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【特別座談会】アイナ・ジ・エンド×セントチヒロ・チッチ×MASTA Simon×SAMI-T  ジャンルを壊してきたBiSHとMighty Crown

音楽

インタビュー

ぴあ

BiSHのアイナ・ジ・エンドが、Mighty CrownのMASTA SimonとSAMI-Tに対して「私の(大阪時代の)ダンスの先生ぐらいの年齢なんですよ」と言うと、ふたりは大笑いした。

1991年に結成された横浜のレゲエ・キングのMighty Crownと、2015年に結成された「楽器を持たないパンクバンド」のBiSH。そんな年代も音楽性も異なる2組が出演するのが、2020年7月21日に開催される「KM MUSIC 35th Anniversary Hi-KiCKS LIVE AT THE STREAM」だ。

ケーエムミュージックの35周年イベントとして、同社のイベンター・佐藤裕介と縁の深いアーティストを招いてライヴ「KM MUSIC 35thAnniversary “Hi-KiCKS”」を当初は開催する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で、無観客配信ライヴ「KM MUSIC 35th Anniversary Hi-KiCKS LIVE AT THE STREAM」に形を変えて開催することになった。

今回は、Mighty CrownのMasta SimonとSami-T、BiSHのアイナ・ジ・エンドとセントチヒロ・チッチ、そして佐藤裕介を迎えて、ジャンルを越えてロックフェスに出演し、「現場」にこだわってきた2組に、配信ライヴに向けた意気込みを語ってもらった。

●“アウェイ”を乗り越えて得た強さ

佐藤裕介(以下、佐藤):初めて行ったクラウン(Mighty Crown)の現場は、横浜八景島シーパラダイスでやった「横浜レゲエ祭2003」だったな、まだ俺が小僧のとき。地獄みたいな日だったことしか覚えてない(笑)。

Masta Simon(以下、Simon):あの頃はチームみんな初めてのことばかりで、お客さんの並ばせ方もわからなくて。炎天下で朝早くから並んじゃって、みんな熱中症で倒れていっちゃって。

佐藤:日本の音楽フェス自体が黎明期だったからね。

Sami-T:そういう意味で、ケーエムミュージックと一緒に育ってきた感はすごい強いよね。

Masta Simon

Simon:BiSHは結成して何年目なの?

セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ):6年目です。

アイナ・ジ・エンド(以下、アイナ):このふたりは初期メンバーで。

Sami-T:じゃあ最初のときはメンバーが違ったってこと?

アイナ:最初5人で始める予定が、減ったり増えたりして今6人。

チッチ:良いのか悪いのか、喧嘩も全然しなくて。

Sami-T:6人で同じ目標でやってて、意見の食い違いとか出ないの?

チッチ:言い合いは本当に一年に一回するかしないかくらい。本当に性格もバラバラなので、その中でうまいこといってるのかな。それぞれが受け入れて生きているという感じ。

Simon:大人ですよ、これは俺らにはない(笑)。

佐藤:サイモンとサミーは兄弟だからまた違うと思うんだけど、彼女たちの場合は一緒にいる時間が尋常じゃなく長くて、この5年間の濃密さが違う。自然とお互いにいい距離を保っている気がする。

Sami-T:いいバランスなんだね。距離感ってすごい大事だと思う。

佐藤:昔、BiSHは小箱のツアーは車で行ってたのよ。だから、メンバーも朝から家に帰るまでずっと一緒で。

チッチ:今でも衣装は自分たちで管理したり。

Sami-T:逆に他の人に任せるほうが不安になったりしない?

チッチ:慣れてるからそのほうが安心かもしれない。

佐藤:世界中のクラブでひたすらやってきたクラウンと、自分たちでやらなきゃいけないことが多い状況で育ってきたBiSH。そういうところもリンクする部分があるんじゃないかな。最初は中野heavysick ZEROで、80人のワンマンから始まったBiSHが、今では多いときは年間7、80本ぐらいワンマンをやっている。淳之介(渡辺淳之介/BiSHマネージャー)と「BiSHは10-FEETみたいにしたいね」って話をしたときがあって。テンフィ、売れても小箱のライヴハウスに絶対行くんだよね。

Sami-T:俺らはジャマイカのサウンドみたいなものをやりたくてああいう土俵を選んだんだけど、BiSHは参考にしているアーティストはいるの?

