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『探偵・由利麟太郎』鈴木一真が2年ぶりドラマで“訳あり感” ゲストたちが横溝ワールドを彩る

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 5週連続特別ドラマ『探偵・由利麟太郎』(カンテレ・フジテレビ系)の第4話は、「マーダー・バタフライ前編」。由利シリーズでも最も人気のある「蝶々殺人事件」が原作で、オペラ楽団内で殺人事件が起こる。楽団員を豪華ゲスト出演者勢揃いで演じ、冒頭からとても華やかである。舞台となった大阪市中央公会堂は国の重要文化財でもあり、物語により重厚感を与えている。

参考:『探偵・由利麟太郎』でも存在感 映画やドラマ、そして寄付まで大活躍する志尊淳の軽やかな個性

 序盤にオペラ界のスター女優・原さくら(高岡早紀)がコントラバスケースにバラの花びらと一緒に詰められた遺体となって見つかる。高岡早紀がコメントしていた通り、あまりに「キレイでドラマティックな遺体」だ。どうやらこの楽団内では、さくらを取り巻く濃厚で複雑な人間関係が渦巻いているらしい。ゲスト出演者はほぼ全員疑わしい「怪しい人ばかり」だが、注目すべき配役を見てみよう。

 まず、弟子で若手歌手の相良千恵子を演じる吉谷彩子。現在放送中の『ハケンの品格』(日本テレビ系)で中堅どころの派遣社員・福岡亜紀を演じている。亜紀は、大前春子(篠原涼子)に圧倒されながら、常に周囲の正社員の顔色ばかりを窺う控え目な役どころ。本作でも、高岡演じるさくらからの無茶振りに応えたばっかりに、殺人の容疑をかけられそうになり、ここでも同じく損な役回りだ。しかし、本作での彼女は、圧倒的スターの近くに二番手として存在する自分の運命を諦めつつも受け入れ、スターの孤独をも理解しどこか達観視しているような節がある。それが彼女の秘めたる強さとともに危うさを醸し出し、時として薄気味悪さと同時に奥行きさえも感じさせる。吉谷の演技の新たなる側面を目の当たりにした気がする。

 マネージャーの土屋恭蔵に扮する鈴木一真は、現在ロサンゼルスを拠点に国際的に活躍しており、テレビドラマに出演するのは本作が約2年ぶりとなる。『ライアーゲーム』(フジテレビ系)でもラスボス、白髪姿で浮世離れしたキャラクターが印象的だった横谷役を演じて話題を呼んだ。本作でも髪色こそノーマルだが、やはり何かしら狂気性をはらむさくらへの信仰心、崇拝ぶりを覗かせ“訳あり感”が滲み出ている。彼の凄いところは、まともに振る舞えば振る舞うほど、紳士的であろうとすればするほど、それが逆説的に作用し「裏がありそう」に見えるところである。日本人離れした顔のつくりと、微笑み、また生活感を一切感じさせない「無機質さ」がそうさせるのか。ちなみに、鈴木一真は現在51歳で、京都府警の等々力警部を演じる田辺誠一とはメンズノンノのモデル時代から30年くらいの付き合いになる同士らしい。あまりに年齢不詳すぎて驚く。

 なお、本作内で田辺誠一との2ショットを見せたのは、大阪府警の浅原警部を演じた板尾創路だ。これまで京都を舞台に繰り広げられてきた本作だが、板尾の大阪弁が一気に今回の事件現場を大阪に固定してくれる。

 土屋の助手・雨宮順平を演じた水沢林太郎は実年齢17歳ながら、社会人役に初挑戦。台詞も多くはない中でも、しくじりがちな新人を見事に体現できていた。本人曰く、「社会人の心得」のような本を読んで、イケていない社会人を真似ようとネクタイの長さを長めにしてみたりと、形から入ることにしたそうだ。

 それぞれの登場人物が何かに苦悩し葛藤している姿に、本作で何の台詞も発せずして遺体姿になった高岡早紀扮するさくらが、いかに魅惑的で危険な色香を振りまいていたのかを印象づけ、さらに視聴者の想像を掻き立てることに見事成功している。由利(吉川晃司)は既に犯人の見当はついているようだが、次週が彼の名推理を見られる最終話となる。皆を虜にし、狂わせていくさくらの秘密も解き明かされそうである。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。