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この先いつまで腐り続けるんだ? 『ハゲタカ』最終回、綾野剛が遺した“今の日本へのメッセージ”

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リアルサウンド

 木曜ドラマ『ハゲタカ』(テレビ朝日系)が、第8話にて最終回を迎えた。

参考:沢尻エリカが明かす、綾野剛の意外な一面【写真】

 2018年、平成最後の夏が舞台のドラマオリジナルストーリーで描かれた最終章は、アジア重工連会議の開催場所であり、貴子(沢尻エリカ)が社長を務める日光みやびホテルが舞台となる。鷲津(綾野剛)による逆転劇が大きな見どころの『ハゲタカ』。最終回においては、残り30分からの怒涛の逆転劇にてフィナーレを飾った。

 最終回でのハイライトとなったのは、やはりアジア重工連会議での「鷲津VS 真壁(伊武雅刀)」の構図だ。鷲津が帝都重工の社長、真壁が会長という立場。“ヒーローは遅れてやってくる”とは言ったものだが、鷲津はスクリーンに帝都重工の不正の証拠を映し出し、トレードマークのメガネを上げながら登場する。現場で働く者たちの声を殺した、ものづくり大国の現実。記者会見で、“30日以内の革命”を宣誓していた鷲津の革命とは、腐った大企業、そして日本を抜本から変えること。社員9万人を擁し、“ニッポン株式会社”の異名を持つ名門重工業メーカーを沈ませることとなれば、この国は傾く。声を荒げる真壁に、鷲津は「日本はこの先いつまで腐り続けるんだ? そんな世の中に、若者が希望を抱くことなどできるはずがない!」と攻め寄る。部屋にマスコミが押し寄せる中、鷲津は「真壁達臣!」と圧倒的な凄みで戦意喪失をさせ、「では!」とその場を去る。眉間にシワを寄せた鷲津の表情が、どこか哀愁を感じさせたのは、この逆転劇に様々な思いが積み重なっていたからだろうか。

 同席した芝野(渡部篤郎)は、再生担当執行役員という立場で、子会社からの詳細な聞き取りを、貴子は会議のハンドリングやマスコミの手配を行っていた。『ハゲタカ』は、腐った日本を変えていくという鷲津の不屈の精神が、形は違えど、芝野、そして貴子へと受け継がれていった作品である。その鷲津の意志は、彼を“ボス”と呼ぶサムライファンドのメンバーや、一度は離れたもののアメリカの投資ファンド代表として再び現れるアラン(池内博之)にもきっと伝わっている。

 20年来の因縁の相手、飯島(小林薫)との“最後のお別れ”では、「風通しが良くなれば未来も変わる。私とあなたがいなくなってもこの国は生きていく」と鷲津。「わしはまだ生きてる。わしは必ず復活する。その時にな、お前に地獄見したる。それまで首よう洗うて待っとれ」という飯島とのやりとりからは、終わることのない2人の戦いを予感させる。

 第7話より登場した天宮(森崎ウィン)の会社スペース・フロンティア・ジャパンに、鷲津はビジネス相手としての取引の話を持ちかける。投資の話は断り、「自力で飛ぶ覚悟を持て」と一周していた鷲津が天宮に提示したのは、自らが提唱していた“壊して羽ばたく”「Scrap & Bird」。瓦礫の山となった帝都重工から絶対に羽ばたくという天宮の宣言にもまた、鷲津のスピリットが重なる。

 1997年より20年以上もの間、強く惹かれ合い、時に運命が交錯してきた鷲津と貴子。2人でイヌワシを見た始まりの場所で、貴子は“大事な人”である鷲津に会うことを持ちかけるが、彼はその場には現れない。その頃、鷲津は日本を出て、海外へと出国しようとしていた。2人が同じ青空を見上げる描写からは、ビジネスパートナーを超えた仲であったことを想像させる。

 最終章は、2018年平成最後の夏が舞台であったが、アジア重工連会議の日付は最終回の放送日と同日であった。次々と大企業による不祥事が発覚する現代において、『ハゲタカ』は実際に起こり得るノンフィクションの物語でもある。「平成が終わろうとしている今になっても、大企業は何一つ変わっていなかったようだ」「日本はこの先いつまで腐り続けるんだ?」。芝野や鷲津が言い放ったセリフは、今の日本に向けたメッセージのように思えてならない。では!(渡辺彰浩)