セントチヒロ・チッチ

チッチ:BiSHとしてはあまりそういうのは意識しないようにしてきました。ライバル的な存在も今まで作ってこなかった。先駆者というものがいなくて、自分たちが本当に自分たちというジャンルでしかなかったので。

アイナ:でも、たぶん意識的なものはみんな共通であって。まっとうな演者じゃないし、正しさばっか求めるんじゃない。ちょっと斜に構えたり、素直じゃなくても、それがちゃんと伝わるようなパフォーマンスをしたい、みたいな。

チッチ:意志は同じだよね。音楽を聴くジャンルとかはバラバラでも。

Sami-T:どういう音楽を聴いて育ってきたの?

チッチ:私は中高生のときは本当に青春パンクが好きで、ロックバンドが好きでBiSHに入って。だけど本当にみんなバラバラで、ボカロが好きだった子もいるし、J-POPが好きだった子もいる。

アイナ:私は4歳からダンスをやっていて、洋楽が多かったですね。でも、習っていたのがコンテンポラリーやジャズだったので、あんまりヒップホップやレゲエは聴いてなかったんですけど。

チッチ:私は「AIR JAM」世代のバンドが好きで。Hi-STANDARDも、それこそ10-FEETも好きだった。一番のスーパーヒーローは銀杏BOYZとサンボマスター。

Sami-T:最初、アイドルがゴリゴリのロックフェスに出るのがどんな感じかわからなくて。BRAHMAN、SLANG、Dragon Ashと一緒にやってるって聞いて、かなり衝撃的だった。

Simon:8年くらい前かな? 俺らもロックフェスに出るようになって、そこから対バンのオファーがくるようになって。

Sami-T:BiSHはけっこう対バンやるの?

チッチ:やります。

Simon:連チャンのときとか声とか大丈夫?

アイナ:歌う曲を調整したり。「プロミスザスター」も、1日2回歌ったらやばいんですよ(笑)。

アイナ・ジ・エンド

Simon:しかも、ライヴだとテンションもあるから違うよね。

アイナ:それに踊りながらで。そういうときはメンバーが話し合って違う曲に変えてくれて。

チッチ:6人いるから、歌割りの振り方とかで協力し合えるのはすごくいいところ。

佐藤:昔アイナの喉がけっこう苦しいときがあって。そこで他の5人がどう助けるか、みたいな時代があって、今は良かったと思う。アイナには申し訳ないんだけど、もしアイナがあのとき普通に歌えていたら、たぶんBiSHは今と違ったんじゃないかな。当時はプラスではなかったことが、今になってすごく大きいプラスになっている。2019年の夏フェスは、すごい良い出来のライヴが多かった。あのときはどんな気持ちでロックフェスのステージに立っていたの?

チッチ:夏フェスに出始めた頃のBiSHはアウェイに弱くて。本当はもっと良くできるはずなのに、萎縮して情けないライヴで終わっちゃって、すごい後悔して。だから去年は「一本一本を大事にしなきゃ」という意識が強かった。本番前、バタバタしていてもメンバーで話して意識統一をして。そうやって何度もライヴをさせてもらう中で、ひとりひとりが自信をつけてきて、アウェイを逆に力にして、BiSHらしさを出せるようになってきた。それが強さになってきたのかな。

Simon:言ってることが大人だね〜。

●「あっ、おもしろい」をいかに残すか

佐藤:クラウンがロックフェスに出るきっかけになったのは「AIR JAM」だよね。

Simon:俺たちも2012年に初めてフェスに呼ばれたときはアウェイだったよね。LAUGHIN' NOSE、10-FEET、TOTALFATとの対バンで。俺もパンクバンドを15歳のときにやってて、そのときの憧れだったバンドがLAUGHIN' NOSE。知ってる?

アイナ・チッチ:知ってます。

Simon:意外だ。TF、テンフィ、俺ら、LAUGHIN' NOSEの順番だったんだよね。TFとテンフィはお客さんパンパンだったんだけど、俺らのときは8割の客が帰っていて。だから、俺らが知られることもなかった。そこからの「AIR JAM」。そこでアウェイを一番覚えた。

Sami-T

Sami-T:OGA FES(『OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL』)で5,000人ぐらいいた人が、俺らの番になると最初50人ぐらいしかいなくて。ちょっとロックっぽい曲も混ぜたセットを組み込んでみたら客が「うおー!」って集まって、最終的にはほぼ埋まった。そういう免疫ができて「AIR JAM」に出たんだよね。そのときも、25,000人の中の250人みたいな感じだった。

チッチ:(小声で)やばい。

Simon:最初から心がけているのは、アウェイで人がいなかろうが、絶対に俺は自信満々で、全員埋めてやるって意気込み。逆に「ロックファンはこんなもんじゃないだろ!?」みたいな煽りをする。

