『ギルティ』の中村ゆりかから目が離せない 松本まりか、菜々緒ら、ドラマで成功する“悪女”の条件
映画
ニュース

現在放送中の連続ドラマ『ギルティ~この恋は罪ですか?~』(読売テレビ・日本テレビ系、以下『ギルティ』)で、新川優愛演じるヒロイン・爽を執拗に追い詰める女性・瑠衣を演じている女優・中村ゆりか。最初は爽の友人として笑顔を振りまいていた瑠衣だが、途中から本性を現すと豹変。不敵で恐ろしい笑顔に、SNS上では「怖い」「強烈なキャラ」と大きな反響になっている。近年、悪女を演じることで大きく知名度を上げた女優たちを振り返ってみたい。
中村演じる瑠衣は序盤、爽の仲の良い友達として作品に登場。メガネをかけて人懐っこく「さやかさ~ん」と慕う姿は、まるで妹のような可憐な女の子だった。しかし、その裏では、妖艶な姿で爽の夫である一真(小池徹平)と不倫し、含んだ笑みを浮かべ濃厚なラブシーンも見せる。さらに不倫していることが爽にバレると一気に開き直り、凍り付くような笑みで爽を徹底的に追い詰めていく。
中村がこれまで演じた役柄は、NHKの連続テレビ小説『まれ』の池畑美南や、映画『ラーメン食いてぇ!』の女子高生・茉莉絵など芯の強さを持つ女性から、『賭ケグルイ』シリーズの五十嵐清華、『左ききのエレン』(MBS・TBS系)の加藤さゆりら、やや影のあるような役の印象が強い。
本作で演じた瑠衣は上記のような、これまで中村が演じてきたキャラクターの特徴を持ちつつ、そこに情念というべき、ホラー的な“怖さ”が加わった。真正面からではなく、斜めから相手を見つめ、不気味に笑う姿に、多くの視聴者は背筋が凍るような思いをしたのではないだろうか。SNS上には、中村の演技に対して数々の感想が飛び交っているが「しんどい」というコメントにすべてが集約されているように感じられる。観ていて「しんどい」のに、どうしても気になってしまう……。成功する“悪女”の条件と言えるだろう。
瑠衣と同じく、観ていて「しんどい」と感じてしまったキャラクターがいた。2018年にテレビ朝日系で放送された連続ドラマ『ホリデイラブ』で、仲里依紗扮する主人公・高森杏寿の夫・純平(塚本高史)の浮気相手の井筒里奈だ。“あざと可愛い”と表現された里奈は、キャラクターこそ瑠衣とは違うが、対象者への情念や常軌を逸した行動は、ホラーであり、視聴者に「しんどいなー」と思わせるような存在だった。
里奈を演じたのは女優の松本まりか。2000年にドラマ『六番目の小夜子』(NHK教育)でデビューし、今年で20年目を迎えるキャリア豊富な女優だ。『ホリデイラブ』以前にも、映画、ドラマ、舞台とさまざまなジャンルの作品に出演していたが、本作での怪演で大きな注目を集め、メディア露出も増えた。今年は『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)、『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)と2本の連続ドラマにレギュラー出演するなど、大きな飛躍を遂げている。
少し前には、菜々緒もドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ系)や『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(カンテレ・フジテレビ系)など、積極的に悪女役に挑み、大きく知名度を上げた。菜々緒は自身の“強くてきつそう”というパブリックイメージを逆手にとり「悪女をオファーいただけることはすごくありがたい」と前向きに役に挑み、唯一無二の立ち位置を獲得した。
一昔前は、悪役(女)を演じると、その俳優自身も役柄のような性格だと思われ、誹謗中傷されることが多かったという。現在もSNSの発達により、視聴者の声がよりダイレクトに届きやすくなったことで、さまざまな問題が生じているが、逆にフィクションというものの理解度という意味では、“悪役を演じる人=嫌な人”という考え方の人は昔よりも減っているように感じられる。先日まで放送され大きな反響を呼んだドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)で、主人公・アユ(安斉かれん)を虐める性悪女・玉木理沙を演じた久保田紗友もインターネット上では、その演技力の高さが賞賛されていた。
瑠衣が爽の元恋人であり、現在も思いが残っている高校の同級生・秋山の義理の妹だということが判明した『ギルティ』。今後さらにドロドロした展開に進むことが想像できるなか、中村演じる瑠衣はどこまで狂っていくのか――目が離せない。
(磯部正和)