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石原さとみ「今までの“ありがとう”の質が変わる」 脚光を浴びない職業の“働く”を描く意義

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リアルサウンド

 石原さとみが主演を務めるフジテレビ木曜劇場『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』が、7月16日より放送される。

 本作は、荒井ママレによる『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(医療原案:富野浩充)を原作とした、病院薬剤師たちの知られざる舞台裏を描くヒューマンドラマ。“アンサング”は「褒められない」という意味で、医師のように頼られず、看護師のように親しまれなくても、“縁の下の力持ち(=アンサングヒーロー)”として患者のために奮闘する病院薬剤師たちの奮闘を描く。

【写真】石原さとみ撮り下ろしアザーカット

 『Ns’あおい』(フジテレビ系)では看護師、『アンナチュラル』(TBS系)では法医解剖医の役を務め、名作医療ドラマを作ってきた石原さとみが、キャリア8年目の病院薬剤師役で、新たな医療ドラマを作り上げる。「ドラマチックであったとしても嘘じゃないものを作りたい」と語る石原さとみに、本作にかける思いを聞いた。(3月某日取材)

■「今までの『ありがとう』の質が変わる」

ーードラマ化が発表されてから薬剤師の方に反応を聞いたら、とても喜んでいました。

石原さとみ(以下、石原):よかったー! 本当に素晴らしいお仕事です。薬剤師さんには普段からお世話になっているはずなのに、どういうお仕事なのか知らなかったんです。間違えてしまったときは指摘されるけど、できて当たり前と思われているところもありそうで、普段「ありがとう」と気持ちを込めて言われる機会が少ない仕事なのかなと。だからこそ、その仕事の裏の部分を知ってもらえるだけで、今までの「ありがとう」の質が変わると思うんです。そんなドラマができたらいいなと今回のお話をいただいたときに希望が湧きました。本当に皆さんのお仕事はかっこよくて、とても尊いので、必要な存在であることを伝えていけたらいいなと思います。

ーー“ありがとうの質が変わる”というのは具体的にどういうことでしょう?

石原:『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)で感じたのが、校閲者さんが1冊の本をチェックしていくなかで、間違えたら「ごめんなさい」は言うけど、普段から「ありがとう」と言われるお仕事ではないんだなと。今回の薬剤師のお話もそうだなと思いました。様々なお仕事全部そうですが、知らないと皆さんに支えられて生きているということを忘れてしまうので、こういうお仕事を知ることに意味がある気がします。

ーー医療ドラマというと、命がテーマに関わってくるものでもあると思うので、責任感やプレッシャーも大きいのではないかと感じます。

石原:色々な反響があったのが嬉しかったので、だからこそ夢物語にしたくないとプロデューサーと話しました。問題提起をして、答えが出ないとしても考えてもらいたくて。ネガティブな部分だけではなく、「働く」というのはそういうことだと伝えた上で、その中でも“この仕事をしてよかったな”と思う瞬間を映していきたいです。

ーー医療モノというとチーム感が重要だと思うのですが、萬津総合病院のチームはどんな感じになりそうですか?

石原:バラエティ豊かです。メガネ率も含めて、バランスが取れているというか、男女比、年齢、キャラクターがちゃんとはっきりしている感じがします。みなさん良い人で、西野七瀬ちゃんは会ったらとても可愛くて、物事をはっきり言う方だなと思ったので、これから撮影が楽しそうだなと感じました。桜井ユキさんは、かっこいいお姉さんっていう感じでしたね。井之脇海さんはのび太くんみたいな、絶対悪い人じゃないよねっていうかわいいキャラクターだなと。

■「ドラマチックであったとしても、嘘じゃないものを作りたい」

ーー葵を演じる上で「優しさが本当の強さだということが伝わるように演じていきたい」というコメントが印象的でした。

石原:私自身、できない部分はあるのですが、どこまで相手の立場に立つのか、どう言葉を伝えるのかが大事になってくると思っています。例えば、怒りを怒りのまま返すのではなくて、北風と太陽じゃないけど、暖かい方で気付かせたりする方が相手の心は変わりやすいというのは、経験としてもあって。だから、相手を変えようとするよりも、自分自身がどう変わっていけばいいのかを考えるようにしています。葵みどりには理想的な自分を少し投影できたり、こういう人になりたいというイメージを持って演じられたら幸せです。

ーーこのドラマを通して、世の中に伝えていきたいメッセージはありますか?

石原:「かかりつけ薬剤師」という言葉が浸透していないと聞いたので、広まったらいいなと思います。それと、現実的には無理かもしれないけれど、カルテを全国統一して、このカードがあれば全国どこの病院に行っても、薬の処方から治療法、持病、飲んでる薬まで、それを読み取るだけで、その人の状態が全て分かるような仕組みができたらいいのにって。震災のとき、『アンナチュラル』のときにも思ったことですが、遠い未来だとしても、そういう時代にいつかなったらいいなとは思うんです。希望が溢れながらも、今はそうじゃないっていう現実もちゃんと伝える。ドラマチックであったとしても、嘘じゃないものを作りたいです。

ーー現実をちゃんと伝えていきたいと。

石原:私、ドキュメンタリーとか対談モノがすごく好きなんです。直接自分の目で物を見たり、人に会って話を聞いたり、インタビューのお仕事がすごく好きです。ドキュメンタリーに関しても、インタビュアーの皆さんが自分のフィルターやカメラを通すにせよ、現実を100%伝えるということが正しいのかなと思っていました。でも、それを直接受け取る人も、受け取らない場合もあって、100%のものを受け止めたくない人もいる。だけどドラマは、お芝居やエンターテインメントを上乗せして色を変えて、5%、10%の現実味の濃度だとしても、視聴者の皆さんが、観る前に比べて、観たことで何かを得られたり、知ることができたり、ちょっとでもプラスになることがあったら意味があるなと。その度合いが50%、60%と大きくなったらいいなと思います。実はドラマを通してとても現実的でリアルなものを描いていたというのは、私の中ですごく大事にしていることなんです。

(取材・文=大和田茉椰)