佐藤:「AIR JAM」の映像を見たけど、少ないお客さんの中でスタンダードのレゲエから始めて、だんだんうまく持っていくやり方がすごかった。特にジャパニーズパンクから畳み掛ける感じが。

Sami-T:最初、俺がスケボーでステージに登場するんだけど、「人いね〜!」みたいな(笑)。ハイスタとDragon Ashを待っていた人たちも巻き込みたくて、そっちのほうに走っていって「うおー!!」みたいな。

佐藤:あの日のサミーの振り切れ方すごかったよね。

Simon:あの頃はその場で試しながら選曲していて、ウケるかどうかはギャンブルだけど、ウケなかったら逆にそれを笑いに持っていく。でも、常にどんなときでも一個でいいから「あっ、おもしろい」みたいなものを残したくて。

Sami-T:BiSHの中ではそういうのあるの? 俺は、最終的にはみんなが「楽しかった」って思って帰ってくれれば「今日は良いショーだったな」って思うんだけど。

チッチ:BiSHは、楽器を持たないぶん振り付けがあるから、そこが強みだと思っていて。アイナが真似しやすい振り付けを作ってくれるんですけど、フェスとかでやると、どれだけの人が同じ動きをしてくれているのか一目でわかる。たくさんあがっていると、めちゃくちゃブチ上がるんですよ。

Simon:すげーわかるそれ。

チッチ:楽しんでくれているんだな、って。

Simon:振り付けってアイナが全部決めてるの?

アイナ:9割ぐらい。だいたい肩から上に手を上げるようにして、狭いライヴハウスでもできるような振り付けを考えています。

Sami-T:すごい、計算してるんだね。

アイナ:私たちのファンの名称が「清掃員」なんですけど、プロデューサーが「こういう振り付けを作ったほうが清掃員も踊れるよ」って教えてくれたのがきっかけで。

Sami-T:アイドルなのにストリート感をすごい感じるんだよね。

Simon:初めてライヴを見たとき、モッシュをしている人もいればコールを入れている人もいて。あれはすごいびっくりした。

チッチ:昔はダイブやサーフがすごかった。

アイナ:禁止にしたんですよ。

Sami-T:禁止にしたのは怪我人が出たから?

アイナ:女の子のファンが増えてくれて。

チッチ:それと、人が増えるにつれて後ろの人達もすごく意識するようになった。後ろでじっくり見たい人たちが、私たちを見えなくなってしまったら一番良くないから。

アイナ:でも、メンバーはダイブOKだから飛ぶ。

佐藤:昔はポンポンいってたからね。

アイナ:いきすぎて怒られて……(笑)。

チッチ:人の上で歌うみたいな感じでね。

アイナ:何回も飛んで佐藤さんが一生懸命ステージに戻してくれて(笑)。

KM MUSIC 佐藤裕介

佐藤:チヒロは人の上に立つからね、TOSHI-LOWさん(BRAHMAN)と同じ。すげーまた荒々しく飛ぶんだよね、人の上に足から着地しようとするタイプで(笑)。

アイナ:いつもヒヤヒヤする(笑)。

チッチ:「ごめんね」って言っても「ありがとう!!」って言ってくれる(笑)。

Sami-T:新しいSMの形だね(笑)。

佐藤:チヒロの強さは、BRAHMANと同じ現場でそれをやれるところで。現場にTOSHI-LOWさんいて、よくやれるなって(笑)。

チッチ:あはは。

Sami-T:アイドルのイメージを崩されたところもある。ミクスチャー感があるなって。BiSHっていうジャンルだよね。

●ジャンルを壊してきたBiSHとMighty Crown

佐藤:ここ10年、アイドルだけじゃなくて海外もより細分化されてるし、ボーダーレス化してる。だから、今ビリー・アイリッシュがあれだけすげーことになっている。クラウンも、ある意味レゲエと見られて縛られてきて、BiSHもアイドルと見られて縛られてきて、そこに対して抗ってきたところは、お互い一緒だと思うんだよね。

Simon:そういうステレオタイプなものを壊したくなるよね。

佐藤:だからこそ、それをライヴで客前でやったら最高なのにな。

Simon:状況が状況だからね。俺らは配信でも、もちろんフルで思いっきりやるつもりだけど。

佐藤:ライヴハウスでできないからといって、何もやらない訳にはいかなくて。変わりゆくエンタメの中で何かを届けなきゃいけない。やっぱり「配信はライヴより格が落ちるもの」って今はみんな思っていて、でも、そのツールが今のところ一番安全であるなら、そこを突き詰めて、今やれるものを何か作りたいな、って。こないだサイモンとサミーは初めて配信をやってたよね。

Simon:MV撮影やテレビの収録に近いものがあるかな。ただ、客をもっと意識する。

佐藤:クラウンは客の反応を見て次の選曲を変えたりするけど、無観客だとその感覚はやっぱりわかりづらい?

