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『ハケンの品格』で光る塚地武雅の演技力 お笑い芸人と俳優の境界線はどこにある?

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 お笑い芸人と俳優の境界線はどこにあるのだろうか? 『ハケンの品格』(日本テレビ系)で部長の宇野一平を演じる塚地武雅は、その問いにヒントをくれる存在だ。お笑いコンビ、ドランクドラゴンのボケ担当として『はねるのトびら』(フジテレビ系)や、『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK総合)のイカ大王など、独特のキャラクターで人気を博してきた。

参考:吉谷彩子がお仕事ドラマで引っ張りだこ!? 『陸王』から『ハケンの品格』までの飛躍

 いわゆる憑依芸人としてコントで多彩なキャラを演じ分ける塚地が俳優として注目されたのは、映画『間宮兄弟』だ。故・森田芳光監督に抜擢され、独身、2人暮らしの30代兄弟の弟役で日本アカデミー賞新人俳優賞やブルーリボン賞新人賞などを受賞すると、『裸の大将』(フジテレビ系)や『ハンチョウ~神南署安積班~』(TBS系)、『西郷どん』(NHK総合)、『緊急取調室 3rd SEASON』(テレビ朝日系)など注目ドラマに次々と出演。主役からバイプレイヤーまで物語に欠かせない役柄を担ってきた。

 共演した佐々木蔵之介から「味のある演技」と評されるように、作品での塚地はつい目が行ってしまうような独特の存在感がある。もともと芸人の塚地に笑いを期待するということもあるが、画面の中で何かを起こしそうな予感を抱かせるのだ。

 『間宮兄弟』の弟・徹信や『西郷どん』の熊吉が、純朴さの中に親しみやすさを感じさせるように、ちょっとした仕草や話し方の工夫によって人物の性格や内面が伝わってくる。これは、塚地の類いまれな観察眼に負うところが大きいだろう。お笑いネタでの、小学生からオタク、外国人、有名歌手まで、塚地のなりきりぶりはよく知られるが、キャラの特徴を掴んで笑いに変換しており、それが演技でも生かされている。

 そんなお笑い界きっての演技派、塚地の実力が遺憾無く発揮されたのが、『パパがも一度恋をした』(東海テレビ・フジテレビ系)で、塚地は、小澤征悦演じる主人公の生き返った妻・多恵子を演じた。姿はおっさん、心は女性という難しい役どころだったが、残された家族を思う細やかな愛情が、何気ない仕草にも現れていて、思わず涙腺が緩んでしまったほど。現実離れした設定をドラマとして成立させた最大の要因が、塚地の演技力だった。

 『ハケンの品格』の宇野は、正社員中心、上司にはイエマスンで、派遣社員や部下には横柄な態度を取る、旧態依然とした「いかにも」な会社員だ。憎まれキャラの宇野だが、「スーパーハケン」大前春子(篠原涼子)に“常識”を覆されて、あわてふためく定番のリアクションに塚地の人間観察が光っている。

 塚地以外にも、13年ぶりの続編となった『ハケンの品格』には、お笑い適性の高いメンバーが顔を揃える。おなじみ大泉洋は、本職は俳優だが『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)で全国区になり、巧みな話術は芸人以上におもしろいと評判。社長役の伊東四朗は、てんぷくトリオと電線音頭のベンジャミン伊東で一世を風靡した。ちなみに『ハケンの品格』前作には、伊東の相方だった小松政夫も出演していた。主演の篠原涼子も、かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)に出演するなど、笑いのポテンシャルは十分。前作に続いて、大泉洋演じる東海林との掛け合いも復活した。

 同作への出演について、塚地は「お笑いからのハケン」とコメント。とはいえ、本職が俳優の大泉や「喜劇役者」の先輩格である伊東と並んでも、違和感はまったくない。笑いの素養を身につけた役者たちの演技合戦は、ドラマ後半にかけてさらに加速しそうだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。