮かぐや。そんな彼女との立場の違いを誰よりも強く感じているのは、実は白銀自身だ。だからこそ白銀は勉強を極め、その1点のみにおいては四宮に勝ち続ける。それでようやく対等だと考えているから、その上自分から四宮に乞うような告白をすることができないのだ。

 それでも想いは募っていく。言葉で告白できない白銀は、学園祭の日、代わりにとっておきの景色を用意する。生徒会長権限をフルに使い、空に無数のハートの風船を空に飛ばすのだ。

“わかるか四宮 これが俺の気持ちだ”

 安定しているように見えて、白銀の自己肯定感は低い。彼は幼稚園受験に失敗し、母に失望されたことが強いトラウマになっている。「素の自分では他人に受け入れてもらえない」と思い込んでいる白銀は、ひたすらに時間をかけて努力することを己に課し、外には完璧な姿だけを見せようとする。

“本当の自分なんて 一生見せるものかよ”

 用意周到に準備されたハートの風船での想いの告白は、そんな白銀の自信のなさの表れでもあった。その想いを四宮は受け入れ、限りなく両想いになった二人。だが、四宮はそこからさらに踏み込んで、白銀が隠した「弱さ」の半面も受け入れようとする。

“あの風船はとても素敵でロマンティックだけれども、でもそうじゃなくても良い”

“何も隠すことなんて無い それが 私が会長にあげられるロマンティックです”

 四宮の言葉を受けて白銀はやっと、完璧な部分だけを見せるのではなく、弱さを見せあい、支え合うような関係の築き方を知る。

 意地の張り合いから始まった「恋愛頭脳戦」。最後の意地を四宮の素直さにほどかれて、白銀の「バトル」ではない恋がようやく始まっていく。(満島エリオ)