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松村龍之介×北園涼の“美しすぎる”競演 独自の世界を描く『BLOOD-CLUB DOLLS 2』の華やかさ

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 刀に和装、般若の面をつけた青年が舞のように美しい殺陣を披露する姿に思わず息を飲む。独自の世界を描く作品『BLOOD-CLUB DOLLS 2』が7月11日に公開される。本作は、Production I.GとCLAMPが共同で製作したアニメ『BLOOD-C』および、それらを総称する『BLOOD』シリーズの世界を踏襲した実写映画である。『BLOOD-CLUB DOLLS 1』(2018年)の続編となる『BLOOD-CLUB DOLLS 2』は、前作に続き奥秀太郎が監督を務め、脚本に藤咲淳一、主演を松村龍之介が演じる。

参考:場面写真はこちらから

 本作は、蒼炎(松村龍之介)と藍刃(北園涼)、有栖川みちる(黒崎真音)を取り巻く物語を展開しつつ、同シリーズに共通する更衣小夜(宮原華音)、七原文人(南圭介)らが登場。『BLOOD-C』シリーズならではの設定も引き継がれ、『BLOOD-CLUB DOLLS 1』と地続きの世界が描かれた。和装や刀を使った演出でありながら舞台を現代に置く本作は、アニメーション原作の強みを徹底的に活かし、炎や自然を用いたファンタジックな空間が持ち味。シリーズのファンにとっても、初めて『BLOOD-CLUB DOLLS』シリーズを鑑賞する観客にとっても楽しめる作品となっているだろう。

 本作の特徴的な演出は、シーンとシーンをつなぐ詳細が省かれている点である。物語冒頭では小夜が銀六(郷本直也)の元を訪れるシーンの直後に、なんの前触れもなく和室に蒼炎、藍刃らが集まるシーンへと転換する。蒼炎らは何か同じ目的を持って集まっているようではあるものの、明確にはされない。そして藍刃が般若の面をかぶると、刀を使った戦いの場面へと飛ぶ。小夜の目が赤く光っていることの意味や、蒼炎らが集う理由、藍刃が刀で人々を切る理由を描かないことに加え、冒頭から印象的なシーンが続くことでインパクトを与える。和室に集う蒼炎や藍刃が部屋を出入りする様子もないままシーンが切り替わることで、“何かが起こっている”という不穏な様子が際立つ。さらに、これらの短いシークエンスには、それぞれ本作を象徴する設定やセリフが盛り込まれている。鑑賞後、2度目に観ることで合点がいくものから、過去作を振り返ることで気がつくことなど、様々な伏線が張りめぐらされている点に観客は気づかされるだろう。

 さらに注目したいのは、役者陣の活躍だ。特に『BLOOD-CLUB DOLLS 2』では藍刃を演じる北園涼が光る芝居を見せる。北園はミュージカル『刀剣乱舞』で小狐丸役を演じており、刀を使ったパフォーマンスはお手の物。今回も華麗な立ち回りで作品を彩り、闘技場のシーンでは炎の中で和装をはためかせ勇ましい殺陣を魅せた。暗がりの中で炎が立ち上り、菊の花の描かれた着物をヒラリと翻す姿は舞のように美しい。憂いを帯びた表情からは切なさと色香が感じられ、北園の切れ長の瞳に捕らえられたようにスクリーンに釘付けになる。本シリーズでの藍刃は重要な過去を秘めた、特に注目すべき役でもある。藍刃が抱える苦しみを引き出す北園の芝居は『BLOOD-CLUB DOLLS 2』をより印象深くし、多くを語らない本作の物語に奥行きを与える作用をもたらす。北園は本作でエンディング曲も担当しており、その歌声は映画のラストと重なり深い余韻を与えた。劇場ではエンドロールまで席を立たずに堪能してほしい。

 加えて、蒼炎を演じる松村龍之介もまたミステリアスな魅力を披露する。「のすけ」の相性で親しまれる松村は舞台版『戦国BASARA』シリーズの真田幸村役や舞台『黒子のバスケ』シリーズで笠松幸男役を演じ、舞台経験豊富。さらに『BLOOD』シリーズの舞台版『BLOOD-C The LAST MIND』にて本作と同名(漢字違い)の蒼円を演じ、同じく「BLOOD-C』シリーズの映画『阿修羅少女~BLOOD-C異聞~』(2017年)では蓮を演じるなど本シリーズには欠かせないキャストでもある。今回松村の演じた蒼炎は優しい表情と誠実な口ぶりに反して本心がわかりにくいという複雑なキャラクターで、演じるのが難しい役どころであったことは容易に想像がつく。

 しかし、松村は芯の強さをうかがわせる目力と堂々とした姿勢で役の背景を感じさせ、蒼炎というキャラクターを見事に体現していた。藍刃と共に画面に登場するシーンでは、衣装の効果もあり2人が相反するキャラクターであることが如実に示され、松村と北園がどれだけの思いで役と向き合ってきたかが顕著に現れる。まさにこの2人が『BLOOD-CLUB DOLLS 2』をけん引する立場であったことが伺えた。さらに脇を固める役者陣には池田成志、八嶋智人が登場し、圧巻の芝居を披露する。些細なシーンでもコミカルで強烈な印象を残し、映画がより記憶に残る作品になるべく導いた。本作にとって「縁の下の力持ち」であるのは間違いなくこの2人だろう。

 現代を舞台に繰り広げられる“和×アクション”こそ、本作が強みとして掲げるべき特性でもあり、和装・洋装入り乱れるスクリーンはまさに華やかで個性的。役者陣の麗しい姿が美術や衣装の魅力を引き出し、作品を唯一無二の世界観へと昇華させた。闘技場では拳を使った戦いではなく、剣闘士と呼ばれる人々が刀を用いる熱いバトルを繰り広げる。藍刃に限らず、和装に着替え刀を構える剣闘士たちの姿は勇ましく、まさに“和×アクション”を体言するシーンとなっただろう。日本の伝統を重んじる和装と刀を武器に、日本映画界に切り込む作品が生まれた瞬間だ。 (文=Nana Numoto)