Simon:わかりづらいけど、逆に「これイケてるっしょ」っていうような見せ方もできる。

Sami-T:こないだ無観客をやったときはある程度決め込んだけど、客のコメントのノリを感じ取って変わったりとか。

Simon:より客のことを意識するところはあるかもしれない。

佐藤:BiSHはフロアからのレスポンスを拾うのは、普通のライヴでもあんまりやってこなかったもんね。

チッチ:あんまり拾わないようにしています。

アイナ:最初の頃は指示してくるお客さんもいた……。

Simon:それうるさいね(笑)。

アイナ:「成長したよな」とか。

Simon:「おめえが成長しろ、この野郎」って言いたくなっちゃう(笑)。

チッチ:そういうのがあったからあまり聞きたくないと言うか。

Simon:俺らの場合は、そういうやつが来たら、いじっちゃう(笑)。「うっせーこの野郎」みたいに言えちゃうし。

アイナ:あはは、まだアドリブとかもできないぐらいのときで。普通に傷つくことを言われて「あっ、おう……」みたいな(笑)。

Sami-T:それは今スルーできるようになった?

アイナ:うん。「おもろいな」って。

チッチ:反応しちゃうと喜んじゃうから。

佐藤:あとやっぱり拾っちゃうと平等にならない感じも出ちゃう。お互いにも良くない。まあ、今回は無観客だけど面白い仕込みもしてるから、クラウンとBiSHがやる意味が出せるんじゃないかな。

アイナ:私、2019年のラジオでご一緒させていただいたときに、今まで習っていたダンスの楽曲の中にもレゲエがあったことに初めて気づいて。レゲエって素敵だなって思わせていただいたきっかけがMighty Crownさんだった。

Sami-T:いいこと言うねぇ。ダンスやってるときに自然にインプットされていた?

アイナ:そうですね。だからそういうきっかけをくださった方々と今日一緒にお話しできて楽しかったです。

Simon:レゲエのアーティストのオススメも、ちょっと教えたりできたしね。ベースはあっても進化していかないと飽きられるし、自分たちも飽きちゃう。

Sami-T:いろんなジャンルでも吸収すると何か得られるもんね。

チッチ:めちゃめちゃ大事ですね。

この日の座談会は、KT ZeppYokohamaで行われた。2020年1月に竣工したものの、コロナ禍でライヴホールとしての営業開始が延期され、ようやく7月3日に営業をスタートしたばかり。世界中のクラブから横浜スタジアムまでライヴをしてきたMighty Crownも、全国のライヴハウスから幕張メッセまでライヴをしてきたBiSHも、そして両者のライヴに長年携わってきた佐藤裕介も、ライヴの現場にこだわってきた人間たちだ。本音を言えば、ファンで満員になったKT
 Zepp Yokohamaでライヴを行いたかったはずだ。



しかし、この状況下でエンターテインメントにできることを模索して、提示されるのが無観客配信ライヴ「KM MUSIC 35th Anniversary Hi-KiCKS LIVE AT THE STREAM」。7月21日、どんなライヴが届けられるのかを楽しみに待とう。

取材・文=宗像明将/写真=池村隆司

■配信情報
「KMMUSIC 35th Anniversary Hi-KiCKS LIVE AT THE STREAM」
7月21日(火) Open18:00/Start18:30 ※アーカイブ配信はありません
出演:BiSH/BiS/LONGMAN/Mighty Crown
視聴チケット:¥3,500(税込)
※システム利用料など別途でかかる料金はありません。
Aid for F.A.D YOKOHAMA Tシャツ付き視聴チケット:¥5,500(税込)
※システム利用料などの料金はかかりませんが、Tシャツ配送料¥880がかかります。
※TシャツサイズはS/M/L/XLの4サイズとなります。
※Tシャツ収益の一部を(株)ケーエムミュージックよりF.A.D YOKOHAMAを支援する目的で使用いたします。

チケット販売URL:http://w.pia.jp/t/hi-kicks/
※チケットぴあ「PIA LIVE STREAM」にて販売となります。

●配信に関する注意事項
ご購入前に必ずチケットぴあ「PIA LIVE STREAM」オフィシャルサイトをご確認ください。
https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream/

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